6-02 式典
6-02 式典
今日はお祭り騒ぎだった。
「すごい人出だね」
「本当ですね」
ルトナが右側から抱き着いている。腕に形のいいおっぱいがぐりぐりと。
そしてなぜかクレオが左手に抱き着いている。
まあおっぱいがやんわりと手に当たる。
ルトナはいつものこととしてクレオはなぜ?
「そろそろ機が熟してきているということよ。触れなば落ちんという雰囲気ね」
にししとわざといやらしく笑うルトナ。クレオはそれを見て顔を赤くして目をそらした。
『確かにそういう感じではありますな。発情しているのは間違いないであります。そういうにおいがしますし、体の中心部の温度が高くなっているであります。それに水の気配も十分でありますぞ』
モース君がいらんことを教えてくれる。
まあ発情期…じゃなかった。思春期の女の子だ、そういう気分の時もあるだろう。
「私知ってるんだ。クレオちゃんたらディアちゃんからもらった刀の鞘に股間をぐりぐり擦りつけてえ~」
「キャーキャーキャー!」
クレオ嬢必死。まあそんなこと言われたらね。
ただ刀? クレオの場合は俺じゃなくて刀に興奮している可能性も…まあそんなこと言わないけどね。デリカシーの問題として。
『クレオどの。マスターに欲情しているのでありますか? それとも刀に欲情しているのでありますか?』
おおう、精霊はデリカシーがない。
「刀に欲情なんかしません。あれは触れるとぞくぞくする感じがいいんです。でもあんなの挿れたら死んじゃいます。ああ、でも…」
想像したね。変態だね。知ってた。
「にゅっふっふー」
しかもルトナが悪だくみしている…絶対ろくでもないこと考えてる。
「おっとごめんよ」
人込みで押されてきた男とぶつかった。
その男が引っ込めようとする手をつかんでひねり上げる。ついでに…
「何しやがる!」
わめき散らす男の手をさらにねじり上げる。関節をねじ切るように。ついでに魔法を発動して口の周りの空気の振動を停止する。
「あーっ、すりか…」
そう男の手には俺の財布が握られていた。
まあ本物のお金は左腕の収納にしまってあるから見せ財布なんだけど、ズボンの後ろぼっけに革製の長財布。
実によく引っかかるのだ。この手の小物が。
だがこれはちょっと臭いな。
ちょっと力を強く入れて、腕がメキッと…
男が痛みに耐えかねて財布を落とすと同時に手を開放してやる。
腕を抱え込み、無言で走り去る男。
「よかったの?」
「いいよ、腕を軽く破壊しておいたからしばらくスリは無理だろう。
後で処理しておくから」
「ふーん、処理ね」
お祭りの中で狩りをするわけにもいかない。
夜にでも出向けばいいのさ。
「さて、もう見えてくるかな?」
「この人込みだといまいち見えない…でもないか」
「まあ、目標がでかいからね」
角を曲がると大きな広場が見えてきて、そこに巨大な建造物が…
「ねえねえ、これが蒸気機関車っていうやつ? すごいねえ」
「うん、これじゃない感がすごいよ」
◆・◆・◆
それは高さが一〇mもある巨大な機械だ。形は横長で蒸気機関車に似てはいる。
長さは三〇m以上。甲板があって煙突があって、大砲などが据え付けられている。
そして後方には船尾楼型のキャビン。
胴体の横から『シュー…』とゆっくりと蒸気が噴き出している。
間違いなく蒸気で動く機械だ。
そして胴体の下には数十本に及ぶ巨大なタイヤの列。
蒸気機関で走る車だから蒸気機関車で間違いはない。間違いはないのだが…
「これは陸上戦艦だろう」
「んにゃ?」
「ああ、いや、こっちの話。気にしないで」
集めた情報によるとこの陸上戦艦を作ったのはシダさんだ。『エルシダニア・グラムニアルゼス』さん。
昔ここに来た時に自分の工房を爆破しまくっていたドワーフのおっさんだ。
まあ、正確な名前は忘れてたんだけどね。
シドならぬシダさんとあと江戸さんは覚えていた。いや、エドさんだな。
あれから数年かけて蒸気機関を完成させ、さらにそれを使って動く車両を完成させて見せた偉人。
現在王国中で話題になっている時の人だ。まるで英雄のような扱いらしい。
レールではなくタイヤで地上を疾走するこの巨大な戦艦は、王都とこのアウシールを南回りの平原地帯を大回りする形で疾走する。
かなりの遠回りだが時速六〇キロで走り続けられる機動力はその距離を無意味にする。
魔法と魔石で湧き出す水を、これまた魔石と魔法で沸騰させ際限なく走り続けることができるのだそうだ。
南側に建設中の大きな町、二か所を経由して王都まで実に五日で到達する。
しかも艦内には大量の物資と人員が。
流通と交通の大革命であった。
今日はそのお披露目の式典があって、ついでにお祭りになるのだ。
まあ、実は試運転でかなり走りこんではいるらしいので安全性は実証済み。
すごいなードワーフ。
パン! パパン!
花火というか煙玉が打ち上げられる。
ついでぱぱらぱーっとラッパの音。トロンボーンみたいな管楽器三種類ほどで盛大なファンファーレ。
戦艦(戦艦でいいよね)脇に作られたお立ち台の上に主催者が登場する。
キハール伯爵がこの迷宮都市の太守として主催者である。
その両脇にマルディオン王太子。そしてサリア王女。
この国では王族は尊重されるが学生はやはり半人前扱いだ。ここの太守ということもあり、マチルダさんの方が立場が上になる。
その後方に見事な鎧と兜のキハール親衛隊。つまり女性騎士隊が整列し、見た目が優美なのでなかなかに見ごたえがある。
この後シダさんが壇上に上がり、勲章とご褒美を授与される授与式があるのだが、このご褒美が結構もめたらしい。
王国としてはシダさんに爵位を与え、王国の貴族として長く力をふるってほしいと思っているらしいのだが、ドワーフの性質ゆえかシダさんはそれを固辞。
話し合いの結果立派な工房と大量のお酒を与えるということに落ち着いたらしい。
ちなみに勲章は俺たちがもらったものと同じで、シダさんも一応三位爵になるようだ。
そんなもん酒のつまみにもならん。とのたまったとか。
ただもらえるお金など興味がないらしい。
「サリアもこっちに来ればよかったのに」
「いやいや、無理だから」
王女がこの手の式典をぶっちぎるとかまず無理だから。
「でも、あーん! とか泣いてたよ」
そうだねサリアも
「この後これって王都まで行くんでしょ?」
「ああ、向こうに行って向こうで今度はクラリス様がメインの式典があるんだそうだよ」
「サリアも行くの?」
「いや、サリアはお留守番。学生だしね。行くのはマチルダさんと王子だけだ」
王太子となるとこういう行事から抜けることはかなわない。
王族の責任というやつを示さないといけないのだ。そうしないと国民が付いてこない。
日本の民主主義の政治家ほどではないと思うが支持がなければ国はうまく動かないのだ。
キハール伯爵も同様。大人になると責任から逃げるというのは難しくなる。逃げてばかりいると生きていくのが難しくなる。
だがそういうのを割と無視する自由人もいたりはする。
「おーっ、やったじゃん。鬼のいぬ間だね。
サリアも自由が利くわけだ。
チャンスだね」
「何のだね?」
「もちろんオマ〇コの」
肩の力ががっくりと抜ける気がした。
「この際だから、サリアとクレオとシスターちゃんもハーレムに加えようよ。大丈夫だよ、みんなディアちゃんのこと好きだから、押し倒せば素直にオマ〇コさせてくれるよ」
「ルトナ、お願いだからもう少し言い方をソフトに」
周りの人たちもぎょっとしたり、苦笑したりしている。
苦笑しているのが多いのは男と女の会話なんてこんなものだからだ。
女子高のノリではないが男と女もこなれてくるとあけすけになる。特に若いうちのコツをつかんだころとかね。
ただもうちょっとTPОは考えてほしい。
「はいはい。わかっているわ。男の子はロマンチストだものね」
ロマンチストかどうかはともかく男の方が
しょせん男は坊やなのさ。
「あっ、一位爵様」
「あっ、勇者のみんなだ」
ふうむ、ここで帝国の勇者登場か。
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