記憶の夢──儚い幸せ
桜野 叶う
事故、知らない記憶
あ、車が
ふと顔を上げると、目の前にはなんと車の顔が。車は、こちらに
だって、私は
私は止まった。動かない。脳は一生懸命信号を送っているが、私はそれに
目の前には青空。目が
これは、何だ? まるで夢みたいだ。私の意識はあるが、動くことはできない。もしくは映画を
すると、目の前には知らない女性が現れた。ピチピチお肌の
その
『はるつぐさん! はるつぐさん!』
女性は
よく分からないうちに、女性の
私は目をゆっくり開けた。そこは病室だった。いつの間にか、病院に運ばれていた。生きていた。車が突っ込んで、飛ばされた。そこら辺は覚えていた。というより、思い出した。目が覚めてから二秒くらいたって、よみがえってきた。それから一秒もたたないうちに、けっこう飛ばされたことを思い出した。それ以降は、五秒以上たってもよみがえらなかった。でも、頭の
あと、気を失っている間に見た夢。今もうっすら残っている。でも、時間が経つと忘れてしまうだろう。なんだか、忘れたくない。忘れてはいけないような気がする。ベッドのそばに置かれていたカバンから、その他用のノートを取り出した。絵を描くためや、
『青空 雲 女の人──若い、頭をケガ。
自分──男の人、はるつぐさんという。
事故でたぶん死んでしまった。』
けっこう出てきた。夢の中の自分──はるつぐさんは、私とどんな関係が? どうして、私の夢に出てきたの?
扉をノックする音がして、扉が開いた。母と姉。二人ともとても心配そうな顔をしていて、大丈夫なの? 記憶は飛んでないよね。などと聞かれた。強く打った頭はまだ痛みがあるが、それ以外は特にないし、記憶も
「死ななくてよかったわ」
「運いいね」
と母と姉はそれぞれ言う。そんな二人の笑顔を見ると、死ななくてよかったとほんのりそう思った。もし死んでしまえば、二人はあの心配そうな顔のまま、
「ねぇ、はるつぐさんて知ってる?」
母と姉にはるつぐさんのことを聞いてみた。
「はるつぐさん? 誰それ」
「どっかの俳優?」
「ううん、たぶん違う」
二人とも知らないみたいだ。いつの間にか夢の記憶はなくなっていたので、ノートを見ながら話した。
私の話を聞いた姉が、一番先に口を開いた。
「その夢ってやつ、
「そうまとう?」
走馬灯って、人が死ぬ
姉の説明によると、突然死が迫りくるときに、脳がそれをどうにかさけようとして、過去の
しかし、それが本当だったとしても、私はどうにも納得がいかない。なぜなら、走馬灯とやらが映す
姉は、うーん、と考える。
「たぶん、ゆかりとはるつぐさんは、なにかしらのつながりがあるんじゃない?」
「つながり?」
「はるつぐさんは、ゆかりの前世の姿だったとかね」
「え⁉︎」
「それなら、走馬灯ではるつぐさんの
まあ、あくまで
でも、私はそれが本当にそうなんじゃないかと思った。すごくあり
もしかしたら、はるつぐさんは、私の前世かもしれない。
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