第5話 ENDmarker 2.

 コンビニを探した。

 どうせ、どこかで死ぬ人生。街を守った者の最期なんて。たいしたものじゃない。煙草で、自分の命を縮めていくのにも。特に抵抗はなかった。街を守る関係上、人のいるところでは吸わない。路端の吸殻やごみは、拾う。

 街中でごみを拾う度に。自分も、いつか、このごみみたいに。街から捨てられて、ひとりで朽ちていくのだと、思う。拾う者もなく。ただ、ひとりで。

 それでもいい。意味のある人生ではなかった。意味のある死にかたをしようとも、思わない。夢があった。誰かがいた。それだけで、よかった。わけのわからない幻想的なものに、生きる意味をもらって。そして今日も。日々を生きる。

 コンビニ。ようやく見つけた。

 夜の街。もういちど、振り返る。ネオン。人の流れ。すべてが、しあわせそうだった。このしあわせのなかに。自分の居場所はない。それでも。自分は、この、誰かのしあわせを。街を。守り続ける。

 覚えてすらいない、起きたら忘れてしまう誰かに、夢で逢ったとき。微笑むことができる自分でいるために。


 コンビニの灯り。輝いている。自分の人生に。輝かしいものなど、何もない。ただ、街を守るために生きて。何かを奪う。

 傷しかない。身体にも。心にも。すがりつくものは。夢しかない。その夢にも。自分が何をしているのか。ときどき、分からなくなることがあった。

 夢の記憶が、あるわけでもない。ただ、寝て。何かに触れて。誰かと話して。あたたかくて、やわらかい感覚が、残るだけ。他には何もない。

 存在するかどうかもわからない、別の世界。ただ、そのためだけに生きる自分。ひとりで。街を守って。その先には、何もない。

 ただ、乾いた心があるだけ。美味くもない煙草を吸って、自分の命を無意味に縮めるだけの。そういう、人生。

コンビニ。入らずに、灯りだけを。ぼうっと、眺めていた。こんなに明るいものの中に。自分は、入れるのだろうか。

「ばかだな、俺は」

ただのコンビニに、何をびびっているんだか。生きているけど。死んでいるようなものだ。唯一。眠って、見る夢だけが。自分の、すべて。

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