言葉の形

teo

第1話 あの日の答え

夏の日の夜、月が煌々と輝いている。


その月の下で僕は彼に問いかけた。


「君は、どうしてそんなに死のうとするの?」


彼は少し俯いて言った


「じゃあ、何でお前は生きようとするの?」


「少し時間をくれないか?」



僕は、彼の出したその問いに答えることができなかった。


どうして僕は生きようとするのだろうか


すきなひとがいるから、家族がいるから、まだやりたいことがあるから、


どれもそうだが何か違う気がする。


もし今それらがなくなったら僕は死にたいと思うのだろうか。



逆に考えてみよう


彼はどうして死のうとするのか


つまらないから?希望がないから?大切な人がいないから?


もし今それらが満たされたのなら彼は生きたいと思うのだろうか。


僕のした質問と、彼のした質問は本質的に同じものであり



答えはどこにも…ない



「答えは出た?」


彼は答え合わせをするように聞いてきた


「答えは見つからなかった」


彼が少し残念そうに顔を伏せる


「そうだね、1つヒントを教えてあげるよ、俺が死のうとした理由についての。」


僕は黙って彼の次の言葉を待った


「深い、深い、海の底いくらもがいても数メートル先も見えない。


そこに光が差し込んだ。その向こう側は知らない世界。俺はその世界に憧れた」


僕は泣いてしまった


意味を理解する


あぁ…ダメだ彼を止めることは僕にはできない。


彼の今までを想像することもできない。


彼は僕の想像の及ばないところで生きている。


それでも…


「それでも…」


「うん」


彼が優しい目で僕を見る


「きみがいないとさびしいよ…」







あの日の僕はそう答えた。


他の人だったら何と答えていたのだろうか。


今の僕だったら何て答えるのだろうか。


あの日の答えを。

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言葉の形 teo @20020916

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