第7回 電撃小説大賞への道~その二~
さて、電撃小説大賞へ応募するとなると、どういうネタで書くか、そこが一番の問題となっていた。
近い年の大賞作品は何冊か買って、分析したりもした。
『ミミズクと夜の王』等は極めて特殊なケースであるが、それ以外の大賞作品を見ていると、大体の傾向はわかってきた。
・日本が舞台。
・時代は現代~未来。
・今までにないアプローチ。
まず基本的に、この要素を押さえていれば間違いは無い、と判断した。
そうなると、ちょうど2011年から書き続けていた『よさりの兎』が、現代日本を舞台にした高校生達の青春物語であるので、題材としてはうってつけだと思われた。
ただ、大きな問題が一つあった。「今までにないアプローチ」という点である。
「地味……なんだよなあ」
高校拳法部の青春ドラマ。
それだけだと売りになる要素が何も無い。「今までにないアプローチ」にはならない。
今にして思えば、メディアワークス文庫狙いで書けば良かったと思うのだけど、どうせチャレンジするなら一番目立っている電撃文庫のほうで賞を取りたかった。
頭をひねって、どうすれば良い形になるかを模索し続けていたが、なかなか答えは出なかった。
ただ、時期はもう2月。電撃小説大賞の締切まで約2ヶ月ほどしかない。今から新しい作品を一つ仕上げるのは、時間的にも余裕が無かった。
仕方なしに書店へ出かけたりして、何か良いネタは無いかを探してみたりした。
そんなある日、ふと、昔どこかの書店で見かけたラノベの帯のことを思い出した。
その帯には、こう書かれていた。
――巫女vs戦車――
あまりにも強烈なインパクトを残した帯だったが、残念ながら作品名までは憶えていなかった。でも、そのキャッチコピーを思い出せただけでも十分だった。
「そうか、ありきたりなものでも、イメージ的に普通は組み合わせにならないものを組み合わせると、オリジナリティが出てくるのか」
巫女、はよくある要素だ。
戦車、も特に目新しさも無い。
だけど、巫女さんが戦車と戦う、となれば、これはもう異常事態である。何がどうしてそうなった、と興味を引きつけられる。何となく、話の内容も面白そうな気がしてくる。それこそ、「今までにないアプローチ」だ。
ならば、こっちは「拳法×○○」という形で、「○○」に入るものを何か考えてみよう、と思った。
そこでまた悩み始めた。「拳法」は、色んなものと相性が良すぎるからだ。
例えば、「拳法×魔法」としてみても、魔法を使う拳法家なんてのは昔から色んな漫画やアニメでよく出てくる要素だから、何の新鮮味も無い。
「拳法×ギャンブル」と考えてみれば、漫画の『嘘喰い』等が既にあるように、これまた相性が良すぎるから「今までにないアプローチ」へとは繋がらない。
じゃあ、「拳法」ってなんだろう? という根本的なところから、いま一度考えてみることにした。
「拳法」のイメージを書き連ねると、
・強い
・かっこいい
・ストイック
といったものが上げられる。
じゃあ、その逆の要素を組み合わせればいいんじゃないか、と思った。
例えば、「拳法×最弱」としたらどうなるか――
「駄目だ駄目だ、そんな話、誰が読みたいんだ」
上手に書ける人はいるとは思う。だけど、最弱の拳法家の話なんて、普通に書けばストレスが溜まるものになるだけだ。何よりも書いているこっちがストレスが溜まってしまう。
「拳法」に「かっこ悪い」要素の何かを掛け合わせるのも違う気がした。さえないサラリーマンが実は凄腕の拳法使い、とかなら、ありふれてはいるけど、面白いものになりそうではある。でも、電撃文庫の読者層からはかけ離れた作品になってしまう。
では、「拳法」に「ストイックではない」ものを掛け合わせたらどうだろうか。
(……「ストイックではない」ものとは?)
そう考えてみて、真っ先に頭に浮かんだのが、「エロ」である。
ただ、エロ要素の強い作品を書きたいわけではなかったので、もうちょっとマイルドにしてみて、「セクシー」で考えてみた。
そこまで行き着いたところで、不意に思いついたものがあり、本棚を漁ってみた。たしか、そういうコンセプトのラノベがあったはずだ。
見つけた本は、競泳水着を着た美少女達が戦隊を組む、という内容のものだった。
「これだ! コスチュームだ!」
格闘ゲームとかでは、衣装チェンジで普通ならあり得ない格好をした女性キャラが戦う光景はよくある。それが現実になったらどういうシチュエーションなのか、落とし込んで考えてみて、ラノベにしてみればいい、と考えてみた。
その時、すぐに頭の中に飛来したキーワードがあった。
「バニーガール」
「拳法×バニーガール」。あまりにも現実離れしたコンセプト。だが、それがいい、と思った。これ以上の良案は出てこなかった。
バニーガールの格好をした美少女高校生達が悪を討つ。イロモノ枠ではあるから、大賞は厳しいかもしれないが、強烈なインパクトで何かしらの賞を勝ち取ることは出来るかもしれない。
「これで行こう! タイトルは――『バニィ×ナックル!!』」
方向性は決まった。
後は、すでに書き終わっていた『よさりの兎』を『バニィ×ナックル!!』へと改稿するだけだった。
(続く)
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