黒いカルテ

山本清流

 Bさん、24歳、主婦、風邪か

 4/23より、咽喉に違和感を覚える。

        発熱なし。

        うがい薬を使用したが、違和感が夜まで続く。

        翌朝にも、咽喉の違和感があり、来院。


 4/24  喉には異状なし。

       発熱もなし。

       観察上、なにも異状は確認できない。

       当人は「いまだに違和感がある」と主張。

       「なにかが詰まっているような、息苦しさを感じる」と付言。

       そのほかの症状は主張しない。

       喉の奥は腫れていない。

       念のため、風邪の初期症状と判断し、風邪薬を投与。


 4/25  来院。

       「咽喉が苦しい」と訴える。

       診察上、なにも確認できない。

       少しだけ、取り乱した様子。平時は、穏やかな性格。

       付き添いの娘が、「咽喉になにか詰まっていないか」と聞く。

       「寝ていたBさんが咽喉を抑えながら唸っていた」と付言。

       Bさん本人に、そのときの記憶はない。

       が、「今朝から、気道が狭まっている気がする」と主張。

       「現在はどうか」と聞くと、「少し落ち着いている」と答える。

       喉の奥を確認したが、気道は正常。

       風邪薬を継続使用し、様子を見ることに。


 4/28  夜の11時ごろ。布団の上で吐血。


       翌朝、来院。

       喉の奥を見ると、切れている。

       腫れてはいない。

       発熱なし。

       すごく取り乱した様子。「これはなんの病気」と迫ってくる。

       病気というより、怪我の可能性が大。

       「咽喉を引っかいたことは?」と聞くが、思い当たらない。

       4/26より、大便していない。

       食欲はあるが、排泄欲はない。

       この2、3日で体重がおよそ2㎏増加した。

       喉の傷は病気ではないので、経過観察に。


 4/29  昼頃。自宅で吐血。

       同時に、咽喉の奥からヘビが出てくる。

       血に濡れたヘビが自宅の外へ出ていった。

       来院。

       「幻覚の症状か」と指摘すると、Bさん、画像を取り出す。

       Bさんの自宅の床を血塗れたヘビが通ったような跡の画像。

       発熱あり、37.7。

       喉を見ると、ひどく痛んでいる。

       喉の奥をなにか太いものが通過したような痕跡。

       体重が2㎏減少。

       原因不明。

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