第64話 - 王都召喚
ヘルゼが王都へ向かってから3ヵ月が経った
街の穢れた女たちは100を超え、ヴァルスト以外からもデブレオを頼り穢れた女たちが集まってくる
各地でスウォームを撃退したものの穢された女や巣から救い出された女達だ
呪鎧は10体となりクレマリーを中心として戦闘技術を教えている
デリックは外部の商団を管理する検問と取引を管理している
アンリは回復魔法による医術とその教育
街は玉鋼と携帯馬防柵しか産業はないが呪鎧のおかげで大型の魔獣たちが仕留められるようになり肉類を中心として食料の自給率も上がっている
来年には作物も育ちさらに安定するだろう
牛、豚、馬、鶏などもデブレオを通じて手に入れた
石壁も完成し小さな村から始まったクーベルシュタイルはもう立派な街になった
他と違うのは穢れた女たちを守るためにギルドが存在しない事だ
穢れていない者たちを無制限に受け入れるわけにはいかない
物流も非常に閉鎖的で門の外に倉庫を置き
デリックが検分して取引は全てそこで行われる
その後街の中に運ばれエリザを介して皆に分配されていく
少なくともここでだけは穢れた女たちが笑顔を見せ、人生を楽しんでいる
いつまでも運ばれ続けてくる穢された女たちが不憫でならない
街の自衛力はもう問題ない、そろそろオーク討伐も再会できるだろう
◆ ◆ ◆
ヘルゼが王都から戻ってきた
「エーサー…すまん…」
家の庭で紅茶を飲んでいると沈んだ顔をしながらとぼとぼと歩いてくる
「王都でなんかあったのか?」
「あった…」
まぁそうだろう、でなきゃ無駄に元気なヘルゼがこんなに凹むわけがない
「呪鎧の開発が進んでたのか?」
「逆だ…まったく無かった」
むしろ喜ばしいだろう、なんで凹んでいるんだ
「エーサー、お前に王から謁見の名誉が与えられる」
「意味が解らんな、どういうことだ?とりあえず座ってくれ」
ヘルゼは庭のテーブルに座るとため息をついた
ゾフィがヘルゼに気づき一緒同じテーブルへ座る
「呪鎧の製造について調べてたんだが…捕まっちまってな」
「捕まる?それでこんなに時間かかってたのか」
ゾフィが気まずい顔をしながらヘルゼに問いかける
「親父、まだ根に持たれてたの?」
「………」
ヘルゼはこくりと頷いた
こいつ王都で何したんだ
ゾフィは腕を組みため息をついた
「親父は昔王都で一番の技師だったんだ。宰相と喧嘩して追い出されたんだよ」
頑固な技師らしい
何を作れと言われたんだかわからんが
ヘルゼは頭を掻きむしりながら話始めた
「10年前に火薬が発見された頃だな、街を火の海にできる兵器を作れって言われてよ。民を巻き込むなって言ってつっぱねたんだ。ヴァルストは王制で民は全て王の奴隷みたいなもんでよ、本来逆らっちゃいけねぇんだ。そう教育されるし王族もそう言う風に生きてる、んで逆らった俺は王都を追放されたわけだ」
街を火の海にできるような兵器を作らせる王族か…それはそれで危険だな
王の性格次第で国の性質が決まってしまうのは大変だ
「結局呪鎧みたいなオークの呪印を使った実験はされてなかったんだが見つかってな。なぜ戻ってきたのか聞かれたわけだ。当然答えたくない」
そりゃそうだろうな
「追放された身で潜り込んだもんで一族流民にしてやるところを巨人兵について教えれば見逃してやるって言われてな…追放も免罪してやると…」
巨人兵…呪鎧か…
「喋ったのか…」
「すまねぇ、ゾフィを流民にしたくなかった」
まぁ、巨人兵という名前で伝わっているという事は既にバレている
ヘルゼがたまたま問われただけでいずれここに来ていた可能性もあるな
強引そうな王だ、女たちが被害に合う形で来なかっただけマシだろう
「だが作り方までは教えてないぞ!あれは広まっちゃいけない」
まぁそうだが…見つかったならそう遠くない未来作り方は発見されるだろう
とりあえず今はそのことはいい
「で、なんで俺が謁見なんだ?」
「狂戦士エーサーに頼むことはひとつだろ」
「オークの拠点攻略か」
「そうだ、巨人兵の力を試す意味合いも込めてな」
それ自体は別にいいんだが、街に手を出さないよう約束をしたい
それだけ強引な宰相と王がいるならいつか強引に手に入れようとする可能性もある
街に穢れを知らないやつらが入ってくるのはまだ避けたい
ここは恩を売っておこうか
「わかった。行こう」
ヘルゼは顔をあげた
「い、行くのか?」
「行く、オークはそろそろ討伐開始しようと思っていた頃だ。ちょうどいい」
「なんか…すまねぇな。俺の尻ぬぐいのために…」
「いいさ、ゾフィを守るためだったんだろ?俺を守ろうとしたも同然だ」
ヘルゼは涙ぐむ
「エーサー…お前ってやつはよぉ…」
ゾフィはヘルゼを見て微笑み、笑顔で話し出した
「あたしの旦那は世界で一番いい男だ!親父、エーサーに任せておきなよ!」
「あぁ…あぁ…すまねぇ…すまねぇ」
涙もろい男だがヘルゼもいい奴だ
「エーサーがいくなら、俺も行く事になってる」
「なぜだ?」
「人質だよ。お前が反乱を起こしたときに俺を盾にするためだ」
「なんだと…」
「王が各街で自衛力を持たせる代わりに全ての領主は身内の誰かを王宮に差し出している、そういう政治なんだ。俺はお前たちのために喜んで行く、安心しろ」
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