第171話/Unknown

森川愛.side


今日は朝からドラマの撮影で、今は車でマネージャーと撮影現場まで移動中だ。

朝が早い日は眠気との戦いで、台詞はすでに頭に入っているけど、今のドラマの撮影現場がめちゃくちゃつまらないから萎えている。


愛想笑いと苦笑いと作り笑いしかない現場で全て作り物の現場だった。


それに昨日受けたオーディションの結果が気になって仕事に集中できない。今回の映画のオーディションは憧れの人と共演できるチャンスでめちゃくちゃ気合が入っていた。


マネージャーからは映画の賞が取れる作品だから絶対に受かろう!と言われたけど私はどうでもいい。憧れの人と同じ空気、尊敬する演技を吸収したいだけだ。


私がこんなにも気持ちが落ち着かないのはオーディションに松本梨乃ちゃんがいたから…

もっと仲良くなりたいのに、私達はまたライバルになった。でも、前回負けた私は闘志を燃やしている。負けるのは一度だけで十分。


はぁ…


新しい現場(ドラマ)は主役だし、やりがいはあるけどつらまない。共演者と表面的な挨拶と会話をして、ますます心は閉じていく。

表面上は社交的な仮面を被っているけど私は内気で人見知りをするタイプだ。


だからこそ、みのりのフランクさが有り難かったし、みのりと梨乃ちゃんの関係が楽しくて、やっとつまらない毎日から抜け出せた。


なのに、またつまらない毎日に舞い戻った…

つまらない、つまらない、つまらない!!!


ワクワクもドキドキもしない毎日なんて本当につまらない。まだ、19歳なのに抑制された毎日を押し付けられ気が滅入ってしまう。



撮影はまだだいぶ先だけど、早く映画の撮影をしたい。今の私には緊張感が必要だ。

でも、私のテンションを上げてくれる作品にこれから出会えるだろうか?私はずっと森川愛をぶち破りたいと思ってきた。


演技は褒められるけど、純粋な役や真面目な役、今時の女の子と同じような役ばかりで、いつも同じ女の子ばかり演じてきた。


私はこれまでのイメージが180度変わる役をやりたい。オーディションに受かった映画は私の学びの場になる。だからこそ次は…私を変える作品に出会いたい。


やっぱり、あの作品に出てみようかな…?ずっと悩んでいたし、戸惑っていたけど殻を破るには丁度いいのかもしれない。


でも、相手役が気になる。オーディションで決まると言っていたけどラブシーンが多いから出来ればちゃんと同世代がいい。

車の中に置いてある本を手に取る。この漫画はオファーが来てマネージャーが買った本。


読んでから出演するか決めてと言われていた。一応、読んだけど…すぐには出演することを決めることが出来なかった作品。

それほど、私のイメージが変わる作品でもあるしファンも驚く作品だ。


私は何作品かラブストーリーの作品をやってきた。次に受けようとしている作品もラブストーリーだけど、少しだけジャンルが違う。

これまでやってきた作品より、ラブシーンが濃厚だしエッチなシーンもある。



今年…20歳になるからこそ挑戦するにはいい作品なのかもしれない。マネージャーもこれから流行るジャンルだからと乗り気だった。


甘々な恋の物語ラブ・シュガー


この作品を撮り終わったあと、違う自分になれたらいいな。今年は挑戦の年だ。

森川愛のイメージを壊し、新しい私になる。だけど、ちょっとだけ怖気ついている。


女の子とキス…


私はみのりと梨乃ちゃんの仲にハマり、危うく沼にハマりそうになった。だからこそ、危険なものだと認識している。

私の第六感が危険な香りがすると感じとっている。私を危険な沼に落とすと。


でも、ものすごく興味がある。みのりと梨乃ちゃんの関係にハマったからこそ。

2人にハマって以来、女の子の唇の柔らかさを知りたかった。考えるだけで、胸がドキドキする高揚感は最高のスパイスだ。


きっと、私のつまらない日常に刺激を与えてくれる。そんな予感する。

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