第98話 副団長は妻と新婚旅行に出かける

新婚旅行、それは愛し合う二人が一緒に出掛けられる最高のイベント。何の気兼ねもなくアリスと過ごせることに浮かれていると馬車で隣に座っているアリスが聞いてきた。


「エクス。これからどこに向かうんですか?」

「少し遠いけど、水の綺麗なフリューゲル王国に向かうつもりだよ」


海に面していて船での出入りが盛んなのがサルバーレ王国だが、サルバーレ王国ほどではなくても海辺に近いのがフリューゲル王国だ。この新婚旅行のために前から目をつけており、コネもそれとなく作っておいたのだが……まあ、もちろんアリスにはそこまでは言わない。俺の黒い部分はなるべく見せないようにしたいしね。


「私、他の国は初めてなので楽しみです。それに……今の私はエクスのお嫁さんですから」


えへへと可愛らしく笑うアリスに俺は……内心で悶えるのを抑えきれなかった。いつも通り表情はかっくいいエクスさんを保つけど、にしてもアリスったら本当に可愛すぎでしょ!うちの嫁マジ天使!あぁ、こんなに可愛いアリスが俺の嫁になったのは本当に素晴らしすぎる。昨夜も散々愛したのに、今夜も激しく愛してしまいそうになるが……まあ、そこは愛の深さなのでご了承いただきたい。


「そういえば、マリア達は今回は来ないんですね」

「うん?ああ、せっかくの新婚旅行だしね。それに必要なら呼べばいいから」


ヒロインや使用人は向こうに着いてから必要になったら呼べばいいということで今は馬車を動かす使用人以外は誰も近くには居なかったりする。無防備すぎると言われるかもしれないけど……まあ、そこはこんな時のためのエクスさんぱわーがあるからね。魔法って本当に便利だよねぇ。こうしてアリスとイチャイチャしてても複数の探査系統の魔法で常に周囲の警戒はしてるし、アリスには絶対に指ひとつ触れさせない。


「それにしても……結婚してからアリスが前より更に可愛いと思っちゃうんだよね。やっぱり婚約者から妻になったからかな?」

「もう、エクスったら……」


照れながらそう言うアリス。いや、マジでそう思うんだよね。婚約者は婚約者で居心地が良かったけど……妻にクラスアップしてからの愛おしさの上限が半端ない。俺の好感度メーターがまた壊れて更に拡張されたのだろう。


「私もその……素敵な旦那様がいて幸せです」

「アリス……」

「んぅ……」


唐突なキスでもアリスは抵抗なく受け入れてくれた。本当に女神だ。最初は優しく、徐々に深く繋がってから唇を離すとアリスは少しだけ名残惜しそうにしてから顔を赤くして言った。


「もう……まだお昼ですよエクス」

「ごめん。アリスが可愛すぎてついね。嫌だった?」

「……嫌なわけないです」


結婚式の日から毎晩必ずキスとそれ以上のことをしてるのだけど……でも、初々しい反応をしながら受け入れてくれるのだから本当にアリスは可愛い。エクスさんの規格外の体力と俺の溢れるばかりの想いにきちんと付き合って尚且つそれを優しく受け入れてくれる包容力……聖母と言っても過言ではなかろう。うん、やっぱりアリスは最高だね。


「エクス……今夜も私のこと愛してくれますか?」


……叫ばなかった俺を称えて欲しい。上目遣いでそんなことを問われて叫ばなかければ余程のアホか同性愛を疑うレベルだ。もうね、アリスったらこうして天然でおねだりをしてくるから俺の理性が持ちそうにないよ。これはあれだね……俺にだけ小悪魔な彼女ってやつだね。ふと、サキュバスアリスのイメージが湧いてくる。いつもは清楚なのに実はサキュバスちゃん……みたいな。それはそれで非常に可愛いけど、他の男も魅了してしまうようなら頑張ってアリスを独占しないと。いや、むしろ独占以外に選択肢はないよね。


「どうやって愛して欲しい?」

「いつもみたいに優しくして欲しいです……」

「喜んで」


うん、今夜も激しくなりそうだ。優しくと言えるほどかは分からないけど……でも、アリスに対しては基本的に俺はストレートにしか接せないからそれを優しいと受け取ってくれるのが本当に嬉しすぎる。あぁ……このまま新婚旅行をずっと続けたいところだけど……アリスとの子供というのも魅力的なので悩みどころだ。


実の所、この時を永遠に……みたいな、時を止める魔法もなくはないんだよね。あの女、プレデターは俺には使わなかったけどそういう魔法も存在するのだ。まあ、時間操作系は使われても手元にゼロがあれば確実に打ち消せるので問題ないのだけどね。そもそも多分俺との戦いでそれを発動したら、発動した瞬間になんとなく分かって無意識でも打ち消してしまうだろう。


うん、つくづく規格外なのは今更なのでスルーで。こんな人間離れしてるけど、それを気にせず心配してくれて愛してくれるのは世界中……いや、無数の異世界中探してもアリスだけだろう。あ、ちなみにこの世界と元の世界以外にも無数に異世界は存在するらしいのだが……まあ、どうでもいいか。正直アリスと生きられるのなら俺はそこら辺は全く拘らないつもりだ。それだけ大好きな存在で、俺がこれからも愛し続けて絶対に守りたい存在であるアリス。副団長となった俺の妻は今日もめちゃくちゃ可愛いのだった。

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