雁金雑記
焙じ茶
一服目 ほうじ茶「雁金」
此処ではエッセイみたいなものを書いていこうと思っています。
第1回は、エッセイのタイトルにもなっている「
直訳すると、カモ目カモ科マガン属の野鳥「
新潟市江南区にあるお茶屋さんで自家焙煎して販売しているほうじ茶の商品名です。
そのお茶屋さんでは、静岡、九州、三重といった産地から茶葉を仕入れて、ブレンドした後、自家焙煎をしています。販売している商品は、
私が愛飲している雁金は、下から三番目の価格帯で100g300円です。コーヒーも深炒りが好きなのは、幼少の頃からこの深炒りのほうじ茶を飲んできたからだろうと思っています。
煎茶の世界のことはよくわかりませんが、きっと、価格と美味しさは比例しているものと思います。しかし、このほうじ茶の世界はどうでしょう。一時期、私の母が夕飯後に淹れてくれたお茶を飲んだら、いつものと違って美味しくありませんでした。何処かから借りてきたもののような余所余所しい味で口に合いません。母に聞いてみると、試しに上から二番目の価格のほうじ茶を買ってみた、とのことでした。
それだけ、“いつもの味”というのは、なんら見栄えがするわけではないものの、値段に関係なく、生活の確固たる位置に君臨しているものなんだと思いました。
ほうじ茶は、煎茶と違って、チンチンに熱くしたお湯を、たっぷりの茶葉を入れた急須に注いで茶葉の旨味を出します。湯飲み茶碗は、各人好みがあるでしょうが、私は熱くても手に持てる厚手の茶碗が好きです。食前よりは、食後にいただくとしっくりきます。
エッセイ執筆のご挨拶代わりに思い出話を一つ。
我が家では食後に出されるのが常のほうじ茶ですが、それ以外でも、家族にとって肝心な時にテーブルにそっと置かれたものでした。
それは、親父が私を怒るとき、です(笑)
「ちょっと、そこに座れ」
食事が終わって、観たいテレビも終わって、自室に行こうと立ち上がった時に親父が私をそう言って止めます。
「テレビを消して来い」
リモコンがまだない時代です。親父はそう私に命じます。
さきほどまでのバラエティ番組かなんかのうるさい音がやんで、小さい居間に静寂が訪れます。もちろん、私にとって招かれざる静寂です。
親父の怒るための確認作業が静かに行われている最中に、母が(全て、お見通しよ)とでも言わんばかりに、私と親父の目の前にいつものほうじ茶が入ったいつもの湯飲み茶わんを静かに置きます。
これは、すぐには済まない、お茶を飲みながらじっくり親父に怒られるように、というサインなのです。
このときのお茶は、もちろん、いつもの食後に飲むお茶と変わらないはずなのですが、いつも、いつも、苦めに感じてしまっていたのは言うまでもありません(笑)
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