夢オチ 〜まどろみに沈む思考〜
にのい・しち
【四季】 「人間は完全に自由でない限り夜ごと夢を見続けるだろう」 フランス人小説家ポール・ニザン
覚醒
真紅の赤が色の無い世界を満たして行く。
ベッドの上に置かれているのは、幅の広い芋虫に見えるが、それは腕、足、と四肢を切り離された胴体。
鉄と泥が混ざり合った異臭が空気に浸透し虚無の空間へ広がった。
バラバラに散乱した腕、足はどれも同じ形の物はなく、指が関節から千切れている物もあれば、手首が切断され枝で作られた器のように折れ曲がっている。
足のスネから膝にかけて切り離され、足が丸太のように残っている。
ベッドから滴る血液の流れを追うと、床は赤い沼のように血溜まりが作られる。
鮮血の沼に浮かぶように転がる頭部は首だけで床に立っている。
薄い唇は苦痛から泡と吐血が混ざり口から漏れ出て、涙が枯れた充血した目は血が頬を伝い赤い道筋を残す。
これは――――――――私だ。
§§§
目の前へ広がる一面の白さに、眼球が焼かれたような
朝の光を増大させる白色は、覚醒を強引に引き起こさせる為の荒技に過ぎない。
身体は強烈な重力を感じ、ベッドから起き上がるのがはばかられたので、体操がてら首だけを動かして見回す。
白い壁、白い棚、白い机。
純白のカーテンから差し込む朝日を取り込み乱射させる代わりに、全く女子力が感じられない飾りっ気のない部屋。
壁には先月、友達と撮った集合写真が貼られ、手書きで『マリへ。21歳、おめでとう! 永遠に親友だよ』とサインされている。
写真を見て、ここが私の知る現実の世界だと解り安堵した。
部屋の空気を吸い脳へ血流と一緒に新たな酸素を送り、思考を覚醒させると半身を自動で起き上がるクレーンのように持ち上げる。
ほっぺをつねる行動から現実だと理解した。
「痛い……」
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