第215話/止まらないlove call
田中・奏多みどり.side
きっと、青天の霹靂とは今起きていることを指す。百香からの情報が本当であればいいなと思っていたけど、期待半分だった。
朝のニュースを見ながら、私の手からパンが皿の上に落ち、パンがバウンドする。
パンにはジャムを塗っていたからお皿が汚れてしまったけど今はそんなの気にならない。
テレビ画面から1秒たりとも目が離せないし、地震が起きても動くことはない。
でも!でも!でも!録画してないの!
玄能ニュースが終わって5分後、やっと体が動き私は慌てて携帯でSNSを開く。
検索の箇所に〈みのり/愛/キス〉と入れ検索し、私は「ビンゴ!」と歓喜の声を出す。
どなたか分かりませんが、心からありがとう!とお礼を言いたい。
貴方のお陰で私の命が10年伸びたよ。
早速、いいねを付けさせて頂いて私は食い入るように短い動画を見る。本当に…みのりちゃんと森川愛ちゃんがキスをしている。
ラブ・シュガーが本当にドラマ化するんだと…感嘆する思いしか出てこない。
初めて見た、推しのキスシーン。でも、これはまずいことになってしまった。推しの最初のキスの相手が森川愛ちゃんだなんて一番最初に最頂点のキスを見てしまった。
多分、みのりちゃんは高橋君と映画でキスシーンをしているだろうけど、まだ映画が公開されておらずキスシーンも公開されていない。
だから実質、ファンにとってはこれがみのりちゃんの初キスシーンになるのだ。
私は推しのキスシーンについては気にしないタイプだけど、嫌がる人は多い。
本気で応援している人からしたら仕方のないことで簡単には受け入れられないだろう。でも、今回のキスシーンはみんな素直に受け入れるはずだ。私も興奮している。
初めて見た同性同士のキス。私はあまり恋愛ドラマや恋愛映画を見ないから、異性同士のキスシーンは見たことあっても同性のキスシーンは初めてだった。
みのりちゃんと森川愛ちゃんのキスが…
私の血液を滾らせる。
私としてはヤバいものを見たという感情もあり、急に恥ずかしくなったり感情が定まらない。あちこちに感情が動きパニック状態だ。
えっ?このキスは合法で見てもいいの?後から1万円徴収されても払う気ではいるけど…
私の推しのキスがSNSで拡散されていく。トレンドは森川愛、藍田みのり、ラブ・シュガー、実写ドラマ化、あいみのキスと幾つもトレンド入りしており盛り上がっている。
今日ほど…私は漫画家になって良かった思える。時間に自由な仕事だからあいみののキスに酔いしれられる。
この状態で電車に乗ることになったらニヤニヤが止まらず私は変質者になる。
へへへ、へへへ、うへへ
〈先生、仕事中は携帯を見るのは禁止ですからね〉
せっかく酔いしれていたのに、突然、私の携帯画面に悪魔の所業の文章が送られてきて私は「無理!」と大きな声で叫ぶ。
一度でも味わってしまったら抜け出せい砂糖のような愛は中毒にさせ、抜け出せない沼に落としてしまうのだ。
この底なしの沼はどれだけ足掻いても抜け出すことが出来ない。溺れるのみ。
ほら、私と同じ症状に喘いでいる人が多数いる。SNSにはドラマが始まるまで毎日が苦しくてたまらないって人が溢れかえっている。
まさに阿鼻叫喚。きっと、ただのラブストーリーだったらこんなことにはならない。
同性同士のラブストーリーだからこその中毒症状。きっと、みんな心の内に秘めているものがあるはずだ。私がそうで…
体の中の血液の温度が上がっていく。このままでは本当に血液が沸騰して倒れそうだけど、冷たいコーヒーを飲み温度を低下させる。
ここで倒れるわけにはいかないし、ラブ・シュガーを見るまで絶対に死ねない。
女を狂わす女・藍田みのり
SNSに誰かがみのりちゃんのことをこんな風に書いている。まさにその通りだね…私の推しは可愛いくて、綺麗で、頭が良くて、歌が上手くて最高の女の子だ。
同性で結婚をしている私も良い意味で藍田みのりちゃんに人生を狂わされている。
でも、推しがいる人生はとても楽しいし、人生の一部だけど、今は興奮と最強の供給に頭がおかしくなりそうだ。
あれだけ…みのりのに燃えがっていたのに《あいみのり》に心を持って行かれている。
私は戒めとして、携帯の画面をみのりちゃんからみのりのの写真に変更をする。みのりのの写真を見ると心が落ち着くし、みのりの愛を思い出せる。
決して…完全に沼にハマってはいけない。落ちるところまで落ちたら危険だ。
私の危険信号が大音量で鳴り響く。
きっと、、みんなも聞こえているよね?
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