東西に分かたれた世界、消えることはなく

@nitikakui

オムニバスその1「核戦争」

核戦争は現在では現実味が失われてるかもしれない。

しかし20世紀後半当時ではかなり現実味を帯びていた。

シナリオの一つをここに紹介する。


2031年 ソヴィエト主権共和国連邦(U.S.I.S.)

「『核戦争2秒前?人類滅亡時計がさらに短縮。』次回の地理世界誌では第6次中東戦争以降の東西関係の悪化についても触れておくか…」

この国と西側諸国は戦争をしている。

中東イラク、ニカラグア、アンゴラ、モザンビーク、ナミビア、西サハラの砂漠地域で。

イスラエルとソビエト連邦の戦争の長期化(通称:エゼキエル戦争)は戦費の東西陣営双方での緊迫化を招き、東西の直接衝突が現実味を帯びつつあった。

イラクに派兵されたベトナム兵はクウェート、イラン、アメリカの軍隊と戦闘をしている。

クウェートの領有権を巡る米ソの鍔迫り合いは激化していた。

パキスタン、インドの全面戦争はもはや核戦争が避けられそうにないというのを示している。

ニカラグアでは極右勢力と左翼勢力の全面戦争に米ソ両国が支援した結果軍事費が国家予算の半分を超えてしまった。

ナミビアでは、南アフリカの独裁政権崩壊後ソ連が軍事介入を強化し、キューバ兵士が戦っている。

アラブ強硬主義者の頭目であるアルジェリアとリビアは西サハラでポリサリオ戦線を支持してモロッコの王政と対抗していた。

イスラエル戦争は終結の可能性すら見通せない。

人類はこのまま滅ぶのかもしれない。


アングロ=アメリカ大陸合衆国(USCA)

「ソビエトの軍事費は明らかに閾値を超えている。流石にもう少しでソ連は終わりではないのか?」

1990年代の冷戦激化といい宇宙空間での戦闘状態の発生と言い冷戦は明らかに悪化している。いや、冷戦ですらない。イスラエル、ナミビア、モザンビークではもはや米ソの直接対決すら生じている。

キューバ兵の大量投入に対抗する為キューバ人亡命者を組織して米海軍の艦船でキューバに上陸させるべきという主張すら出てきている。

そんな事をしたら核戦争になる?

いや大丈夫だ。イスラエルの時我々は核を撃たなかった。

核戦争は起きない。


曖昧な主張がなされ、戦争は激化していく。


イスラエルとソ連の戦争はついに核兵器の応酬にまで発展した。

シリアの首都にイスラエルの核兵器が落ち、報復としてソ連は核兵器の使用を決意する。

テルアビブにソ連の核兵器が落下。イスラエルの首都エルサレムは避けたもののソ連とイスラエルの戦争の激化は隠しようもなかった。

イスラエルはさらにバグダードに原爆を投下。

イラク政府はクウェートとの戦争に加えイスラエルとの戦争を背負い込む事になる。

中東最大の大国サウジアラビアは幸いな事に原油価格への影響を懸念した各国の圧力を考えて動かなかったものの世界情勢は格段に悪化した。


2031年、キューバにキューバ人亡命者と米艦船が姿を現す。

ソ連軍は徹底抗戦を貫き、

結果として米艦船とソ連の艦船の直接衝突が起こる。


そして悲劇は起こった。

一発の核兵器がカザフ共和国に着弾。

こうして冷戦は熱戦となった。

2つの世界は瓦礫と化した。

世界は2つの大国を失う事で核兵器のない世界を実現したのかもしれない。

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