2-08 エルフってこんな人たち。とても友好的でした。
2-08 エルフってこんな人たち。とても友好的でした。
まず身長は六〇cmぐらいだろう。
そして頭身はたぶん二、五頭身ぐらい。
ねん○ろい○かチビキャラかという頭身だ。
ただものすごくかわいくはある。
黄金の髪に木の葉の髪飾り…と思ったのは髪の一部が葉のようになっているものらしい。
尖った耳が特徴なのは変わらない。これはエルフっぽい。
そして人形のように整った顔立ち。
そうだね、ものすごくきれいなエルフキャラをスーパーデフォルメ人形にしたような感じと言うと分かるだろうか。
驚異のリアルSDキャラ。
むっちゃ可愛い。
俺は元オタクだからこういうのは全然オッケーだ。
短時間なら美女に変身できるらしいが、これは別になくてもいい属性だ。それぐらい可愛い。
俺とは違う意味でルトナもびっくりしているようだったがシャイガさんたちは平気のようだ。たぶん以前見たことがあるのだろうな。フフルは当然知り合いもいるに違いない。
そのSDキャラがトコトコと進んで来て話しかけてくる。
「ここにフロインの聖号を持つ者が訪れるのはいつ以来かの。ここしばらく絶えてなかったことじゃな。
おお、驚いておるな。なぜわかったかと顔にかいてあるぞ」
いや別の意味で驚いてたんだけどね。
「聖号を持った者というのはワシらはテリトリーに入ると分かるんじゃよ。この森の中でほんわりした光が見えるんじゃ。まるで蛍が歩いてくるようにの。
なのでおぬしらが迷宮に入った時から実はわかっておったのさ。
さて、こっちじゃ。歓迎するのじゃ」
そう言うとエスティアーゼさんはおれたちを先導するようにすたすたと歩きだした。
それに合わせて彼女と同じ様なSDキャラが空を飛んできて、上からはらはらと花びらを散らしてくれる。『ようこそ、友よ~』『歓迎するのだ~』『久しぶりですの~』なんて声も降ってくる。
なかなか幻想的な光景だった。
「エルフって飛べるんだね、いいなあ」
ついそんなことを呟いてしまった。だって空を飛ぶっていうのは憧れるものがあるよ。特に自力で飛べたらどんなにいいか…
「ああ、あれはエルフだからと言うわけではないのじゃ、あれは飛行魔法を使っておるだけじゃよ」
「え? あれ魔法なの?」
「そうじゃ、ケットシーといるぐらいじゃから固有スキルじゃと思ったんじゃろ?
エルフの
マジが!
だったら俺にも使えるかも。
「なんじゃ興味があるのか? じゃったらあとで魔法の原典を見せてやろう。じゃがとりあえず今日はここまでじゃな。今日はもう暗くなる。
ゆっくり休んで明日話を聞こう。
なに、心配するな、ワシらは妖精の友の願いをむげにはせんのじゃ。これは妖精族四族の共通のルールじゃからの」
彼女は俺達を一件の建物の前に案内するとそう言って帰って行った。
すでに外は夕暮れ。
そこを飛び交うSDキャラ達。
すでに木々の輪郭はあやふやだが灯った提灯のような明かりの中それは美しい光景だった。
「綺麗だね」
そう言ったのはエルメアさんだったかルトナだったか…
俺達はしばしその光景に見入っていた。
◆・◆・◆
翌日はふわふわの心地よさで目を覚ます。
エルフの用意してくれた家はこじんまりしていて人間サイズだとちょっと窮屈だったが調度品は木製の見事なもので、布団は極めてふわふわで心地よいものだった。
タオルとはまた違うのだが、厚みのある柔らかい布があって、くるまって寝ると物凄く気持ちよかったのだ。
この布吸水性も良く、体を拭くにもちょうどよかった。
大小さまざまな大きさがあり、この生地は地球でいう所のパイルのような使い方をされているようだ。
「父さん、これもぜひ買っていきましょう」
「うん、そうね、これは良いものよね」
いろいろとほしいものが増えていく。
そんな話をしているうちにエルフが一人訪れて、エスティアーゼさんが『朝食をご一緒に』と言っていると伝えてくれた。
勿論否やなどありはしないのだ。
◆・◆・◆
「ふむ、つまりその〝ぶらじゃ〟とかいうのを作るのにワシらの織る生地がほしいと」
「はい、高貴な身分の方たちなので、クラリオーサ様に収めたものがそれでしたので、まさか差別もできませんで」
まあそう言うことだね。
ブラ自体は他の生地だってできる。
それどころかシャイガさんは織物までこなすのだ。
だが最初に作ったブラが気合入りすぎで最高級の生地を使ってしまったために、そしてものすごい値段で売れてしまったために、同じものがほしいという貴族のご婦人方に対してまさか低品質のものを納めるわけにはいかなくなってしまった。
面倒臭い話である。
ただ庶民向けにもっと低品質の物は考えている。
「ああ、アリオンゼールのクラリオーサか…うむ、覚えておるよ。以前一度会うたことがある。しかしあやつはおぬしらの娘よりもチビだったと思うたが…乳を納める服なんぞ要るのか?」
・・・・・・・・
「それ、何年前ですか?」
「確か二十…おおっ、そうか、あのチビ助も成長したということじゃな、いやー、ワシの生きてきた時間からすればほんの少しじゃからな、忘れておったよ。そうかそうか、あのチビがのう」
エスティアーゼさんはしみじみと頷く。わりとよい思い出のようだ。
しかし子供というのはおそれを知らないモノである。
「エスティアーゼさんって年いくつなんですか?」
ルトナから出た質問に俺は凍り付いた。これはご婦人にしてはいけない質問のはず…なんだがエルフって気にしないのかな?
「ワシか? ワシは今年で三六〇歳位になる」
と、あっさり暴露した。しかしぐらいってなんだぐらいって、しかも三六〇だと?
「妖精族の寿命はみんな五〇〇年位なの」
「うむ、そうじゃな、ワシはエルフとしては〝熟女〟じゃ」
六〇cm。二、五頭身の熟女って…このぬいぐるみのようなかわいらしさで熟女って…
なにか物凄く納得のいかないモノを見た気がする。
「まあそれはさておき、現在用意できるのは絹が一〇反、縮が八反という所じゃな。必要なだけ譲ってやりたいが今はそれだけしかないのじゃ。代金は一反金貨一枚でいいのじゃ」
まあいきなりの話だからね、無い袖は振りようがない。
「いえ、それだけでもありがたいことです・・・」
「なんじゃ、梟がエアボール食らったような顔をして」
これはたぶんハトが豆鉄砲みたいな意味だろう。
「いえ、勿論その交渉に来たんですが、こんなに簡単に譲ってもらえるとは思っておりませんでした。しかもこんなに安く」
「なははっ、前にも言ったが『友』は歓待するもじゃよ。友の聖号を持っているということはワシら妖精族のために力を貸してくれたということじゃろ、それも尋常ではなくの、だったら友のために何かしてやるのに理由はいるまい?
金額はもともとあってなきがごとしじゃ。
ワシらには日常使うものばかりじゃし、薬草も生薬も元手などほとんどかからん。高値で卸しておるのはそうせんと利益を巡って人間どうしで争いを始めるのでな、利幅を縮めるために高額設定なんじゃよ」
これは後で聞いた話だったが昔もっと安くいろいろなものを人間に譲っていたときがあったらしい。その時期にあまりにばかばかしく儲かるエルフとの取引に人間同士で血で血を洗う争いがあったとか。
妖精狩りをしたり、人間同士で奪い合いをしたり…溜息しか出ないな。
「ほかには何かあるかの?」
「はい、昨日とめてもらった家にあったふかふかの奴がほしいです」
はい、怖いもの知らず登場。
「おお、パーイルか。あれはこの迷宮でとれる綿を柔らかく織り、それをさらに柔らかくちょっと変わったやり方で編み上げたものじゃ、かなり技術と手間がかかるんじゃよ。あれこそ貴重品じゃ。めんどくさいので基本自分たちの分しか作らんからの、じゃが大丈夫。あれは自分らで使うものじゃからストックは余分にある。少し分けてやろう」
「わーいありがとう」
エスティアーゼさんは嬉しそうにうむうむと頷いた。
見た目はSDキャラなのにこういう仕草には年長者の鷹揚さが感じられる。やはり長く生きているだけのことはあるということだろう。
「しかし、用意できぬワシらが言うのも変じゃが、これで足りるのか?」
足りないだろうね。シャイガさんの話では今回の注文だけで二〇反ぐらいずつは必要になると言っていたはずだ。
必要量の半分ぐらいしかない。
これは俺も心配していたところだ。
「大丈夫だと思います。このまま西の迷宮都市アウシールまで足を延ばすつもりです。そこでなら決して見劣りしないものが手に入ると思います」
「ふむ」
とエスティアーゼさんは考える。
「そうか、迷宮蓑蛾の幼虫じゃな。他にも大投網蜘蛛という所か、あれは確かに良い糸が取れる。この迷宮にいる天蚕にも確かにひけは取るまい。だがあれで良い生地を作れるのはかなりの腕が必要じゃぞ」
「それは大丈夫です。自分は『織姫』を持っておりますので」
「おおっ、それはすごい。その統合スキルはエルフでも数人持っているものがおるが、人間となると珍しい。確かそう言う一族がおったな、おぬしはそのものか?」
「はい、そうなります」
それなら確かに良いものが織れるだろうとエスティアーゼさんは頷いた。
「では四、五日待ってくれ、その間に頼まれたものは用意しよう。それから今日の夕食はみんなで一緒に取ろうではないか、久しぶりの客人をみんな見たがっているでな。
それまでは風呂でも入ってのんびりするがいい」
「えっ、お風呂あるの?」
「あるぞ、結構自慢の風呂じゃ」
「わー、じゃあすぐいこう」
「やたーっ」
「うむ、風呂から出たら坊主には約束の魔法書を見せてやるでな、楽しみにしておれ」
すごい、なんというかごちそう三昧だ。
ここすっごく気に入ってしまった。
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