第18話 献身的な介抱(改)
(これまでのあらすじ……)
愛し合う者同士が結ばれない不条理を噛み締めながら、少年は愛するおばさんとの思い出を胸に、大人の階段へ一歩を踏み出します。その少年の前にふとしたきっかけから気になってしまった女子生徒が現れます。そのきっかけはやはりスリップでした。やがて、少年は誰もいない教室で、少女のスポーツバッグを開けて覗くという行為に走ってしまいます。初めて触れた制服のプリーツスカート、そして、同級生のスリップ。少年はその女子生徒への関心の高まりを押さえられなくなりつつありました。
**********
その日から……、友人と三枝理恵子の自宅探索の旅に行きながら、友人に彼女の家を教えることもないままに帰ってきた少年は、確実にその少女のことを意識してしまった自分を自覚するようになりました。
その日の夜、少年は前に手にいれたおばさんのスリップを身につけて、何度も何度も激しく手淫に耽ってしまいました。これまでにもおばさんのスリップを着てオナニーをしたことはありましたが、今回のオナニーは今までとは違いました。
今まではおばさんのことを思い出してオナニーをしていましたが、今回はおばさんではないのです。直接手に取った理恵子の美しく可愛いスリップの香りや感触を思い出しつつ、毎日、教室で見ている理恵子の笑顔と、そのブラウスに透けるスリップを想起して、自分のものをしごいていました。
初めて触った同年代の少女のスリップに興奮してしまった少年は、一度くらいの射精では収まりません。
初めて触れた女子の濃紺プリーツスカートの感触を思い出し、スカートを翻して駆ける少女の姿や、腰から手を回してスカートを整えながら椅子に座る姿、スカートを揺り動かしてスリップの裾をチラチラさせながら教室で友人とダンスの練習をしている姿
……いつしか制服とスリップという組み合わせに、少年は激しく興奮するようになってしまいました。
それは、大好きだったおばさんのオナニーを覗いてしまった時の状況に似たものだったかもしれません。
覗きという行為が、極度の罪悪感と緊張感を生み、元々大好きだったおばさんという素地に、その時におばさんが着用していたスリップへの過度な思いが偏執的に加わり、ランジェリーへの極度のフェチ意識が高まりました。
それまで精通もなく、異性意識も薄かった少年にとっては尚更に強烈なことでした。
今回も、同級生の女子のバッグを無断で開けて、女子のスカートやスリップに触れてしまうという、極度の罪悪感と緊張感が、元々、好意を感じていた少女に対する恋愛感情というものに容易に結び付いてしまったのです。
それに、きっかけはブラウスに透ける少女のスリップでしたが、いつも少女の居場所を目で追う内に、少年にとっても知らず知らずに少女への恋慕の情を醸成していったもののようでした。
こうして、少年は、高校入試という大事な時期ではありましたが、同じ年代の女性への思慕という、十代の少年として至極まっとうな恋愛を経験する機会に恵まれたのでした。
そして、少年にとってはダメ押しとなる少女との出来事が、少年の身に間もなく起きたのでした。それは、よくありがちな少年少女の出来事であったかもしれませんが、将来的には、その後の少年の人生を一変させるほどの転機となった出来事なのでありました。
**********
夏の中体連県大会直前のこと、地区代表として、猛暑の中、練習に励んでいた少年は、部活動を終えてから忘れ物に気づき、柔道着を制服に着替え、疲れた身体を押して、体育館から教室へとフラフラになりつつ戻りました。
既に校舎には誰もおらず、まさか体育館から戻ってくる生徒がいるとは思いもしない当直の先生も、既に見回りを終えていて、まるで校舎には少年がひとりいるだけのように思われました。
ところがそこには、少年と同じように忘れ物を取りにきた体操着姿の理恵子がいました。
「あれ?慎一くんも忘れ物?早くもボケたかね。」
「おう、お互い、歳は取りらくないもんらな……。」
互いに親しみのこもった軽い挨拶を交わした二人でしたが、少年の声を聞いた途端、瞬間的に少女の顔が曇りました。
「慎一くん、おかしいよ……ろれつが回ってない? 」
少年は笑いながら返事をしましたが……、
「なに、ひとを、ボケ老人みらいに……あれ……。」
その瞬間、少年は立ち上がろうとして、急にふらつき、ガクッと机の前にへたってしまいました。
「ほら、熱中症だよ! 」
この時の少女の反応は、素晴らしく見事なものでした。後からこの時を振り返った少年も、その的確な対応には感嘆するばかりでした。
その時、少女は異変を察知するや素早く少年に身体を寄せました。
「えっ……ちょ、ちょっと……。」
「いいから!」
少女はすぐさま、少年の右腕に自分の肩を貸します。少年の脇腹に、柔らかな少女の体が密着します。
(あわわわわ……。)
少女は教室の後ろの広い空間に釣れてくると、日差しの角度で出来た日陰に少年を寝かせ、頭に枕のようなものを当てたのでした。
ひとことで肩を貸すとは言っても、年頃の少女が異性と身体を密着させることが、どれほど恥ずかしいことか。しかし、異変を感じた彼女に、そのような躊躇はまったくありませんでした。
「だいじょうぶ……らよ……ちょっと……めまいがしたらけ……。部活で、くたびれたんらよ……。」
恥ずかしそうに照れ笑いをする少年でしたが、少女は真剣な眼差しで答えます。
「ホームルームで先生が言ってたよね、部活動終わりや放課後が一番危ないから、しっかり水分補給するようにっ、て。」
少女は少年を床に寝かせ、枕になるものをバッグから取り出して、少年の頭をゆっくり持ち上げて、枕を差し入れます。
「大袈裟にしないれ……恥ずかしいし……。」
「……いいから、しゃべらないでじっとしてて。おとなしく、ここで待っててよ。」
そう言うと、少女はパタパタと教室から出ていきました。保健室の先生でも呼びに行ったかな? と少年は思いました。
(そんな、騒ぎ過ぎだよ……でも、また怒られそうだから、おとなしく寝てた方がいいよね……。)
少年としては、確かにめまいもして、頭がぼーっとはしてますが、ちょっと座ってりゃ大丈夫くらいの気持ちでいました。
それに女子と体を密着させるなんて、小学生の時の運動会で二人三脚をして以来だし、枕を入れる時に頭を抱えられたのも、かなり近くに密接しており、少年がぼーっとなってるから良かったものの、本来ならば、赤面鼻血ものです。
ほどなく、少女は戻ってきましたが、誰かを連れて来るわけでもなく、ひとりで戻ってきました。
この3年の教室は北側校舎の3階ですが、保健室は南側校舎の1階で、階段と渡り廊下を越えて行かねばなりません。それにしては戻るのが早いし、第一、こんな放課後まで保健室の先生がいるはずもありません。
一人で戻ってきた少女の手には、恐らくは洗面所で濡らしてきたであろうタオルが握られていました。
「ちょっとごめんね。」
そう言って少女は少年のワイシャツの第二ボタンから4つほどボタンを開けて、更に、ズボンのベルトを緩めました。
「な! 」
「じっとしてて! 」
少年は、少女から腰に手を掛けられた瞬間、とてもびっくりしましたが、少女の剣幕に逆らうことも出来ず、言われるがままにじっとしていました。
(あわわわわ……。)
でも、少女が自分に息づかいを感じられる程に接近し、シャツのボタンを外し、ベルトを緩める指づかいまでをも感じて、少年の鼓動は激しく鳴動し、少年は本当に熱中症でそうなっているのかどうかさえもよく分からなくなってしまいました。
次に少女は、冷たく濡らして絞ってきた自分のタオルを、ワイシャツを開けた少年の胸に当て、同じく冷たく濡らして絞ったスポーツタオルで少年の両腕をかいがいしく拭き始めました。そして、少女のスポーツバッグに入れていたステンレスのミニ水筒を、少年の首筋や腋の下に何度も転がしながら当ててくれました。
少女の手が、タオル越しに少年の胸や腕を拭いているのを感じて、最初はドキドキした高揚感に包まれていましたが、気持ちが落ち着くにつれて、次第に少年は不思議なほどの安らぎをおぼえました。
そして、少女に介抱されながらも、頭の中ではレミねぇに抱かれて甘えていた昔のことを、夢心地に思い出していました。
「どう? 私のポット、まだ、氷が残ってたから、少しはきくと思うけど……。」
少年は、心底から感じる染み渡るような素直な印象を、少ない言葉で返しました。
「あぁぁぁ……気持ちいい……よ……。」
少女は冷たいポットを少年の首や腋の下に当てつつ、クリアファイルを団扇代わりに扇いで、少年の顔や上半身に風を送り続けてくれました。
(慎一くん、大丈夫かなぁ。部活で応急処置の仕方を聞いていて良かった。まさか、自分がしなきゃいけなくなるとは思わなかった。……でも、……相手が慎一くんで、良かった。)
少女は女子テニス部に入っていて、テニスコートは屋外にあり、炎天下でも部活動は屋外でやるために、熱中症対策はしつこいほど聞かされていたのが幸いしました。
まさかに自分が一人で応急処置をしなければならない場面に遭遇するとは思わなかった少女でしたが、たまさか、その対象となったのが男子の中でも親しい隣の席の慎一であったことは、少女にとっても幸いでした。少女は、心から少年の体調を心配し、必死に介抱したのでした。
一方の少年には、随分と長い時間だったような、でも、あっという間の出来事だったような気持ちがしました。そうして、しばらくすると、それまで頭がぼーっとして、気持ち悪かった感じが段々と落ち着いてきて、上体を起こせるようになりました。
「無理しないで、……熱は、ない?」
そう言うと、少女は少年の頬や額に手を当ててくれました。
少年の目の前に、少女の唇が近づいてきます。ピンク色した可愛いぽってりとした唇に、真っ白な歯が僅かに覗いて見えます。こんなにすぐ間近に女の子の唇を見たことのなかった少年は、思わず視線を下にずらしました。
(あわわわわ……。)
すると、今度は少女の白い体操着がぐんぐん迫ってきます。少女の体操着には山型の中学校の校章と少女の名前が鮮やかに描かれていますが、思った以上に膨らみのある少女の胸に気付いた少年は、恥ずかしそうに再び視線を斜め下に下げてしまいます。
(うわわわわ……。)
しかし、そんな少年の気持ちも分からずに、少女は少年の額に当てた掌を自分のおでこに当てて、熱の有無を気にしています。
「熱はないようだけど、……どうしてかな、ほっぺたがまだ、結構、熱いよ?」
「い、いや、……へ、平気だよ!」
少年は自分のよこしまないやらしさを悟られてしまたのかと、ドギマギしながらも、平気さを装って体を起こします。
「大丈夫? 吐き気とか、頭痛とかはしない? 」
そんな少年の思いを知らない少女は、どこまでも少年の体調をおもんばかり、上半身を起こした少年の顔を覗きこむようにしながら、心配そうに少女が尋ねます。
「うん、そこまでは……なんか、フラフラしなくなったし、もう大丈夫だと思う。……ありがとう、理恵子。」
起き上がった少年はそこで改めてビックリしました。ベルトが緩められたのは何となく分かっていましたが、いつの間にかズボンのホックまで外されていたからです。
(げえ~!やっべ~!パンチラしちゃったよ~!)
とりあえずファスナーは下げられてはいませんでしたが、それでも1~2センチは自然にずり下がっていて、その状態はかなり少年の狼狽を誘うものでした。
しかも、起き上がった少年を更に驚かせたものが床にありました。なんと、少女は自分の制服のプリーツスカートをたたんで枕にして、少年の頭に敷いてくれていたのでした。
しかも、そのスカートは少年の頭の汗で、頭を置いた部分だけがぐっしょりと濡れていました。
(ええ!こ、これ、これ、理恵子のスカート!ぼくの汗でグショグショじゃんか!まずい!まずいよ!……てか、り、理恵子の、スカ、スカートが、ぼ、ぼくの頭に……え~!え~?え~!!!)
唇から始まり、体操着の胸の膨らみ、ズボンからのパンチラと続き、少年の顔は完全着火、少年の頭の中でボンッと音を立てて松明のように燃え上がってしまいました。
少女の献身的な介抱で、せっかく熱を放出して冷えた筈の身体でしたが、少年の顔は再び耳まで真っ赤になるほど恥ずかしくなってしまいました。
「あれ? ……まだ、熱があるんじゃない? 顔が赤いよ。」
少女は、それと知っているのやら、知らないのやら、元気になった少年に対して安心したように、クスッと笑いました。その笑顔に、少年はまたドキッとして、完全に少女に心を奪われてしまいました。
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