第57話 - 実験

デブレオが協力してくれるようになってから週に何人かずつ穢れた女たちが送られてくるようになった


嘘をついて新天地に逃げてくる者もいると思ったがそこは街の場所を伏せて噂を流し

デブレオの商団で厳選してから送ってくれているようだった


最初の女たちこそ回復に時間はかかったが送られてくる女たちは他の女たちがケアをし、1週間ほどで仕事を始める

力自慢も何人か入ってきて意思の強いものを呪鎧の乗り手に選抜した


今日は街の外でなにか轟音が聞こえ、女たちが不安がるので見に行った


きっとゾフィだろう、どうせまたなんか危ない物作っているに違いない

見に行くと呪鎧が地面に突き刺した鉄の棒に丸太を巻きつけ、巨大なメイスで殴りつける度に轟音が鳴っていた


「ゾフィ!何してる」


呪鎧は俺の声に気づくと向き直り、兜を脱いだ

ゾフィだ、予想通り


「エーサー!いいとこにきたね」

「街の女たちが不安がっているんだ、せめて説明してからやれ」

「あはは!後で謝っとくよ」

「で、それはなんだ?」


ゾフィはふんぞり返りさも偉そうに語り出す


「よくぞ聞いてくれた!これは爆裂メイスだ。呪鎧専用武器だよ」


なんだそれは


「ヴァルストには火薬ってものがあってね、鉄の弾を飛ばすのに使われているものがあるんだ。量に比例して爆発っていう衝撃波と火炎を出す粉がある」

「それがさっきの音を出すのか?」

「そう、この爆発はメイスの刃を広げるために使われている。装填式で柄をひねると1回ずつ火薬が装填され、一回の補給で10発使える」

「分かりやすく言ってくれ…」

「つまり殴った瞬間勢いよくメイスが広がって衝撃力を強化するんだ。試してみたら丸太くらいなら一発で粉々だよ!」


丸太が一発で粉々になるようなもん作るな

聖騎士が盾で受けても死ぬだろう

直撃すればジェネラルさえも一撃だろうな…


「エーサーのメイスも小型のものを作っとこうか?」

「いらん、腕が吹き飛びそうだ」

「あはは!エーサーなら義手が曲がる程度ですむよきっと」


曲がったら困るんだよ…


「あ、そうだった。エーサーの義手も新しいの作ったんだよ!ちょっと見て」


そういうとゾフィは街へガチャガチャと音を立てて走っていく


今のを見て新しいもの作ったと言われてもな…

俺の腕は耐えられるのだろうか


ゾフィを追いかけると呪鎧を脱ぎ、精錬所から新しい義手を持ってきた

黒く塗られており以前よりもずっと大きい


「これこれ、儀式を施して早速つけてみて」

「おいこんなにデカいものはいらないぞ」

「えー?あ、えっとね…」


ガチャガチャと義手をいくつかいじると義手はいつもの大きさになった


「装着式の武装を増やしたんだ、いくつかの種類の部品を着けることで異なる性能を発揮する」

「どういうことだよ」

「今ついてたのは鉄杭を飛ばす部品だよ、大砲なんてものつけたら腕が吹き飛んじゃうでしょ。少し火力を押さえて鉄の杭を飛ばすようにしてある。鋼鉄の鎧も貫けるよ」


それはちょっと魅力的だ

ジェネラルの鎧を貫けるなら一撃で倒せる


「今まであった義手の仕組みは廃止した、丈夫さと軽さを重視してね。その代わり部品をつけていろんな事ができるようにしたんだ」


天才か

デザインも元の義手らしい形から聖騎士の手甲のようなデザインになりカッコよくなっている


「む…正直嬉しい、つけていいか?」

「へっへっへ、着けて!あ、儀式もしときなよ。部品にも」


新しい義手に儀式を施し、全ての部品にも儀式を施して付け替えた


義手本体は今までよりも軽くなり、より精巧な動きができるようになった

指が今までよりも精巧に作られており滑らかに動く


「玉鋼で作ってあるから強度も段違いだよ。部品は毒ナイフを飛ばすもの、鉄杭を飛ばすもの、装填式の矢を20発連続で飛ばすものをとりあえず作ってある。また何か思いついたら部品を追加で作るよ」


兵器づくりに関しては最高の技師だな

あまり戦う事はなくなったがこれでジェネラルにも対抗できると思うと気が楽になる

最近は精力的にオークを殺しに行っていないのでスウォームも心配だ

壁の強化も考えないといけないな


「人も増えてきたしそろそろ壁も広げて大きくしないとな」

「そうだねぇ…石壁にしようか。資金は大丈夫?」

「皆のおかげでだいぶ潤っている。スウォームにも備えておかないとな」

「そだね、ゴブリン用の兵器も開発しなきゃ」


呪鎧の天敵は今のところゴブリンだ、これも何かしらしないといけないな


「ねぇねぇ、火を吹く槍なんてどうかな?」


そんな物騒な相談を俺にするなよ


「燃える水を背中に背負ってね、槍の中にそれを通して噴射するの。広範囲を焼ける武器だよ」


くそう、すごく危なそうなのに強そうだ


「燃える水は重いから呪鎧専用武器になるかなー、呪鎧が熱を持って中の人が苦しまないように工夫がいるなー」

「その辺は任せるよ。実験はちゃんと断ってからやれよ」

「あはは、心配かけてごめんね。ちゃんとエーサーに言ってからやるよ」


穢れた女たちを集めた街を作ったのがこの国でよかった

他の国ではゾフィに会えなかっただろう

ゾフィがいなければ女たちだけで街を守ることは難しかった

危ないものばかり作っている娘だがこの娘がいなければクーベルシュタイルはあっという間にスウォームに呑まれていたかもしれない


技師は偉大だ

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