奇妙な出会い(2)

 玄関先で倒れていた猫は、おそらく長時間冷たい雨に打たれ、低体温状態になり動けなくなり気を失い、少し衰弱気味でめだった外傷はなかったが、あと30分発見が遅れれば危なかったかもしれない状態だった。


 この猫は間違いなく飼い猫。ただ、妙な首輪している。茶色の革製の首輪に、シリアルナンバーのようなものが刻まれ、生年月日と思われる数字と、名前と思われる「ナナ」と刻まれた文字、どこか怪しげな感じもする。

 ナナは、どこからか逃げ出して来たのか。あるいは、なんらかの事情でナナは飼い主とはぐれたのか。ここ二、三日に何も口にしていない様子。


 鈴は、この猫に触れた時、生きたいという執念のようなものを感じ、この猫は普通の猫ではないと思った。このレントゲンからも、CT検査からも、それが窺える。

 まるで人間ばなれならぬ、まるで猫ばなれしているような感じを受け。超人ならぬ、超猫のような感じを受けていた。

 血液検査は非常によく、体つきはしなやかなでパーフェクトボディの美しい体、よほど健康管理に気をつけ、大切に育てられていると推測できる。

 性別は雌、名前はナナ。年齢は、明後日でちょうど1歳、人間の年齢で言えば、17歳になる女の子。10月10日に誕生日を迎える。


 ナナの治療は終わり、しばらくしたらナナの意識を取り戻すと思われ、今は1階の入院室で体力の回復を図る。

 本当ならすぐに警察に届けないと、飼い主がナナを探しているはず。しかし、鈴は迷っている。それは、この猫が普通の猫ではないから。

 鈴は机に向かい、バソコンのモニター画面を見ながら、レントゲン画像とCT画像を見直している。


 その頃、この動物病院の2階の入院予備室では、宿直だった副院長の早川瞳が、河川の氾濫に備えて避難した動物たちの様子を見に来ていた。


 早川瞳は、鈴の右腕とも言われ。鈴の親友で、小中高と大学まで一緒になるほど仲がよく。顔は似ていないが、幼い時からよく姉妹と間違われ。見た目と雰囲気で判断し、姉は早川、妹は鈴といった感じ。

 そんな早川は、鈴の父親と母親を尊敬し、極端な言い方をすれば、まるで自分の両親と同じくらい存在であり。しかも、この2人の働く姿を見て早川は獣医師になることを決めた。早川の両親も嫉妬するくらい、早川と鈴の両親は仲がよく、朝食と昼食を一緒に食べたりする仲でもある。この2家族は、家族付き合いもよく、親同士も仲がいい。


 午前8時を過ぎ、早川副院長は、2階に上がって来ない鈴が気になり、スマホで鈴に連絡をすると。すぐに診察室1まで来るように言われ。急いで1階の診察室1に行くと。

「瞳、ごめんね。このCT見てくれる?」

「CT!?」

 鈴と入れ代わりに、早川副院長は机に向かいモニター画面を見て驚いた。

「何これ? こんなの見たことがない……。これって猫の脳だよね? 脳が異常に発達している。どういうこと?」

「他の検査画像も見て見てよ」


 言われるがまま早川副院長は、他の検査画像もいろいろ見て、更に驚き。1番驚いたのはナナの脳で、人間の脳をそのまま縮小した感じになっている。それに、人間のような声帯も持っていて、おそらくナナは人間のように喋れるはず。

 現実にはありえない、バカげている見解、わかってはいるが。しばらくして2人は、2つの結論をだした。


 ナナは、突然変異を繰り返し、進化して生まれた猫の可能性がある。2人は、それで結論付けたい、もう1つ結論は非常に考えたくない。本当にそんなことが可能なのか。

 もしそうなら、その人を絶対に許すわけにはいかない、動物をなんだと思っているの、と言いたくなる。しかし、その結論を口出せば末恐ろしい。断言はできないが、2人はその考えを捨てきれない。


 なぜ、ナナが私の家の前で倒れていたのか、それはわからないが、言えることが1つある。私たちは、ナナを守らなければならない、私たちは獣医師だから。警察に届け出をだすことはできない。鈴と早川副院長は、そう決めた。


 この時、ナナが着けていた首輪には、超小型のGPS発信機が仕込まれていが、不具合が生じ壊れていた。それを電気関係に強い早川副院長が取り外し処分した。

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