噓吐き

ヘイ

どうなんだろうか。彼は本当は……

 前提として覚えていて欲しい。僕は噓吐きだ。それもとっても分かりやすいくらいに。

 誰にも言えない秘密があったんだ。

 実は僕は人を殺したことがあった。

 ああ、もちろん嘘だ。

 安心してくれよ。

 僕は人畜無害で、何一つとして問題を起こしたことはないんだよ。

 嘘をつくのも大嫌いで、噓吐きな人間を嫌悪している。

 清廉潔白を謳っていれば、人は聖人になれるさ。

 だから、僕は嘘が大嫌いな人間を演じている。嘘が嫌いな真似をしている。

 そうしたら、馬鹿な奴は僕を信じてしまうんだ。

 それが酷く滑稽で、これから全てがひっくり返されると言うのに、その台の上でダンスを踊るんだ。最後まで人を信じて馬鹿な奴。そう思って僕は台を返すんだ。

 ああ、嘘を吐いたけど、僕が誰かを殺したのは態とじゃなかったんだよ、その作り話の中では。

 偶然にも僕が手に持っていた包丁でその人の胸を突き刺してしまったんだ。

 刺したままだなんて酷いこと、僕はしなかったよ。その包丁を抜いて、鞄の中に入れて持ち帰った。

 まあ、全部嘘なんだけど。

 この話を信じた人なんているのかな。

 ヘッタクソな嘘だろう。

 だって、鞄を見ればすぐにバレてしまうんだ。ついさっきのことだからね。

 ……なーんてね。

『○○公園で学生の遺体が見つかりました。胸部を鋭利なもので刺されたような跡がありーー』

 ああ、テレビついてたんだ。

 さっきの話の流れから、何だか疑われるような気がするけど本当に僕じゃないさ。

 疑わないでくれよ。

 疑われたら、面倒だ。

 ……ほら、騙されただろ?

 

 そういえば、今、君はどこにいるんだい?

 

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噓吐き ヘイ @Hei767

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