資源回収の夜

晴れ時々雨

🔪

今夜は廃品回収の日だった。使い込まれた刃物は何度か研磨すると刃が薄くなり脆くなる。手早く美しい行為活動に支障をきたすので古くなった凶器は回収に出され鋼以外の部品を外したのち特殊溶媒に漬け込むと金属に染み込んでいた血液が滲み出る。鋼部分は鍛治部門に回され再度打ち直される。

鋼が引き上げられた後の不純物の混じる溶剤にあるモノを一滴加えると綺麗に二つに分離する。人間の血液と水だ。

比重の軽い水分をポンプで吸出し、血液との境界線ぎりぎりまでスポイトで吸い上げる。このぎりぎりの見極めが各物質の仕上がりの決め手となる。より高純度を狙った高精度の作業になる。

ほぼ100%の血液は引く手あまたの買い手がつき、ほぼ100%の水は流行りの水販売業者に卸され一般社会へ流通するのである。

刃物に装着されていた柄の部分の木材、皮革材、その他動物の骨角爪牙類、鉱物類などは作業員が個々で持ち帰るか、各地域の自治体に準じた燃えるゴミの日に出すことなる。要は界隈では売り物にならない。

殺人鬼協会では月一度のペースでこういった日にちが設けられている。当然、再利用された刃物を販売もしている。リサイクル品は輝きが良いと評判もいい。因みに溶剤に加える一滴とはひとひらの漠然とした殺意である。


今夜は静かだ。鬼たちも眠る。

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