9-22 一先ずの決着
本当にお待たせしてすみません。今年は花粉の攻撃でどうにもこうにも…
五月には復活する予定ですので、お許しください。
タイトルも頭がぼけてて思いつかなかったのでとりあえずです。
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9-22 一先ずの決着
「獄卒?」
そう、ミツヨシ君の攻撃を止めたのは俺の獄卒の一体だった。ミツヨシ君も獄卒は知っているから、すぐに俺を振り返る。
かなりムっとしている感じだったけど、俺がじっと見つめていると一歩後ろに下がった。
「素敵な雰囲気ですね。人間離れしていますよ」
「そう?」
話しかけてきたのは艶さんだ。
その間にイムヘテプはやはり逃げようとあがいたがさらにもう一体、獄卒が現れてその動きを封じた。
「何で止めたのかきいてよろしいですか?」
「…私の目的はあくまでも世界の歪みの解消で、別に正義には興味はないんですよ。
いや、これは言い過ぎか? 興味はあるよね。でも僕の正義と人の正義はちょっとずれている。
彼が歪みを抱えているのは彼自陣の行為によるものと、この世界に落ちてしまったというどうしようもない現象によるものがあります。
あなたたちもそうだったでしょ?
ただ存在するだけで世界の敵になってしまうというのはいろいろまずい。
しかも現在、根源的なゆがみを修正する手段がこの手にあるわけだからね」
彼の行いによって発生した歪みは彼に償ってもらう。
だが彼の存在に寄らない歪みは、僕らが解消する。
うん、それが正しい精霊のお仕事だ。
「というわけで」
俺はイムヘテプに近づいてその後頭部に手を当て、この世界との正しいえにしを結ぶための術式を撃ち込んだ。
打ち込んだ瞬間〝あう〟とか言って意識を失ってしまった。
「伸びちゃったよ、どうしよう?」
「本当にどうするんですか?」
艶さんが聞いてくるが本当にね。
ミツヨシ君が何もしなければ戦闘の一環として術式を撃ち込んでそのあと死刑でよかったような気がするんだけど、俺がイムヘテプを助けたような形になったからなあ。
助けた後死んで頂戴ではかっこが付かない。
艶さんがくすくす笑っている。
「えっと、じゃあ助けるんですか?」
流歌が聞いてくる。
俺は肩をすくめる。
「贖罪の機会は与えるさ、例えばこの幻術みたいなやつの話をちゃんとしてくれるとか、
あと北の天翼族との状況を詳しく教えてくれるとか…
協力的なら罪一等を減じるぐらいの効果はあるさ」
「罪一等を減じるというのはどの程度なんですか?」
嫌な人だなあ、わかってて聞いてるでしょ。
「例えば、地獄で1000年が800年になるぐらい?」
「だと思いました」
まあ、世界との不和による歪みはこれで解消とされるから、残るのは自分で作りだした歪みだけだ。
この歪みが少ないのなら本当に助けになるだろう。
地獄に落とす意味がないからね。
だがこの歪みが大きいのならちゃんと罪は償ってもらう。
世界の歪みの修復に資するという形でね。
俺は向こう側(冥界)に手が伸びるから生きていることに拘る必要がないんだよね。
でも無間獄の中の、例えばだが200年の減刑なんて、これはものすごいことなんだよ。
「あなたと敵対しなかったことがうれしいですわ。
私たちは普通に生きて、普通に死ねますから」
「まあ、この仕事が終わったらのんびりしてくださいな。普通に暮らしていれば大体問題ないですから。
それにあの世もよいところですよ。トップがのほほんとしてますし」
怒られるかな?
「うっ、ううっ」
イムホテプが目を覚ました。
ミツヨシ君は『この方がかえってよかったか』とか言って指を鳴らしている。
拷問する気満々だな。
さて、話してくれるかねえ。
◇・◇・◇・◇
やっぱり敵の幹部という感じでなかなかしぶとい。
精霊を呼び出しては使役しようとするので全く諦めていないらしい。
それどころか。
「我々はこの世界の穢れた人間どもを粛正し、我々のような虐げられるものもまっとうに暮らせる世界を作り上げるために努力を重ねてきたのだ。
それを否定することなど、神にすら出来ぬのだ!」
とか言っちゃっている感じで宣っている。
「言ってることは分からなくない」
とか勇者ちゃんたちまで言い出す始末。
「だめだよー、偉そうなこと言ったってこいつらがやってきたのは人種差別だから、いや、選民思想にすらなってないよ、自分たちが良ければあとはどうでもいいって話なんだから」
「「ああっ!」」
言われて気が付いて勇者ちゃんたちがびっくりしている。
言葉ってのは本当に使いようで、飾るとたちが悪いんだよね。
こいつらがエルフやドワーフを虐げてきたのは間違いない事実で、もし虐げられるものの立場に立っているなら彼らのことも救わないとおかしいのさ。
こいつらは自分たちが救われれば他のものはどうでもいいというかもともと眼中にないんだよね。
というより意趣返ししか考えてないのかもしれない。
そのせいで帝国が破綻するのこれも自業自得だろうけど、他を巻き込んで不幸を増殖させるから、放置もできない。
「でさ、結局協力する気はあるの? ないの?」
「ない!」
「そっか、じゃあ死んじゃっていいよ」
俺がそう言うと獄卒の一人が間髪おかずにイムヘテプの首を落とした。
「よっ、良いのかね?」
そういったのは伯爵だ。
殺してしまったら情報もとれない。と思ったんだろう。
でもね…
「いいのいいの、生きてる人間だとこちらの権限が届かない部分があるけど、死んで死者になってしまえばそれは俺たちの管轄だからね。
罪を計る為にも彼らの罪は詳らかになるし、そこから類推すれば結構多くの事が分かるものだから」
本当はメイヤ様なら全部わかるんだろうけど、そこまで甘やかしてはくれないからね。
どうしても無理ならなにがしかの指示があると思うけど、そうでない限り、情報は制限されてます。
たぶん俺の修業とかそういうのを考えてるんだろうなあ…
最近気が付いたんだけどね…
まあ、帝国の動き的な情報はテレーザ嬢が話してくれそうだよ、完全におびえてるし。
じゃあと思ったら遠くからざわめきが聞こえてきた。
何かずいぶん慌てているみたいな声が響いてくる。
「テレーザ殿、申し訳ないけど、同行してくれるかな?
高橋君や水無月君がどこにいるのかとかそこら辺の話を聞きたいんだ」
「はい、わかりました…」
「うんうん、心配しなくてもいいよ、君は別に死ななきゃいけないほど歪みを抱えてないから。敵対関係でなければ争う必要もないし」
「あ…あなたはいったい…」
「それは内緒。自己紹介は無しでお願いします。
僕をどう解釈するかは君たちの自由だよ」
俺がそう言うとテレーザ嬢は眉をひそめた。
それと同時にパタパタと走り寄ってくる足音が。
「やや、こんなところに人が、伯爵ではないですか、いつ領地から?」
「いや、そもそも伯爵は外で帝国軍とにらみ合って…」
「馬鹿、そんなのはどうでもいいだろう。
伯爵、大変なのだ、いきなり帝国城がこう、なんというか廃墟じみた様相に代わってしまったのだ、まるで激しい戦闘の後のような…いや、戦場跡というか…
こう、ところどころ壊れて、みすぼらしくて…」
「それに陛下の居所もわからないのだよ。いったいどうしたらいいのか…」
ふーん、あのまやかしはお城全体に及んでいたのか…
大したもんだな…
というかすごく厄介そうだ。
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