第172話/固執した思い

吉田夏樹.side


季節が移り変わるのは早く7月になり、みのりが頑張っている「さんかくパシオン」の撮影もあと少しで終わり、CLOVERは変革期に入る。今日のライブでここでのライブハウスでのライブは次で終わることを告げる。


だから、梨乃は朝から不機嫌で困りものだけど決まったことだからどうしようもない。

2ndシングルの準備も始まったし、2ndをリリースしたらアルバムの準備にもかかる。


アルバムが出たら大きな会場でのコンサートで、未来には大きな夢が広がっている。

2ndシングルが出る頃にはみのりと高橋君の映画「さんかくパシオン」が公開するし、良い流れが出来ていて楽しみだ。


ただ1つの懸念はみのりの仕事の量だけ多く、他との開きがある。美香や由香里は脇役だけど女優の仕事をしたり、最近ではバラエティー番組にも少しづつ出始めた。


問題は梨乃だ。ここでのライブはあと1回で無くなるのにライブ中心の仕事を望む。

梨乃はグラビアの仕事やバラエティーの番組には出れないし、向いてない…


せめて、映画のオーディションに受かっていればと思うけど、落ちたものは仕方ない。


今回は奇跡は起きず、、

梨乃は…オーディションに落ちた。


普通は落ちたなら次のオーディションを受け、受かるまで受け続ければいい。

でも、梨乃は今もオーディションを拒否する。演技の仕事はやりたくないと、頑なに嫌がるから社長も私も困っている。


梨乃はドラマのヒロイン役を掴み、やっと名前を知られてきたのに棒に振ろうとする。


このままでは梨乃だけ仕事がなく、メンバー間の仕事の量の開きが更に広がる。

頭が痛すぎる。馬鹿じゃないの?と言いたいけど、梨乃はきっと変わらない。


あっ、もう1つ懸念があった。みのりの大学受験。みのりの学力が高いことは知っているし、みのりだったらきっと良い大学に受かるだろう。でも、両立が難しい。

もし、大学に受かったらみのりは4年間、大学に通いながら仕事をすることになる。


みのりが学力を武器にしようとしているのも分かっている。確かに、開成大学に進学することはプラスになるけど、仕事のことを考えるとみのりが心労で倒れないかが不安だ。


最近のみのりの目の下にはいつも隈があり…休みをあげたいけど仕事が詰まっている。


それに、オフでもみのりは大学受験の勉強をしそうで体を休めない。私がみのりをホテルで無理やり休ませない限り無理だろう。

誰よりもストイックで、繊細なみのり。やっと、今の地位を得たからこそ怖いのだろう。





梨乃はライブの時とみのりと一緒にいる時だけ最高の笑顔を見せる。梨乃はドラマの佐藤小春と苦笑いしたくなるぐらいそっくりだ。


ドラマ「彼女はちょっと変わっている」は次の放送で最終回を迎える。既に視聴者からはドラマの続編を作ってほしい!というコメントを沢山貰えている。


そして、新人なのに梨乃の演技の評価はとても高く、ファンもファン以外の人も梨乃の演技を求めている。なのに、本人は頑なに拒否をし、アイドルに固執し受け入れない。


オーディションを受けてもやる気がない梨乃。今回、落ちたのは当然だ…

プロとしては失格で、梨乃はまだアイドルとしても芸能界の厳しさを分かっていない。


いつか、梨乃が気づいてくれたらいいけど…このままじゃ、みのりに置いていかれると。

きっと、何かきっかけがないと無理だろう。梨乃が強いショックを受け、仕事についての考え方を変える出来事。


八方塞がりだなとため息を吐き、天を仰ぐ。私にはやることが沢山あるし、他のメンバーのことも考えないといけない。


何か梨乃にショックなことが起きれば…と願う私は人として最低かもしれない。

でも、マネージャーとしては当然の思いだ。梨乃は芸能人としての自覚が無さすぎる。

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