第12話 - オーク狩り

森の近くまで来ると何台か馬車が止まっていた

他にも狩りに来ている冒険者がいるんだろう

頻繁に狩りに来れるほどオークがいると言う事はそれなりに女が攫われているという事だ

大きな集落もあるだろう


スウォームが発生するかもしれない、用心しよう


馬車を止め、早速馬防柵の準備をする

二つほど作ったところで偵察に出た


森へ入り半刻ほど痕跡を探していると五匹の足跡を見つけた

足跡の状態を見るについ最近着いたものだ


ここに罠を張って仕留めよう


馬防柵を地面に並べ、石を括り付けたロープを木の枝に回していつでも引けるようにしておく、仕込みを手早く終わらせオーク達の足跡を追った


すぐ近くにいたようで簡単に見つかった

オークに手斧を投げつけると頭に刺さり、一匹目を仕留める


残りがこちらに気づいて追いかけてくる

急いで罠のある場所まで退却すると勢いよく追いかけてくるオークを良く引き付けてから馬防柵を突き刺した

運よく二匹が罠にかかり、残り二匹となる


うまく行ったな、残り二匹なら何とかなるだろう

オーク達は怒り狂いながら何も考えていないかのように突っ込んでくる

大ぶりな攻撃を躱しながら一匹ずつ首へ斧を叩きこむ


片腕がなくなった事で攻撃の回数は減ったが丁寧に立ち回ればまだまだ戦えそうだ

倒したオーク達を引きずって五匹とも馬車に乗せ終わるとまだ日は高かった

日が暮れるまであと三時間はあるだろう

五匹とも牙は揃っているので銀貨500枚

残りの素材をどうやって売るのかわからないがギルドに持っていけば教えてくれるだろう


馬車を引いて街まで戻ると門衛が驚いていた


「もう倒してきたのか…五匹も?すげーなあんた。片腕でどうやったらそんな簡単に倒せるんだ」

「慣れだ」

「お、うん…そうか…慣れか…」


フルーフと喋っているときと比べるとずいぶん口数が少なくなってしまった

人見知りなんだろうか


さっさとギルドに報告しよう


ギルドの前に馬車を止めて中に入ると慌ててベロニカが飛び出してきた


「オークの死体をここまで持ってこないでください!移動させましょう」


ベロニカに連れられ馬房まで戻ってきた


「ここで馬主さんに馬車ごと引き渡せば後でギルドで鑑定して翌日には報酬をお支払いします。今後はこちらで馬主さんに馬をお返ししてください。馬車にエーサー様の記録をつけて管理してくれます」

「なるほど、わかった。悪かった」


ベロニカは小さなため息をついて頭を掻いた


「いえ、こちらこそ説明不足ですみません。こんなに早く、しかも丸ごと持って帰ってくるとは思っていなかったもので…」

「そうか、普通は牙だけ持って帰ってくるのか?」


ベロニカはオークに手を置いて観察する


「そうですね、戦闘でボロボロにしてしまうので牙だけ持って帰ってくる方が多いです。 革も肉も買い取れるんですけど欠けた鉄が肉に残ってしまうのでほとんどの場合は買い取れません。こんなによい状態で持ち帰って来たのは久しぶりに見ますね。お腹に穴が開いているものは銀貨800枚、その他は金貨1枚くらいにはなるんじゃないでしょうか。ゴブリンは持ち帰っても何の役にも立ちませんがオークはお金になります」

「それは助かるな、明日ギルドに取りに行けばいいのか?」

「はい、お昼を過ぎたころに来てください。鑑定が終わっていると思います」

「わかった」


意外といい稼ぎになる

たしかにオークは巨体なため革も使える部分が多い

豚の頭だが全身豚の皮というわけではなく、腹部はつるつるとした皮だが背中はイノシシのような厚い皮に覆われており背中側は俺も防具に使っている

冒険者ギルドのオーク狩りは意外と儲かるんだな


日が落ちるまでまだ少しある、宿に帰って兵器ギルドとやらに行ってみよう

宿に帰るとリンネが待ち構えていたかのように飛び出してきた


「おかえりなさいエーサー様!ギルドのお仕事はどうでした?」

「様はいらないよ。オークを五匹持って帰ってきた」

「すごい!五匹も?この短時間で…それだけの実力があればここではいい稼ぎになりますよ。連泊はどれくらいになさいますか?10日でも30日でも受け付けますよ!」


商魂たくましい娘だ、快活な返答がいやらしさを感じさせることなく主導権を握ってくる。やり手だな、きっとこの娘の笑顔にやられた客は多いに違いない


「ハハ、わかった。後で相談させてくれ。まだ日が暮れるまで時間がある、兵器ギルドへ案内してくれないか?」

「はい!お任せください!え、とエーサーさんこちらです!」


リンネに連れられ、兵器ギルドへ着くとその異様さに驚いた

外見は一見普通の大きな工房だが中に入ると仕掛けだらけで目を見張る

勝手に動く柱や車輪がいくつもある


リンネが案内を終えて帰ると入れ替わるように兵器ギルドの男が現れた

男は30代くらいの中年で髭を生やした筋肉質な大きい男だった


「よう、工房で働いているハーベイだ。何の用かな?」

「義手を作れると聞いて聞いたんだが」


ハーベイは俺の腕を見る


「なるほど、前腕か。指は欲しいか?」

「そうだな。握れたりするのか?」

「うーん、自由に動かせるような仕組みは無理だな。魔法とかで何とかなるのかもしれないが俺には心得がない」


うーん、フルーフが持っていた呪印の書に操作の呪印と言うものがあったはずだそれを利用できないだろうか


「それでいい、いつ用意できる?」

「今日採寸すれば明日には出来る。素材は鉄でいいか?冒険者だしな」

「それでいい」

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