第56回(改) 過去を知り、未来を視る
途中、仕事に苦戦していたため、BB小説家コミュニティでの活動も思うように進んでいなかった。
本当ならば、色々と新しい作品を出して、その感想をもらいたいところだったのだが、そんな余裕は無く、やむを得ず過去に作った作品について、感想サービスを受けることにした。
9月の終わりごろ、ギリギリになって、私は三本の小説を提出した。
その内一本は、紅一点の編集者・天岸さんに初めて見てもらった。
やり取りとしては、以下のような感じである。
「その昔同人誌で出した小説です。冒頭一万文字の感想を伺いたく、よろしくお願い申し上げます。
①タイトル
山田の田んぼに米はねえ
②あらすじ
石川県羽衣市巫女沢村。故郷の村で農家を継いだ元高校球児、山田虎吉は、亡き父と母が愛した田んぼで美味しい米作りに日々いそしんでいた。そんなある日——巫女沢村に突如UFOが襲来。隣の田んぼの稲を全て奪い去っていった。さらに宇宙人が現れ、村に宣戦布告。「我々は必ずやあなた方の米を奪います!」虎吉の幼馴染みにして人形使いの辰姫をリーダーに巫女沢村の人々は一致団結する。果たして勝つのは村人か、それとも宇宙人か。米を巡る宇宙戦争がいま始まる!」
それに対する天岸さんの感想は、こちら。
「拝見しました! タイトルといい、ノリといい、とても好きな作品です。特に宇宙人サイドは楽しいですね! ネーミングが個人的にツボでした。ダース米(こめ)ダー。この惜しい感が愛おしいです」
「冒頭はとても読みやすく内容が非常に頭へ入って来ましたし、キャラもしっかりと立っていて読んでいて楽しかったです! ただ、これは個人の好みになってしまうのですが、冒頭の宇宙人登場後のお話(二話~五話)の流れがスローで、もう少しシンプルにして動きのあるシーンへ早めに繋げたほうが読まれやすいように感じました。
しかし同時に田舎ののどかさが表現されているため、二~五話の展開を早めると、田舎という設定が記号になってしまうような気もするため、ここは非常に悩ましい点だとも思います」
「かなり微妙な内容になってくるのですが、冒頭の田舎シーンを少しだけスッキリさせるだけでバランスが取れるように感じます」
「地元にUFOを出現させて下さり、ありがとうございました」
同じ石川県に住んでいる天岸さんから、ほっこりした感想をもらえて、私としてはとても気分が良かった。日々の仕事の疲れを忘れられるような気がした。
その他の作品についても、次々と感想をもらった。
「こちらも、その昔同人誌で出した小説です。冒頭1万文字の感想を伺いたく、よろしくお願い申し上げます。
①タイトル
オバマの大統領
②あらすじ
福井県小浜市。不老長寿の八百比丘尼伝説が残るこの地にアメリカ合衆国大統領アーサー・ヘイゲンがやって来た……! 夢破れて実家に戻ってきた倉木まりんは玄関先に立つ大統領の姿に面食らう。さらに大統領に猟銃を突きつける父貫駆郎。いったいなにが起きているのか⁉︎ 行方不明となった大統領の娘をめぐり、様々な人物の思惑が交差する中、小浜の町をアンデッド軍団が襲い始めた! 大統領の愛国キャノンがいま火を噴く!」
それに対するサマンサ編集長の感想がこちら。
「拝見しました〜 大統領の登場が早くてスピーディーな冒頭ですね。序盤、父と大統領のやり取りがメインで主人公が棒立ちなのが少し気になりました。先に娘だけ帰らせてお父さんとやり取りさせてから大統領登場でもいいかもしれませんね。あとはお母さんが亡くなっているなら早めに明示しておきたいところです」
また、最後に出した一本は、途中で更新が止まってしまっている『バニーガールと斬鉄剣』であった。
「こちらは投稿サイトで一時更新していましたが、他のことで忙しくなっている内に、更新が滞ってしまっている小説です。冒頭1万文字の感想を伺いたく、よろしくお願い申し上げます。
①タイトル
バニーガールと斬鉄剣
②あらすじ
斬鉄剣の使い手、八咲千夏は、中学二年生の少年に仕える専属のバニーガールである。とある実業家が遺した遺言により、四六時中バニーの格好をして少年の警護に当たる契約を結ばされた千夏。不本意ではあるが、仕方がない。せっかく手に入れた職、恥を忍んで自分の務めを果たす。やがて彼女の前に現れるメカ軍団。本領発揮と、千夏は嬉々として斬鉄剣をお見舞いする――。バニーガールと斬鉄剣。異色の組み合わせが織りなす現代バトルファンタジー、ここに開幕!」
これもサマンサ編集長が感想を返してくれた。
「こちらも拝見しました。冒頭、主人公の経歴がきちんと説明できているので、違和感なくエピソードに入っていけます。少し工夫するなら、――武蔵に雇われる直前から就職活動に悩む主人公を描いて、主人公の説明。そこへ子息の警護というぴったりな求人を見つける。面接もクリアしこれでひと安心と思いきやバニーガールの条件を出される。――というかたちでバニーガールの印象を強く描くこともできると思います」
今まで自分が作り上げてきた作品群に、第三者の目線で感想をもらえて、自信に繋がるのと同時に、自分の強み、弱みを知ることが出来た。
※ ※ ※
そして、もう一つ。
9月末に、とても嬉しい知らせが飛び込んできた。
実は、『金沢友禅ラプソディ』を、6月にとあるコンテストに出していたのである。
それは「オール書籍化コンテスト」。
合同会社想実堂という出版社が開催した、受賞作に限らず、応募作全てを電子書籍化してAmazonKindleで出版してくれるという、とても面白い企画のコンテストだった。
大賞であれば、紙書籍にもしてくれるという。
試しに挑戦してみるか――
そう思って出した『金沢友禅ラプソディ』が、佳作を取った。そのお知らせが、メールで送られてきたのだ。
応募総数は少ない賞とはいえ、その中で第二位の栄誉を得ることが出来た。
そのことに、私は心弾む思いであった。
そうだ。自分は腐っても、元プロなんだ。
仕事では散々な目に遭っているけれども、それなりに経験を重ねて、執筆の世界に身を置いてきたのである。これくらいの成果は上げても当然なんだ。
12月には、Kindleで『金沢友禅ラプソディ』が販売開始となる。
未来は明るい。
そのことを励みに、私は日々の活動に取り組んでいた。
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