第4話タンタルの森
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という夢を見た。
そんな訳もなく間一髪、時を戻し、今は遠巻きに池の花を見ながら、考えを巡らしている。
うーむ、あれはただの花の化け物なのか?
依頼の蜜を持つ花なのか?
他に蜜が採れる植物があるのか?
なんとも真偽がつかないでいる現状だ。
こんなことならもっと情報聞いておけばよかったなぁ。
離れた状態であの花をなんとかしたいが、何か力が無いものかと思案するとまたも頭に術式が浮かび上がる。
驚くことに今回は複数の術式が出てきている。
整理してみよう。
ここ大事!
【時空系魔法】には【時間遡行】【転移】【探知】【収納】【解析】がある。
【属性系魔法】は【火】【水】【土】【風】【光】【闇】となんか色々ある。
魔法が使えるとか胸が熱くなるな。
せっかくだから【解析】を使ってみよう。
キュアフラワー
HP:25
MP:5
ほほう!
名前、生命力、魔力が分かるのか。
あー、でも弱点や詳細までは分からないのかー。
まぁ、名前からしてこいつがキュアの蜜を持っているのは間違いないだろう。
【解析】は便利だぞ。
では、花摘みといこうか。
花に向かって手をかざしてみる。
なんか魔法ってこんな感じじゃなかった?
【火魔法】
「…………」
手のひらの先でメラメラ火が燃え上がり暫くして消えた。
うーん、なんか違うなー。
イメージをもっと明確にしなきゃダメなのかな?
よし、火球が飛んで行くイメージだな。
こうか?
【
おおっ!火球が花に向かって凄いスピードで飛んでいく!
何キロ出てるかはちょっと正解には分からないがプロ野球の速球派投手の出すスピードに匹敵するかも。
軽く感動だ!
ボゴォッ
花は動けない。成す術なく直撃した。
ドゴォン
直撃した瞬間に大爆発し煙が巻き上がる。
熱風が顔を撫でる。
おいおい、魔法ってすげーな。
煙が晴れてくると、花どころか後ろにあった池が蒸発してしまったのか、跡形も無くなり、さらに回りに生えていた木が焦げ付いている。
ひどい惨状だ。
花はどこにも見当たらない。
ミッション失敗。
「やり直しだ」
────——
何度か時を戻し、放出系の魔法を試してみるが、どれもが花を跡形もなく消滅させてしまう。
これは魔法の強度調整が出来るように練習をしなきゃいけないな。
蜜を取る為にはやり方を変えなければ。
あの邪魔なつるを何とかし、眠くなる花粉を浴びないようにする方法を。
イメージではパワーを強くしてつるを弾き、スピードを早くして花粉を避ける、そんな魔法。
となると、
【
これならどうだ。
棒を持ちスタスタ花に近付く。
つるが襲いかかってくるが動きはスローだ。
棒を振るうとつるがプツリと難なく切れる。
棒にも風の付与が掛かっているようだ。
キュアフラワーの勝利の方程式だった脅威の花粉攻撃も、風の障壁でガードされ無駄に終わる。
軽くポコッと叩いてみると花はたちまちぐったりした。
勝負ありだ。
力を抜くと体を纏っていた風が止む。
ふう、強いじゃないか。
魔法の力で運動能力がアップするのか。
では、お目当てのキュアの蜜をいただこうか。
花の中を覗くと蜜がみるみる涌き出している!
え?こんな涌き出すもんなん?
戸惑いつつも容器で回収を急いだ。
せっかくだから三つで300ゴールドならもう少し回収しておきたいな。
受け取りの上限があるのかもしれないけど、ポーションとやらの材料になるなら持っておいてもいいんじゃないかな。
池の周りにはまだいくつかキュアフラワーが咲いているので、退治して回収しておいた。
蜜回収後のキュアフラワーは綺麗な白い花弁となっている。
今まで気付いていなかったが、よく見るとキュアフラワーの咲いていた地面から、腐った動物や人間の死体が見え隠れしている。
池に水を求めて近づいた動物をつるで絡みとり眠らせ、生命力を養分にしているのだろう。
その咲く花の蜜が回復薬であるポーションの材料だとは皮肉なものだ。
ネタさえ分かっていれば簡単に倒せるだろうが、冒険者を目指す駆け出しにはいい勉強になるだろう。
この世界で生きていくには覚悟が必要だ。
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