第20話 ふたりは部活に入りたい 後編
部活動体験。
本来なら、四月の時点で既に終わっているようなこと。しかし。帰宅部に青春をかけると決めていた僕には、関係のないことだった。
数少ない帰宅部の中で、
「僕は帰宅部のエースだ!」
とか、
「絶対に帰宅部で全国いくからな!!」
とか深夜の狂ったテンションでSNSに上げようとしたことがある。気が狂ったときに何をしだすか本当にわからない。深夜テンション怖い。
さて、僕らは手当たり次第みていくことにしていた。
恐る恐る教室を出た後、吹奏楽部の演奏や化学部の実験などをみていた。
「美麗はどちらかに入りたいとか、思ったりしてる?」
「うーん。どっちもなさそう。なんだかんど運動はしておきたいな、って思ってる」
「運動か。ちょっと迷うな」
運動大好き人間じゃない。人並みにどれもそつなくこなせるけど、明日翔みたいにすべてを完璧にこなせるほど、ずば抜けた才覚を持ち合わせているわけではない。心からやりたいことを選べるだけの部活数はある。
もう少し考えてみるか。
室内部活をちょろっと覗きながら廊下を抜け、講堂にたどりついた。バレーボールをやっているらしい。俺は体育館の中まで入った。美麗はドアの後ろにひょっこ
り隠れて、こちらにはこなかった。あまり興味がないのだろうか。
「君、見学かな?」
「そうですね」
「唐突だけど、君ってバレーボール、好き?」
部員らしき人が、気を遣ってこちらに話を振ってくれた。
「はい、少しだけ、思い入れがあって。小さい頃に、母さんと一回だけ生で試合を見たことがあります」
「そうだったんだんだね。君はどのくらい入りたいと思ってるの?」
今思い出した。確か奏流のバレー部は全国大会にも出たことのある強豪校だった気がする。
「正直にいうと、あまり本気度は高くないです。キツそうで、ちょっと僕には厳し
いかなと」
「キツイっていうのその通りよ。でも、初心者からレギュラーに入る人もいるし、自分のやる気次第でどうにでもなると思うよ。だからもう少し検討してほしいな」
しばらく練習の様子を眺めていた。スパルタ指導で、体罰はないにせよ、罵声の圧にやられてしまいそうだ。
もっと、自分の本音と向き合ってみようか。ここは切っていいだろう。ひとつ、部活の候補が上がってきた。
さきほど相手をしてくれた部員が休憩に入ったタイミングを見越して、
「すみません、今から他の部活の見学にいきます。きょうはこの辺で」
「うん、今日はありがとうね。またぜひ来てね」
美麗はずっと扉の後ろにいて手持ち無沙汰だったらしく、戻ってくると少し不機嫌そうだった。
「次は外の部活だ」
俺は、校庭に出た。
公立高校とは思えないほどの広さを誇るグラウンド。多くの部活が、めいいっぱいスペースを使っている。僕が向かったのは。
陸上部。
部活選び。中学のときはしっかり考えずに惰性で決めたけど、今回は心から選んだものに入りたい。しっかり検討していこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます