第92話プレルス城②
————どちらでも良かったのです。
————依頼が、成功しても、失敗しても。
————ただ、貴方の力量が知りたかっただけですから。
————あの
————まさか、谷を鎮めてしまうなんて…………勿論、感謝はしていますのよ?
でも、もう谷の価値は無くなった。
貴方だって、攻略した場所に興味は無いでしょう?
頭に響くこの声は、ピュティロの声だ。
ああ、意識が朦朧とする。
ベッドの上で手足を縛られ身動きがとれない。
「うう…………、一体、何を?」
「あら、もう喋れるだなんて、なんて強い自我をお持ちなんでしょう…………フフフ。
でも、貴方はもう私のもの」
視界がぼやけているが、どうやら素っ裸にされているようだ。
ピュティロは穏やかに話しながら、俺の身体に指を這わす。
触れていく箇所が、迸るように熱くなり、快感で痺れていく。
「うはあああぁ」
なんて気持ち良さだ。
この方に全てを委ねたくなる————。
「私は…………貴女のもの」
「あら、良く出来ました。
いい子ね、ご褒美をあげようかしら」
ピュティロの足元に脱いだドレスの落ちる音がした。
見たい!でも、視界が朧気でよく見えない。
キラキラと光る靄の中に、グラマラスなシルエットが浮かび上がる。
彼女の背後に何か蝶の羽のようなものが光っているような…………
ピュティロがベッドに乗り、うつ伏せになると、私の手足が少し自由になった。
「先ずは、脚をほぐしてもらおうかしら」
何故か逆えず言われた通り、右脚から施術を開始した。
力を入れすぎないように、ゆっくり丁寧に、かつ丹念に揉み解す。
あまりの気持ち良さから感嘆の溜息を漏らすピュティロの、その身体からキラキラと光粉が舞い上がり、それを吸うと気持ちがとても昂っていく。
「そう…………上手よ」
「お聞きしたい事が」
「なぁに?」
「貴女は、…………本当に人間なのですか?」
「フフフ…………流石ね。
私の母は、妖精王の眷属なの。私も少なからずその血を引いてるわ。
母はここの領主だった人間の父に恋をし、結ばれ、この国の人間になった。その後、戦争が起こり、父は悪魔に殺された。
私の夫も、悪魔との契約を終わらせると言い、谷に降りてそれっきり。
でも、貴方が全てを終わらせてくれたのね」
「そうでしたか」
「ありがとう」
「い、いえいえ。へへへ」
お礼を言われると、嬉しくなってまた気持ちが昂った。
次は背中をお願いね、と命じられると、また少し身体が自由になり、言われるがままに背中をマッサージする。
すぐそこに胸や尻があるのは分かってる。
触りたいけど、何故か触れない。
まるでリミッターがかかってる様な感覚。
行動が制限されている。すぐそこに果実があるというのに、目の前に人参がぶら下がっている馬車馬のように決して届かない。
それが非常に切ない。
しかし、この方の命令は絶対。私は指示に従うだけ。勝手な事は許されない。
それでも、質問には答えてくださる。すなわち、会話の自由は許されているという事。
ピュティロ様の事がもっと知りたい。
「私を支配下に置いて、これから何をなさるおつもりですか?」
細い腰を指圧しながら、一番の疑問を投げかける。領主の一人を支配して何をするつもりなのか。
「そうねぇ…………フフフ、何をしたら楽しいでしょう。
妖精はね、好奇心旺盛で悪戯好きなの。
貴方を使って、この国を引っ掻き回すのなんてどうかしら?」
「お望みのままに」
ピュティロは目を細め、舌をペロリと出して、悪戯っぽい笑顔を見せた。
ムラムラする私を尻目に、ピュティロが仰向けになる。
遂に見る事が出来た正面からのお姿に、私の心臓が大きく跳ねた。
白生地に金色の細工があしらわれた小さい下着に閉じ込められた、柔らかく大きい患部に、目が釘付けになる。
どこを?どこを?どこをマッサージするのでしょうか?
「手を揉んでもらおうかしら」
て、手?手って、手ぇ〜?
本土から遥か遠い辺境地に飛ばされた気分になりげんなりする。
出来る事と言えば多少大袈裟に腕を動かして、身体を揺らす程度。
それでも、はみ出した患部がぷるぷると震え、私をより昂らせた。
孤高の揺らし師として、ごく自然に施術の一部の如く、ピュティロの腕を通じて患部を揺らし続けた。
少しずつだが、下着にズレが生じている。
こっ、これは!
私のささやかな計画がバレないように、些末な質問を織り込む。
「そういえば、アンリの処遇はどうするおつもりで?」
「そうねぇ、私の指示で動いてただけの男だけど、領民の手前、死刑にするしかないでしょう。
このまま生かしておいて、流言振り撒かれても困りますし。
同団の団長も責任を取って死刑かしら、ね」
何か胸がチクリと傷んだ気がしたが、ピュティロ様の判断に間違いは無い…………筈だ。
そんな事より、あと少し。
「さぁさぁ、次は、左手をば」
あと少しズレれば、飴玉がお目見えするのだ。
グィングィンと腕を揺らす。
「あん、ちょっと痛いわ。
そんなに強く引っ張らないで」
…………ポロッ。
そんな音がしたようなしなかったような。
呆気なく本丸を突破された堅固な城のお話。
頭の中には、悲願だった落城達成を祝い、鼓笛隊のファンファーレが鳴り響く。
薄いピンクの可愛らしい飴玉が、春の息吹に誘われた土筆のように、ひょっこりとその繊細な顔を見せた。どうも、はじめまして。
ねぇ、貴女は小さいのにどうしてそんなに存在感があるの?
あの飴玉を触りたい。舐め転がしたい。レロレロしたい。
だが、
葛藤が、脳を軋ませる。欲望が、身体を震わせる。
ここで、俺が思う確かな事は、飴玉を両方見た時に、プッツンするだろうという事だけだぜ。
そして、既に揺らし師としてのノルマは完遂しているッ!
肩の施術へと移った後、両飴玉はとっくに胸ポケットからこぼれ落ち、今では喧嘩独楽の如く、弾け飛び、暴れ廻っているのだッー!
無意識の中、俺は欲望のおもむくまま両手で患部を掴みにかかる。
頭から血が飛び出した瞬間、意識が完全に戻った。
どうやら、俺は術中に嵌っていたらしい。
実はこんな事もあろうかと、自身が状態異常に陥った際の保険として、定期的に、例えば一時間に一回のペースで自分に対して【魔法】が使用されなかった場合、自動的に【回復魔法】が発動する仕組みになっている。
最も危惧されるのは、その【魔法】自体が発動出来ない程の状態異常に陥った場合だ。
その時は、段階的な自傷が繰り返され、最終的には自死に至り、そこから強制発動する【
つまり、今回のテツオが洗脳されたケースにおいては、【魔法】使用不可を含む活動制限状態を体内が自動検知し、強制的に身体ダメージを与え、意識を無理矢理復活させたという流れになる。
これぞ、あらゆるリスクを自動的に管理し、痛みまたは死を伴ってでも復旧させる苦肉の策、【
頭から流れる血を消し去り、欲望のおもむくままにピュティロの腫れ上がった患部を両手で鷲掴みした。
「あらあら、そこは触ってはいけませんよ。
ふぅ……………………えっ!えっ?
何故、自由に動けているのですっ!
媚薬を大量に飲み、今も私の妖粉を大量に吸い続けているというのにっ!」
やはり、俺はまんまと洗脳支配されていたらしい。
危ないところだった。
こんな姿にされて、辱めを受けるとは、これはかなりのお仕置きが必要だな!やれやれだぜ。
反撃開始だッ!
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