第6話 友人

さやかの母親の不倫は、さやかが小中まで学年中の話題になっていた。


小学校の頃のように、男子から「不倫女の娘」と中学生になってからは茶化される事は、なかったが、ある一定の女子からは、白い目で見られていた。


心を開ける友達も、ろくに出来ず、高校は中学から遠くの学校を選んだが、同じ中学から入学した男子が1人、見事に、さやかの母親が不倫をした事を、学年中に広めた。



あっと言うまに噂は広がり、すでに大学に行っている兄ミタカとの関係まで、怪しまれる始末だった。


さやかは、小中と同じく、口数も減り、また学校にも家にも居場所がなくなった。



トモコと出会ったのは、そんな時期。


無口で優しい父親が病院で独りで死に、葬儀も母親が密葬で終わらせ、父親は父親の両親、祖父母のお墓へ埋葬される。


それからは、ますますさやかは、母親を苦手な家族として、女性として見るようになった。母親の再婚相手の父親の明るい性格にも馴染めず、大学に入学して、すぐに兄ミタカは、先輩のエリと付き合いだす。



さやかの居場所は、学校にも、家にもない。



母親とうまくいかないさやかは、女子同士群れるのも嫌いで、そんな自分は、もっと嫌いだった。


うわべだけでも、楽しく、笑っていたかった。


同じクラスのクラス委員をしていたトモコは、文化祭が近くなった初夏、さやかに話しかけてきた。


最初は、文化祭の事だと思ってたさやかは、特にトモコを警戒していない。


「佐藤さんのお母さん、不倫したの?」

もともと無表情に近いトモコに、初めて聞かれ、さやかは、教室の席で凍りついた。


何とか、うなずく。


「なんだ、クラスの子が佐藤さんのお母さんの悪口言うから、嘘だったら言い返そうと思ってた。本当なら、それでいい。佐藤さんは、佐藤さんなんだから」


トモコは、それだけ言うと、にかっとさやかに笑い、文化祭の話をしだした。


トモコは、さやかの母親の話しもしなければ、他の女子のようにさやかを変な目でも見なかった。


それが、とても居心地が良かった。


後に、トモコが実は性同一性障害で、さやかの事が好きで、石田と結婚する時、バリキャリのトモコは、口をとがらせた。


「絶対、私の方が石田君より収入良いし、さやかを幸せに出来るのになあ、まあ、仕方ないか」

と、トモコは笑う。


すでに、トモコには大学生からパートナーがいたが、さやかを好きでいながらも、友人としても、ずっと傍にいて、兄ミタカを好きだという事すら秘密にしていてくれた。


「さやかにフラれたわ」

と笑ったトモコだったが、大学から付き合いだしたトモコのパートナーをトモコが異性として、大切にしている事をさやかは、知っている。



「私の事は、もう好きじゃないくせにい!」

さやかは、茶化して言うとトモコは照れ笑いした。

「バレたか!」


高校生からずっとトモコとは、不思議な友人関係だ。


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