第129話/理想と情熱のバランス
吉田夏樹.side
事務所のディスクでコーヒーを飲みながらパソコンと対峙し頬を緩ませる。
ドラマの視聴率は高くはないけど評価が高く、更に出演者4人の評価が上々だ。
梨乃とみのりの2人が雑誌に出る事によってCLOVERの知名度も上がってきている。
まだ2人は芸歴では新人なのに勢いが凄すぎて事務所も私も驚きの連続だ。
でも、芸能界は運を掴み一気にスターダムに昇る人がいたり、下積みを何年もして売れっ子になる人がいるから人それぞれだ。
それに…
みのりが事務所に来たら話す予定だけど、映画のオファーが来ている。まだ、みのりは新人なのにオーディションを受けずオファーが来るなんて鮎川早月役の人気を物語っている。みのりの人気は鰻登りだ。
それにまさか、高橋賢人君とまた共演するなんて、みのりは高橋君の事務所から気に入られているみたいだ。
高橋君の事務所は人気アイドルグループが沢山いる事務所で相手役に厳しい事務所だ。
みのりはそんな厳しい事務所からOKが出たアイドルで女優になる。
みのりと高橋賢人君との人気少女漫画が原作の恋愛映画が正式に決まったら、映画の制作発表をしたのち、ポスター撮りをし、6月から色々と動き出す。
良い流れだ。みのりの仕事が決まり、あとは梨乃の女優としての仕事だけど…
梨乃は今も演技の仕事が好きではなくやりたがらない。それに、梨乃はみのりがいない限り演技の仕事をしたがらない。
だからこそ困っており、いい加減割り切って欲しいと思っているけど悩ましい。
アイドルの仕事は幅広く、寧ろアイドルの仕事と並行しながら女優の仕事をやりたがるのが普通だ。なのに、梨乃はステージで歌って踊るアイドルの仕事だけに拘る。
これから先、映画やドラマのオーディションを受けさせるには…また、みのりを使うしかないのだろうか。でも、そんなの無理だ。
梨乃の一途さに感嘆するけどマネージャーとしてはその一途さが悩みの種でしかない。
今日は朝からやることが多く、やっと書類整理が終わり、私は椅子に背中を思いっきり預け伸びをする。凝り固まった体をほぐしながら、今日出来上がったデビューシングルのCDを手に取った。
4人が頑張って掴んだメジャーデビュー。既に沢山の予約が入っており、このまま行くとトップ10内には余裕で入りそうだ。
音楽番組に出たら更に売れるだろう。ただ、問題はここからで、今のCLOVERはみのりと梨乃の二強だ。
みのり達と由香里・美香の人気度と知名度の差が開きすぎているのだ。これから由香里と美香も売り出してはいくけど、芸能界は頑張ったからと努力が報われるわけではない。
どれだけ努力しても、実力があっても埋もれる人は埋もれてしまう。
芸能界は非情な世界でグループ内でもメンバーとの差が簡単に出来てしまう。
社長はみのりと梨乃にガンガン仕事を入れろとうるさいし、グループのマネージャーとしてここからが手腕を問われる。
本当はドラマの放送が終わるまではカップル売りを継続させたかったけど、あゆはる(みのりの)ブームを少し落ち着かせたいから、グループでの仕事の時はみのり+美香か由香里で組ませようと考えている。
カップル売りは人気を作るには有効な手段だけど、やはり弊害もある。みのりと梨乃のコンビしか求められなくなる弊害。
思った以上にメンバー間の差が開きすぎており、これでは美香と由香里の人気が上がらないし、その他になってしまう。
それに…梨乃をみのりから引き離した方がいい。梨乃はみのりに依存をしすぎており、みのりがいないとダメな子になりつつある。
冷たいコーヒーも美味しい季節になり、脳を引き締めるため口に含む。ほろ苦い味が口の中に広がり体と脳が引き締まった。
そして、ほろ苦とは対照的な甘いチョコレートを食べエネルギーを補給する。
休憩がてらに友達に今度、飲みに行こうとLINEを送る。仕事は大好きだけど、息抜きをしないと流石にキツく、息苦しい時がある。
時には友達と沢山お酒を飲んで現実逃避したい。それに、私はマネージャーの仕事を始めて知ったことがある。
恋愛は自分の恋愛より…
他人の恋愛の方が面倒くさい。
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