6-17 暗殺者をいぢめてみる

6-17 暗殺者をいぢめてみる



 かくして勇者二人は冒険者ギルトのアイドルになった。


 当然のように女性冒険者にお持ち帰りされている。

 もうね、男はダメよ。酔っぱらって気持ちよくなっている所にオッパイとかおしりとかが攻めて来るともう歯止めが利かないの。


 しかも女性というのはたくましいもので、肉食系の女性がいかにもな格好をしていたりはしないのだ。

 楚々とした女性がそうだったりするのは実話。


 勇者におしりをなでられながら恥ずかしそうに『おやめください』とか言いながらおしりをなでやすそうな位置に持っていったり、さりげなくお胸様を押し付けたりするの。


 そして下半身に血が集まった男というのは逆に脳の血が足りなくなって馬鹿になる。


 本人は女の子を食いまくってやるぜー! とか、いい気になっているんだけど、食われているのは実は男の方というのはよくある話だね。

 一応ご冥福は祈っておこう。


 まあ帝国がどう出るかというのはあるが、女の子たちが損をすることはないだろう。うん。


 ◆・◆・◆


 翌日は学園に出向いてみる。


 勇者たちが女の子たちにさらわれて行方不明になってしまったので、その後の動向を一応確認するためだ。


「ディアさん、どうしたんですか?」


 しかし出てきたのは女勇者の二人だった。


「やあ、流歌ちゃん翔子ちゃん。今日は水無月君と高橋君を訪ねてきたんだ。

 昨日飲み会だったんだけど、かなり酔っぱらっていたからどうしたかなと思ってね」


「ああ、飲み会だったんですか。それで」

「二人なら昨日は帰ってませんよ。朝帰りです。不潔です」


「それどころかフリートヘルム君も帰ってないんですよ」


 ありゃ? あいつまで食われてしまったのか?

 まずくね? 帝国貴族だからな、一応。ご落胤問題とか起こると面倒なんだけど…一応ばあちゃんに報告しておくか。


「というわけで、何かご存じありませんか?」


 二人の後ろから声をかけてきたのはメイドさんだった。

 あったことないけどあったことある人だ。


 紫色のショートカットのなかなかかわいい子だ。オッパイが大きい。そしてちょっと歩き方がおかしい。


「えっと、あなたは?」


「申し遅れました、わたくしはメヒテュルトお嬢様の侍女をしておりますルーミエと申します。

 テレーザ様がお留守の間勇者様方のお世話はうちのメヒテュルトお嬢様の担当になりますので、勇者様方の行方が分からないのはちょっと困るのでございます」


「あー、なるほど。正確な場所は分かりかねますが、大体の状況は分かりますよ」


「それならぜひ」


 ルーミエ嬢は勢い込むが高校生二人の前で勇者は性的な勇者をやってます見たいなはなしはできない。

 ちらりとそちらを気にするそぶりを見せると…


「申し訳ありませんが、こちらで詳しく…」


 などといってくれる。よい気づかいだ。


 俺たちが二人で離れると流歌たちは『後の講義に顔を出します』みたいなことを言って離れていく。彼女たちも忙しいようだ。


「この学園は帝国とはまた違った魔法理論とかあって面白いとお嬢様もおっしゃって…何をしてらっしゃるんですか?」


「おっぱいを揉んでます」


 歩きながら周囲の人間の死角に入るなり、俺はルーミエ嬢のおっぱいをやわやわと揉んでみる。大きくていい手応えだな。

 

「あの…」


 声に怒気が混じるけど気にしない。

 ついでにおしりもなでる。特に一か所を指先で抉るように。


「くっ!」


「あっ、痛かった? ごめんね。ちょっと心配だったから」


「心配?」


 おっ、にらんでる。でもしれっと続ける。


「いや、女の子のおしりにもう一個余計に穴をあけるとかかわいそうなことしたなって思って」


 そしたらルーミエ嬢はびっくり目で俺を見た。

 そう、この娘は先日迷宮の中で襲ってきた刺客の女の子の方だ。


「それにオッパイも思いっきり殴っちゃったから、大丈夫? 痛いでしょ?」


 そう言いながらおっぱいにぎゅっと力をかける。

 ルーミエ嬢の体にぎゅっと力が入った。結構きつい打撲傷だから痛いよね。

 歩き方が変なのはたぶん…


「あのおしりを撃ったやつ。金属製の飛礫を高速射出するもので、結構深く食い込むよ。ちゃんと摘出した?

 鉛ほどじゃないけどいずれ体の中で腐って毒になるから、ちゃんと切開して弾を取らないと…ひょっとしたら死んじゃうかもよ?」


「あの…あれって…銃とかいうやつですか…あの…」


「そうか、銃は知ってるんだ。まあ、今までも結構勇者ってきているし、当然か。まあ、あれは間違いなく銃だよ。もっとも作られたのは古代王国期のやつだから、鉛だろうがミスリルだろうが魔法だろうが撃てるやつなんだけどね。

 ポーションとか使ったんだ?

 余計なことしちゃったね。傷があるうちなら抉り出せば済んだけど、傷が治った後だとおしりを切り裂いて弾を探してとらないといけないから…結構大変だよ?」


「そんな…」


 ルーミエ嬢はぺたんと座ってしまった。

 銃というのは知っていても銃創の治し方とかは知らなかったんだろうね。

 ポーションで傷が治ればそれでいいと思っていたのかもしれない。


「もしその気があるなら直してあげるよ。もちろん条件付きだけど」


「わ…私の体ですか?」


「いやいや、そんなわけないでしょ。君の場合情報でしょ? 俺の場合、女に手を出すといろいろ面倒なんだよ」


 嫁を増やそうとするやつがそばにいるから。


「まあ、すぐにどうこうなったりはしないよ。検討してみて。君も組織人のようだし、組織のためなら命も捨てる。というのなら無理にとは言わないから。でも話してくれるならそれなりに優遇します」


 さて、今日はここまでだ。

 昨日の刺客が見つかるとは思わなかった。しかも帝国のそれなりの人だ。よい話ができた。


 他のメンバーにしても会えばわかるんだけどね、魔力の波長とか身体的な特徴とかで、構成員が分かればいずれ組織も…とは思うけど、ハードとかソフトとか、情報があると助かるのだ。


 俺はうつむいて青ざめている彼女を立たせ、とりあえずオッパイにヒールをかけてあげる。

 打ち身ってなかなか治らないからね。俺ならばっちり。


 そのあと勇者とフリートヘルム君が飲み会の後に女の子をどこかにお持ち帰りしてよろしくやっていたであろうことも教えておいた。

 事実と逆だけどいいのだ。


 ◆・◆・◆


 学園での用事が終わって帰宅して、あとは頼まれた武器の練成だ。


 刀身自体は問題なく練成できる。

 問題があるのは鞘や柄だ。

 せっかく日本刀の形なので日本刀に近いこしらえにしたい。

 だが惜しむらくは柄の糸巻きが分からないという点にある。


「となると方法は…革巻きか?」


 それもどうなんだろ。刀としてダメな気がする。

 いっそのこと木で作っちゃうか?

 白木の刀とかならありだろ。


 デザインとしてはあれだ。

 よくステンレスやアルミの懐中電灯に見るような金属の肌に細かい溝を彫りこんで滑り止めにするような構造。

 血油で滑るのが心配だからここは『精霊樹』を使おう。

 昔、華芽姫が憑りついてた神木から削り出せばいいだろう。


 血や油もすっと染み込み消えるからなかなかないいものになると思う。

 最初白木の柄で戦闘を繰り返していくと赤く染まる。


 うん、なんかかっこいいな。

 よしこれで行こう。


 鞘も同じ素材で作っちゃおう。


 本当はこんな作り方はしないんだけど鞘の形に切り出した木に慎重に刀身を収める穴を掘っていく。

 少しずつ分解していくのだ。

 ここで注意するべき点がある。


 実は日本刀って鞘の中で浮いてるんだよね。鞘に触れているのは峰と呼ばれる後ろ側と刀身の手元にはめるハバキと呼ばれる金属部品のみ。


 刃、切っ先はもちろん刀身の横側シノギと呼ばれる部分も宙に浮いているのだ。

 日本刀というのはここまで芸術なんだよ。


 いやー、しかし日本刀風に作っては見ても日本刀づくりの要素がどこにもないよね。


 そんなわけで流歌と翔子ちゃんの『日本刀もどき』が完成したのだ。

 喜んでくれるといいけど。


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