第7話NAGAHAMA

 ***



 北陸本線、長浜駅。

 夏の終わりの午後、女に手を引かれて小さな足がホームに降り立った。


「次はバスに乗るのよ」

「バスだバスだぁ」

 女が優しく話しかけると、おさげの子供は無邪気に喜んだ。


「ほら、この浅井線ね」

 女は子供を抱くと、バス停の路線図をなぞってみせる。すると子供は、目を輝かせて指を追う。

「せんせ、バスのあとは?」

 子供は女を先生と呼び、仰ぎ見れば。

「おしまいよ」

 と、微笑む。

「新しいお家?」

「そう、新しいお家」

「もっと電車乗りたい」

「たくみちゃんが大きくなったら、たくさん乗れるわよ」

「大きくなるってどれくらい?」

「そうねぇ、先生くらいかな」

 先生はニコッと笑って。それから通りに首を向けたのを、たくみは澄んだ瞳でじっと見上げていた。

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