第126話/フルスロットル Jumping
吉田夏樹.side
机の上には温くなった缶ビールがあり、ソファーに座りながらドラマを見る私の手は常に#彼女はちょっと変わっているで検索をする。
ドラマが始まって20分、ドラマの評価は上々で寧ろ高評価な意見ばかりだ。
出だしでCLOVERの「Kiss Me」が流れた時は私の頬が緩まり大変だった。まさか、発売前のデビュー曲にタイアップが付くなんて思わなかった。
今、CLOVERの売れっ子アイドルへの道が明るく照らされている。でも、まだこれからだ。ここで立ち止まってはいられない。
私は携帯を見ながらニヤつく。視聴者の梨乃の演技の評価が高く、みのりも早月みたいだと高評価で2人の名前が拡散されていく。
もし、田中さんが梨乃をオーディションに推薦していなかったら梨乃の演技の才能は誰にも知られず埋もれていた。
幾つもの運命の分かれ道で梨乃は女優としての道を切り開いた。そして、みのりも梨乃に続くように追っている。
それにしても、思っていた以上のみのりへの評価に驚いている。1話のみのりのシーンはかなり少ない。だけど、みのりへのコメントが多数ある。
主役の高橋君のファンからもみのりが鮎川早月にしか見えないと高評価を貰い、ドラマに対しても原作ファンからの評価が高い。
原作のキャラの役柄に合った役者が演じていると書いてあり、ちゃんと原作に沿った内容で満足度が高いと褒められている。
携帯とテレビ画面を交互に見ながら、高橋君が所属するグループの新曲がかかった瞬間、携帯を太ももの上に置く。
爽やかな青春を感じさせるメロディーと歌詞とメンバーのフレッシュな歌声がドラマにリンクしている。
それにしても…鮎川早月が人気のキャラなのは知っているけどここまで反応があるとは思っていなかった。
みのりは顔やスタイルが良くて、歌が上手いのになかなか人気が出なかった。でも、鮎川早月の役を通してみのりの魅力が爆発する。
ドラマが終わり、温くなったビールを飲み干し、冷蔵庫から新しいビールを取り出し、携帯でまたドラマについて検索をする。
色々なコメントを見ながら苦笑いをしてしまう。ファンが出来ることは良い事だけど、エンディングのみのりにハマった人が熱すぎる。
早月、カッコいい!!!
早月役の子の顔、好きだな〜
漫画の早月が現実に飛び出してきた!
藍田みのりちゃん、可愛い…
こんな風に呟いている子は女の子ばかりで、勿論男の子も多数いたけど圧倒的に女の子からの反応の方が多い。
今がチャンスなのではと考えた私はCLOVERの公式アカウントにバスケをするみのりのオフショットを載せた。
勿論、梨乃と一緒に写っている写真も載せ『あゆはる』ならぬ『みのりの』を売り込む。人気に便乗するのも戦略の1つだ。
凄い。さっき写真を載せたばかりなのに2人の写真の反響が来るのが早い。
私にとって見慣れた2人の距離感。みのりが人との距離感が近いから自然と梨乃との距離感は恋人さながらの距離感になる。
この2人の距離に嬉しさを爆発させるみのりののファンの人達。お似合い!と言うコメントが多数あり喜びに満ちた反応ばかりだ。
ははは、面白い!
ノリに乗ってきた私は新しいビールを一気に飲み、みのり達に来た仕事のオファーをノリノリで選別することにした。
マネージャーとしてファンから何を求められているのか先読みをすることはとても大事だ。だからこそ…カップル売りはしたくなかったけど望まれているならやるしかない。
今、ファンが求めているのはみのり×梨乃のカップル売り。【みのりの】というコンテンツ。
しばらくは2人をカップル売りして、後々グループ・ソロで売り出していこう。
梨乃とみのりにはドラマで知名度が知れ渡ったから、恋愛ドラマや映画を中心とした演技の仕事を増やしたい。
理想は高橋君が所属する事務所のタレントとの共演が望ましい。
知名度と人気を兼ね備えている人達が多く、みのりと梨乃だったら恋愛関係に発展しないし、安心できて共演できる。
事務所にとってこれほど最高のポテンシャルはない。ファンも安心できるし。
恋愛に興味がない、みのり
みのりにぞっこんな、梨乃
2人とも仕事頑張ろうね。私もマネージャーとして頑張るから。2人はこれからもっと上にいけるよ!私が押し上げてみせる。
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