第12話 真野の真意
この一週間、私が先輩に弁当を作ってきたのは先輩にもっといい女性がいるという事を知ってほしかったからだ。これは嘘偽りの無い本心である。
何故か先輩にはこの作戦がかなり効いたようだが、正直この作戦には殆ど効果が無いだろうと思っていた。私が先輩に弁当を作っていた本当の理由は別にある。
仁泉先輩は控えめに言って最低な先輩だ。先輩をたぶらかし、一度付き合っておきながら一週間で別れを告げてティモでの先輩と付き合ったのだから。
この話をバイト先で先輩から聞いた私は驚きのあまり別れた理由を聞き忘れたので、自宅でベッドに寝転がりながら状況を整理し二つの可能性を考えた。
一つは仁泉先輩がただただ最低な人だと言う事。仁泉先輩が遊びで先輩と付き合ったというのであれば最低以外の何者でもなく、圧倒的に仁泉先輩に非があるし言い訳は出来ないだろう。
しかし、色々な人から耳にする評価を聞いていると仁泉先輩がそこまで悪い人には思えなかった。
そしてもう一つの可能性、それは最初から仁泉先輩はティモでの先輩が好きだったという事。私にはどうしても仁泉先輩がただ遊びで先輩と付き合って一週間で振るような人には思えない。
最初はティモでの先輩が好きだったが、なんらかの形でティモでの先輩を諦めたのではないか。そのタイミングで隣の席にいた先輩に救われ惹かれていったのではないか。しかし、ティモでの先輩が忘れられず先輩に別れを告げたのではないか。
そう考えると全て納得する事が出来た。
正直、榊先輩を振ってくれたのはありがたい。ライバルはいないと安心しきっていた私の前に現れた初めての敵が最初からラスボスとかありえないでしょ。
容姿や本当の性格で勝負したとき、私は仁泉先輩に敵わないと思う。榊先輩を振ってくれて本当に良かった。
しかし、私には一つ懸念事項があった。
仁泉先輩が先輩の事をきっぱり忘れられているのかどうか、だ。
一時期とはいえ先輩を好きになったのだから、そう簡単に先輩に対する気持ちが消え去るとは思えない。それに、先輩を振ってティモでの先輩と付き合ったという状況を見れば、また先輩の事を好きになって関わりを持とうとする可能性は十分に考えられる。
その可能性をゼロにするべく、私は先輩に弁当を作っていたのだ。
私にとって仁泉先輩を忘れるための作戦を一緒に考える時間は都合の良い時間だった。学校で先輩と関わりを持ち、弁当を作ってくる事で私と先輩が友達以上の関係なのではないかと噂になってくれればいつかはその噂が仁泉先輩の耳に入り、先輩への興味は無くなり忘れ去ってくれるだろう。
今はかなりややこしい状況ではあるが、いつかは先輩が仁泉先輩を忘れて別れるという状況を作りだす。そのためなら私は何があろうとも先輩に協力をするだろう。
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