第2話:潰れたトマトのように

翌日、ひとつの動画が拡散されました。


それは、生徒をいじめられていた生徒の記憶です。


「おい!金は持ってきたか?」


複数の高校生たちがその生徒の顔を殴られている映像からはじまり。

いじめられていた生徒が飛び降りある少年の「ようこそ。こちら側へ……」で終わりました。


すると恐ろしいもので、ネット上ではその映し出された高校生の顔から学校や名前、住所などが公開されていき。

いじめていた生徒の家には、苦情の電話が鳴り響きました。


「『ようこそ。こちら側へ……』ですか」


そういってサングラスを掛けた男が少年に紅茶を淹れます。


「うん。

 彼らは、もう立派な犯罪者だよ。

 イジメは犯罪だからね……」


「そうですね。

 でも、『潰れたトマト』は酷くないですか?」


「だってアレ。

 潰れたトマトだもん」


「しかし、人をトマト扱いするのは――」


「いや大丈夫だよ。

 本人は、母親と一緒にケロッと生きているよ」


「もしかしてあの赤い溜まりは……」


「うん、潰れたトマトだよ。

 モザイクかけているから多分ばれない」


少年は、窓から空を見上げます。


「そうですか……

 嫌がらせにとトマトサラダを用意したのですが、これは必要ありませんね」


サングラスを掛けた男がそういって笑いました。


「あ、貰うよ。

 トマトは、嫌いじゃないから」


「そうですか」


サングラスを掛けた男は小さく笑いドレッシングをサラダにかけました。


「ハート?」


「はい、愛情いっぱいのトマトサラダです」


「ありがとう」


少年は小さく笑ってトマトサラダを食べます。

少年の名前は、13。

それは、名前ではなく呼称なのです。

13には名前はありません。

サングラスを掛けた男の名前は誰も知りません。

ただ、周りのものからマスターと呼ばれているため13もマスターと呼んでいました。

マスターは、マクベスバーガーという喫茶店の本店を開いています。

マクベスバーガーといえば、女子高生に大人気のパフェがあることで有名です。


「マスター」


「どうしました?13」


「トマトサラダに紅茶は合わないね」


13が苦笑いを浮かべます。


「では、こうしましょう」


マスターは手際よくトマトサラダをパンに挟みました。


「はい、トマトサンドの出来上がりです」


マスターが、そういうと13は表情を変えることなく。

トマトサンドを食べる。


「あ、美味しい」


「はい。

 これは私の奢りですので次のお仕事よろしいですか?」


マスターがそういうと13は、小さく笑います。


「うん。

 いいよ。マスターのお願いなら何でも聞くよ」


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