オレは頭がお●しい女性科学者の種オス1号〔読みきり・一話完結〕

 目蓋まぶたに感じるライトの眩しさに、オレは目蓋をピクピクさせてから両目を薄っすら開けた。

「うぅ~ん、ここは?」

 白いシーツが敷かれたベットの上に、オレは仰向けで寝かされていた。

 オレの顔を覗き込んでいる女の顔があった。

 女医のような格好をした女が言った。

「起きた♪ 起きた♪」


 女は嬉しそうに、オレの瞳孔をペンライトの光りで照らしたり。

 非接触型の体温計を、耳の穴に近づけて体温を測ったり。

 口の中を覗き込んだり、聴診器をオレの胸元に接触させたりした。

 聴診器の丸い部分を接触させる時、女がシーツを少しめくったので、オレは自分がスッ裸で寝かされているコトに気づく。


 オレの胸から聴診器を離して女が言った。

「どこも異常はないわね……成功、成功」

「? あなた、いったい誰なんだ? オレはどうして、ベットに裸で寝かされていて?」

 上体を起こして、掛けられていた白いシーツを外そうとしたオレを、女は慌てて止める。

「腰のシーツは外しちゃダメ! カクヨムの投稿管理担当から、R18並みの過激な性描写があるからって【警告メール】来るから!」

「あんたいったい、何言っているんだ?」 


 股間をシーツで隠して、ベットに座っているオレに女が質問してきた。

「1+1はいくつになるかわかる? 電車とかの乗り方知っている? 君の名前とか家族構成、住んでいた場所は?」

「バカにしているのか、 1+1は2、電車の乗り方くらいわかる。オレの名前と家族構成は……あっ、アレ?」

 社会生活に関するコトは普通に知っているのに。自分に関する事柄の一切の記憶が消えていた。

(オレ、誰だ? 家族は? どこに住んでいた?)

 オレの困惑した顔を見て、女は「うん、うん」と腕組みをして満足そうにうなづきながら言った。

「ちゃんと、社会生活を送るのに必要な知識は睡眠学習で残って、個人的な記憶は消えているね。成功……成功」

「あんた、いったいオレの体に何をした? そもそも、あんた誰なんだ?」


 女が答える。

「あたしは見ての通り、の頭が少し〔ピー〕で。マッドなサイエンティスト……結論だけ先に言うとね、君は半年前に死んでいる」

「いったい、なにを言って?」

「やっぱり、事故の時の記憶は消滅しているから、そこから説明しないとダメか……」

 オレは女の言葉を訝る。

「事故?」

「ある夜、あたしが車を運転していると。君が突然飛び出してきて、車とドーン……後から遺書が見つかったからわかったんだけれど。

君、自殺志願者だったみたいだね」

「オレが自殺志願者?」


 女の話しは続く。

「あたしも、事故直後はパニックになったんだけれど……よく見たらモロ、あたし好みのいい男じゃない、警察に連絡して救急車が来る間に……少しだけ君の細胞を採取しちゃった」

「なんでそんなコトを?」

「決まっているでしょ」


 女は手の甲でヨダレを拭く……オレの体に悪寒が走る。

「あたし、前カレと別れてから男に飢えているの……だから君の細胞をクローン培養して、恋人作っちゃった♪」

「はぁぁ!? なに言っているんだ、この女?」

「君を培養している時の写真あるけれど……見る?」


 そう言って女は、卓上に置くような小さな額縁をオレに見せた。

 額縁に入っていた写真に、オレの頬がヒクヒクと痙攣する。

 額縁中には円筒の透明プラスチックみたいな容器に詰まった液体の中に、両目を閉じて浮かぶ裸のオレと。

 容器の近くで、まぬけなアへ顔笑いでダブルなピースサインを出して、記念撮影をしている女の姿があった。

 女の片手のピースサインは、オレの股間が写らないように絶妙な位置で隠している。

「そんな、本当にクローンだったなんて」

 消沈しているオレに女が言った。

「君は半年前に死亡して葬儀も終わっている……ここを出ても行くところはどこにもないわよ……じゃあ、そういうコトで」

 女はいきなり、服を脱いで下着姿になるとオレがいるベットに、添い寝をする形で横たわる。

「恋人同士でエッチセ●クスしよう……男と女の性的な意味での子孫繁栄の儀式……子作りしよう、君の名前は今から『種オス1号』」


 オレは頭が、お●しい科学者の女に向かって怒鳴る。

「ふざけるな! 勝手にクローン作って、勝手に恋人にして、さらに子作りだぁ! オレの人権は、どこに! うッ?」

 オレは、いきなり押し寄せてきた激しい欲情に、思わず股間を押さえる。そんなオレを見て女は楽しげに言った。

「はじまった、はじまった♪ 君はね、あたしとセ●クスしないと死んじゃう症なの……他の人じゃダメ、君は一生この部屋であたしと子作りするの」

「そ、そんなコトが! 第一人間が一生子供を産み続けるなんて……」

 オレは途中まで言って気づいた。

 マッドなサイエンティストの女なら、なんらかの処置をすでに自分の体に行っていて、生涯出産も可能かも知れない。


 女が言った。

「ほら、早く『やらせてください、〔ピー〕させてください』ってお願いしないと死んじゃうよ」

「誰がそんなコトを言うか!」

 そうは言っても、オレの意識は段々と薄れてきて本当に死にそうだった。

「ほらぁ、早く君のエント●ープラグを、あたしの中にプラグイン……そして、活動限界まで腰を」

 意味不明のギャグを言う女。

 限界が近づいたオレは、青ざめた顔で女に哀願した。

「お願いします●●●〔●●●●●〕を清らかな●●●〔●●●●〕の泉の中に……うッ!」 

 突然、オレの意識がブチッとブラックアウトした。

(死!?)


 次にオレの意識がもどった時、オレは仰向けで裸のまま胸から下を、白いシーツで被った格好で寝ていた。

(死ななかったのか? オレ)

 横を見たオレは、ギョッとした。オレの横には、クローンのオレを作ったマッドな女が背中を向けて横たわっていた……オレの片手が動かした拍子に、女のヒップに触れる、女は服を着ていなかった。

(この状況って、まさか!?) 

 オレに背を向けたまま、女の笑いを含んだ声が聞こえてきた。

「ふふふ……スゴかったよ君、あたしの恋人『種オス1号』……ふふふっ」

「やっちゃったのか? オレあんたと、記憶がないまま、やっちゃったのか?」


 マッドな女はオレの質問には答えずに、ブツブツ何かを呟いている。

「警告受けそうな、危ない性的単語は〔ピー〕や●印の伏せ字で隠した、

性器の直接描写も避けた。

男女が子孫繁栄の前に行う神聖な儀式や、快楽を求めるエッチな行為シーンの過激な直接描写も、なんとか誤魔化して流した──これなら、投稿管理担当者も【警告】してはこないだろう……たぶん、ふふふっ」


「あんた、いったい何言っているんだ?」



『実験的小説』オレは頭がお●しい女性科学者の種オス1号 ~おわり~

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