3-21 リザルト回がやってきた。

3-21 リザルト回がやってきた。



 八階に行ってお宝を漁って帰ってきました。

 リザルト回あっという間に終了。


 一応経過を説明すると、この迷宮の元であったショッピングモールは色々な種類の商店とそれに付随する従業員の住居が中心になって出来ていたらしい。

 これだけ巨大な施設になると働く者の数も半端ではない様で、このモール自体が街、あるいは観光地のような構造をしていたようだ。


 驚いたことに六階層には温泉施設と宿泊施設まであった。湯本である。


 だがそこはスルー。興味は尽きなかったが時間がない。俺が向ったのは八階層。ショッピングモールではなくそのための倉庫兼舞台裏にあたる階層。


 七階層は高級品の展示場で、そのための奈落みたいな場所が八階層にあった。

 ここにある物品は高級品のためか保護のための魔法がかけられていたようで俺が入ったエレベーターに一番近い部屋のアイテムはほとんど無傷で残っていた。部屋ごとシールドされていたらしい。

 部屋全体がエレベーターになっていて、このまませりあがって上の階で展示台となる構造だった。


 そこにあったのは高級(かどうかは分からない)キャンピングカーと、その周辺アイテム。

 平たく言うと自動車だ。

 モース君の話だと『輸送型ゴレム』というらしい。

 その輸送ゴレムとテーブルや食器、小物などの〝車でちょっと旅をして旅先で快適なキャンプを〟そんなコンセプトの一揃えだった。

 まるで誰かがキャンプでもしているかのようにディスプレイされている。


 まず輸送ゴレム。

 ゴレムの後ろにつなぐコンテナ。

 イスとテーブル。

 食器(ものすごくセンスがいい10人分一揃え)

 調理器具(説明によるとオリハルコンのフライパンとかミスリルの寸動鍋とか)

 いくらでも水の湧いてくるジャグ(原理不明)

 魔力で動くコンロ。

 電子レンジのようにも使えるオーブン。

 斧やナイフ、薪、などのあれやこれや。

 あと演出の小物だろうかバックやタブレットのような物がいくつか。


 輸送ゴレムの後ろには異空間収納機能が付いていて、それらはみんなここに収納できるようになっている。そして移動の際の居住性はとても高そうだ。

 コンテナはシンプルでトレーラーの後ろにくっつけるようなもので、大きさはミニバンみたいな大きさだ。これは居住スペースに特化したものらしかった。


 入り口は左前側と後ろについていて、こちらは空間拡張型で内部が広くなっている。

 ちょっと覗いたのだが前から入るとまずたたきのような空間があって、その奥に家のような快適な居住空間が広がっている。


 後ろのハッチから入るとそこは一〇〇m四方、高さ一〇mほどのもある倉庫になっていて、なるほどこれで旅をすれば生活に困ることはないのだろうなと思わせる逸品だった。


 この調子だと他にもいろいろあるような気がしたのだが調べているうちに魔物の声などが聞こえて来るに至って撤退を余儀なくされた。

 まあこれだけでも手にはいれば御の字というか大儲けだ。

 あとは大人になってここまで来れるような実力が身についたらあらためて来ようと思う。


 ◆・◆・◆


 ここからは後日談。


 迷宮の外に出たらすっかり夜になっていた。


「やばいー!」


 とか思っても後の祭り。

 ソウルイーターとの戦いはかなりの長時間に及んだようだ。極限まで集中していたせいだろう時間感覚がくるっていたらしい。

 でもたいして怒られはしなかった。

 なぜなら。


『くぉらエド! いくら時間に追われていたからって子供一人荒野のど真ん中に置き去りたあ、どういう了見だ!!』


 という事態が発生していたからだ。


 日が大分傾いてから俺を置き去りにしたことを聞いたシダさんはギルドにそのことを報告したらしい。さすがにその程度の分別はあるようだ。

 それを受けてマルレーネさんがエルメアさんたちを連れて捜索を始め、俺が迷宮から出てきたところでフェルトが俺を発見。無事保護されたということになった。


 俺はエドさんに置き去りにされて帰るに帰れなかった子供という不名誉な認識を持たれることになったが、まあそれは甘んじて受け入れよう。そうしないと多分エルメアさんの尻たたきとか食らうことになりそうだから。

 うん、エドさんには悪いがそう言うことにしておこう。

 まあ彼が俺のことを忘れて置き去りにしたのは事実だしね。


 しかしこれで遅まきながら迷宮の裏口が見つかったわけだ。ギルドの人たちは一様に安堵の息をついた。

 すでにかなりの犠牲者が出てしまったことは…説明のしようがないからそのままスルーする。


 そして翌々日。万難を排してアンデット掃討作戦が実行された。


 この町に住む魔法の武器を持った者。

 攻撃に魔力を乗せられる者。

 浄化魔法が使える神官や魔法使い。

 などなどを中心に、領主軍の精鋭、そして凄腕の冒険者などが必勝の覚悟で迷宮に挑んだ。


 そこで見たものは…魔物少な目のほのぼのとした迷宮だった。


 まあ迷宮にほのぼのというのも変なのだが、この戦闘の結果一階層、二階層でアンデット化の現象は確認されなかった。


 同行した神官の中に『この迷宮から生者をアンデット化する穢れた力がなくなっている』と宣った神官がいたために三階層の確認もされた。

 三階層はその神官の言う通り呪いから解放されていた。

 今までの情報から三階層は『常に暗い陰鬱な森』の階層だったことが知られていたが、現在は陰鬱さはすっかりなくなり、月と星が輝く『夜の森』の階層になっていたらしい。


「そんな事ってあるんだ?」


《迷宮の核が変わった所為でありましょうな。今まではソウルイーターが核の位置に居座っていたために呪われた迷宮であったわけですが、それがいなくなったので普通の迷宮になったと考えるべきでありましょう。

 それに階層というのはその場所にある主要な因子によってその姿が決まるものですから、ここはもともとが夜の森階層であったのですよ。

 それがソウルイーターの影響で歪んでいたと…》


 なるほどそういうものなのか…


 シャイガさんがあとで教えてくれたのだが四階層はトンネル迷路型の階層になっていたらしい。

 幅数メートルから十数メートルの煉瓦造りのトンネルが縦横に走り、入り組み、階層自体が迷路になっていて、その奥からアンデットが湧いてくる。

 そう言う階層だったそうだ。

 つまりここも随分と様変わりしたのだろう。


《この階層の主要な要素が冥力石に変わった所為でありましょう。冥府には咎人を逃がさないための果てなき迷宮があるというであります。その要素が形になったものではないでありましょうか?》


 しかしアンデットは出て来るのか…


《迷宮というのは死がつきものでありますからな、死体は、その欠片は際限なくあるものであります。それが魔力と結びつけばアンデットは際限なく湧いてくるでありますよ。そして迷宮というのは死にきれないろくでなしにとっていい場所で良く集まってくるのであります。ですのでたいていの迷宮は必ずアンデット階層というのがあるものでありますよ》


 つまりそれもこの迷宮が正常に戻った証明ということだ。

 しかも。


《この迷宮には冥力石が安置されているでありますからアンデットが倒されれば浄化されるであります。迷魂ろくでなしもここで倒されればよりどころを失って地獄に強制送還されるでありますからここの階層は我らにとって都合がいいアンデット階層であります》


 つまり邪悪な存在ものホイホイというわけだ。


 だがこれで一つ肩の荷が下りた。

 迷宮の魔物も無事にと言うのも変な言い方だが復活しているから冒険者の活動に支障はないだろう。いや、下手なアンデット化が起きない分冒険者の実入りは良くなるはず。

 そしてアンデット駆除型修業も四階層で今までと変わりなく行える。

 つまりこの町は大丈夫ということだ。

 さすがに必要な事とは言え自分のやったことで町がすたれたりするといやだったりするからね。


 しかも世界の邪壊思念を減らすことができる。

 Win&Win&Winの関係だ。

 めでたしめでたし。


 その夜俺は再びメイヤ様にあって『えらい、よくやった』とお褒めの言葉を頂いた。


 ◆・◆・◆


 それから数日、糸を優先的にまわしてもらって俺たちはこの町を旅立った。

 今度の目的地は王都である。

 貴族のお嬢様(?)方がシャイガさんのブラジャーをお待ちなのだ。


「さあ、出発だ」

「はーい」

「ハーイ」

「はい」

「はいなのー」

「ぴっぴー」

「・・・・・・」←ロム君

『ぱお(まいりましょう)』←モース君。普段はおれの中にあるフラグメントに隠れている。


 ずいぶんとメンバーが増えたものだ。

 ここからは国の中の街道を安心して…


「いや、そう言うわけにもいかない」

「え?」

「このアリオンゼールは自然の豊かな国でね、平たんな道って少ないんだよね」

「え? え?」


 つまりどこに行くにしても山超え谷超えなんだってさ。

 この国は国土は広いけど人間が活用できる土地は少なめなんだって、まるで日本みたいだな。


「きっと山賊とかでるね」


 ルトナそれはフラグだからやめて。

 俺はこれからの旅が少しでも穏やかな旅になるようにとりあえず祈っておいた。


 パ~オ。《多分かなわないと思いますぞ》


 だからやめてってば。

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