第10話 - 冒険者ギルド
コンコン
ノックをする音で目が覚める
心地よい日差しの朝だ
今朝は宿の娘が冒険者ギルドへ案内してくれるんだったな
「ちょっと待ってくれ」
眠い目をこすり、装備を手に取りひとつずつ身に着けていく
右腕がなくなってから装備を身に着けるのがかなりしんどい
「リンネ、まだいるか?ちょっと手伝ってくれ」
「はーい、入りますよー」
扉を開けてリンネが中へ入ってくる
「ちょっ…」
リンネは下も上もまともに装備を身に着けていない俺の姿を見て顔を覆い、赤面した
「お着替え終わってないなら言ってくださいよ!」
リンネは扉を閉めてしまった
「待ってくれ…右腕がなくなってから装備するのに時間がかかるんだ。手伝ってくれ」
「あ、そういう事ですね…」
リンネはまた扉を開けて中に入ってくる
「すごい体ですねぇ…」
あちこちに傷を負った俺の体を見て興味深そうにしている
「未熟者の証だな」
「そんなことないですよ!こんなになってまで戦い続けるなんて…アールテラは冒険者様に護ってもらってるようなものなので尊敬します」
「そういえば門衛もそんなことを言っていたな」
「はい、ただ…エーサー様は良識のある方とお見受けしますが…荒っぽい方もいるのも事実で…」
「戦う事でしか身の証を立てられないならみんな同じだろう」
「そうなんですかねぇ、私は命を賭けてまで街の人を守るために魔物と戦うなんてできないです」
リンネは手際よく鎧を着けていく
「はい、終わりました」
「助かった」
「いえいえ、これから冒険者ギルドへ行かれるんですよね?案内します」
「よろしく頼む」
◆ ◆ ◆
冒険者ギルド
宿に負けないくらい大きな建物だ
扉は解放されており、大人が数人すれ違っても余裕ある広さ
二階建ての建物、一軒家数軒分はある大きさの建物だ
入り口に着くとリンネが挨拶をする
「こちらが冒険者ギルドです。中に入ってカウンターで受付に言えばいろいろ教えてもらえるはずですよ」
「そうか、ありがとう。兵器ギルドというのもこの街にはあるか?」
「はい、あります。そちらもご案内しますか?」
「後でいい、また宿に戻った時に聞く」
「はい!ここにしばらくお住まいになるのでしたら連泊したいと言って頂ければサービスしますよ!」
精一杯の笑顔で答えてくれた
「そうだな、また世話になるかもしれない。また後で」
「お待ちしてまーす!」
元気がよく無邪気な笑顔が素敵な娘だ
きっと宿は彼女のおかげで繁盛していることだろう
大きく手を振りながら見送るリンネを後にし、冒険者ギルドへ入った
中は小さなテーブルがいくつか置いてあり、入り口の周りには小さな紙が張り出された掲示板がいくつかある
カウンターには数人の受付と思われる娘が並んでいる
じっくりと観察していると受付の娘が声をかけてきた
「おにいさーん、こっちですよー」
愛想のよい受付の娘が手を振りながら声をかけてくる
中にいる冒険者たちを見ながらカウンターへ進んでいく
冒険者というだけあって皆屈強そうな男ばかりだ
カウンターへ着くと受付の娘が羊皮紙とペンを手に迎えてくれた
「お兄さんはミリアは初めてですか?」
「そうだ、ここで登録しろと言われている。この街の事を教えてほしい」
「はい!まずはお名前と年齢をお伺いしますね」
名前と年齢を羊皮紙に記し、質問は続く
「冒険者ギルドは初めてですか?記録にないですね」
「そうだ」
「ふーむ、全身オークの毛皮を着た片腕の冒険者なんてすぐ噂になりそうなものですけど…」
受付の娘はじろじろと俺の装備を一つずつ確認していく
「かなり使い込まれた武具ですね、オークとどれだけ戦ったらそうなるんですか」
「集落を3つ、はぐれを数えきれないほど、あと砦も襲った」
冒険者ギルドにどよめきが走る
「す、すごいですね。仲間の方はどちらに?何人で挑まれたんですか?」
「二人だ、仲間は死んだ」
ギルドの中にいた強面の男が声を張りながら近づいてくる
「おいおい片腕のあんちゃん。いいとこ見せようってのはわかるが嘘はよくねーぜ」
強面の男は頭一つほど大きく、体も俺より一回りほど大きかった
「事実だ」
「ほぇ~、片手斧を6本もぶら下げてかぁ?右腕もないのにどうやって扱うんだよ」
「腕がなくなったのは最近だ、普通はどれくらい倒せるものなんだ?」
「普通?まるで自分が普通ではないような言い方だな。どうせ死にかけのオークにトドメを刺して回ってただけだろう?必死に装備を汚して歴戦面かぁ?つまらねー男だ」
流民村にもいたな、こういう難癖付けたがる男は
皆めんどくさがってあまり相手にされていなかった
付き合うほどに長引くだけで何も得るものはない、相手にするだけ無駄だろう
受付の娘に向き直り、話を進める
「待たせたな、俺は冒険者になれるのか?」
「はい、あの…」
強面の男は顔を紅潮させて俺を突き飛ばすように腕を伸ばす
「無視してんじゃぁねーぞ!」
とっさに腕を取り、体をひねりながら相手の足を蹴る
強面の男はバランスを崩し、頭から床に叩きつけられた
起き上がると頭を振り、さらに紅潮して武器を抜く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます