夢と幻想、ライターの行方(15分間でカクヨムバトル)

春嵐

01 ひとりの部屋

01

 生きてきた。


 なんとか。


 そこそこ大変だったけど。生きていくことはできた。ひとりで。


 お部屋を借りるのが、いちばん大変だった。ひとりでいると、こういう、細かいところで引っ掛かって立ち止まってしまう。


 部屋。


 机と、その上にカップがひとつ。


 それだけ。


 他には何もない。


 生活感のない、ただ住むだけの部屋。それしか、ない。生きるのにせいいっぱいで、他のことをする余裕は、なかった。


 唯一。


 わたしがいま座っているベッド。このベッドだけが、高級品。


 眠りだけは。わたしを、別な世界に惹き込んでくれた。


 わたしは。夢と幻想のためだけに。生きている。


 せいいっぱい、なんとか日々を生き残って。そして。この、ふかふかのベッドで眠る。そして、夢を見る。そのときだけは。わたしが。ひとりじゃないと、思える。


 わたしは。


 一人で部屋にいる。


 でも。


 寝れば、ひとりじゃないから。


 大丈夫。

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