第103話/感情的 it me

美沙のお母さんの手作りハンバーグがとても美味しく、私は笑顔で食べ続ける。そんなガツガツと食べている私を美沙のお母さんと美沙が笑顔で私を見つめる。

2人から見つめられると食べづらいけど、高校時代からいつもこんな風に食べてきた。


美沙と美沙のお母さんはいつも私が食べている姿を見つめてくる。ニコニコとした顔で、やっぱり親子だよね。顔もそっくりで、全く同じ行動をする。

私は美沙のお母さんが大好きだ。優しくて、私をずっと応援してくれた。


今日もドラマとメジャーデビューについて何度もおめでとうと言ってくれて、実の親の言葉より何倍も嬉しい。


「おかわりあるからね」


「はい。ありがとうございます」


美沙の家に泊まる時はチートデイ。お腹いっぱい食べ、ご飯のあと美沙と暫く談笑した後一緒にお風呂に入る。

この流れはお泊まりの定番で、美沙と湯船に浸かりながら疲れを癒す。


だけど、いつもと違うことが起きている。美沙は私の背中に引っ付くことが多かった。

でも、今日は引っ付いてこない。横から私の顔をずっと見つめ嬉しそうにしている。


「美沙…?」


「何?」


「ずっと、私を見てるから」


「みのりの今の髪型、好きなんだ」


なんだ…美沙は私の髪型を見ていた。顔だと思っていたから自意識過剰ではないけど恥ずかしくて湯船に顔をつける。


「みのりがカッコよくてずっと見ちゃう」


「ありがとう…」


好評すぎる今の髪型はドラマがなかったらずっと長いままだった。ある意味、藍田みのりのイメージを変えられた気がする。


「いつからドラマの撮影は始まるの?」


「もうすぐかな」


「これから忙しくなるね」


「うん。でも、今が一番の頑張りどきだから頑張らないとね」


「応援してるね」


メンバーといる時間も好きだけど、美沙との時間は私の一番大事な時間。美沙の応援があるから私は頑張れる。

だけど、ドラマ・ライブ・勉強・雑誌の撮影と私の日々は忙しい。仕方のない事だけど美沙との時間が作れていない。


夢は私のため。でも、私にとっては美沙のためでもある。ずっと応援してくれている美沙のために活躍する姿を見せたいし、いつか美沙と美沙のお母さんを大きなライブ会場でコンサートする時に呼ぶのが夢なんだ。





ベッドの上でいつものように美沙と一緒に眠る。美沙といるといつもすぐに眠れ、私は不眠とは無縁になる。

特に美沙のベッドだと美沙の香りに包まれるからよく眠れる。私の安眠剤だ。


美沙は私が一番苦しい時に闇から救ってくれた人。美沙がいなければ私はずっと真っ暗な闇の中に今もいて人間不信になっていた。


だから、美沙を絶対に失いたくなくて今日…美沙の大学まで行った。美沙の事が知りたくて、少しでも時間を埋めたくて。



最近、仕事が順調のせいか美沙を失わないか不安な自分がいる。美沙と会える時間が減り、前と少しだけ関係性が変わった。

美沙はよく電話で彼氏の愚痴を言ったり、泣いたり…私を困らす事が多かった。


でも、今はそんな電話が一度もない。それに…美沙が彼氏と別れてから新しい彼氏がいない事が気になっていて。美沙はモテるから常に彼氏がいたし、恋愛中毒者要素もある。そんな美沙が今もフリーで…


もしかして、私が知らないだけ?

もしかして、彼氏がいるの…?


と不安になってしまった。美沙は気を遣わなくていいのに、変に気を使う時がある。

私に彼氏が出来た時、美沙と遊ばない期間があった。美沙が私に遠慮して離れたのだ。


私に気を遣ってくれているとは分かっている。美沙にも彼氏がいたし、でも、美沙は私以外の人と遊んでばかりで、、

別に遊ぼうって言ってくれたら遊ぶのに、美沙から言ってくれなくて悲しかった。


そんな優しさなんていらないのに。


朝、起きるとちゃんと美沙がいて安心する。美沙と会えない分、癒しを梨乃に求めていたけど美沙しか得られないものが大きすぎる。


梨乃にも言われたけど…どれだけ私と美沙の仲が異質でも私は変わらない。

美沙は私の光で活力だ。寝ている美沙の顔にそっと触れると力が漲ってくる。

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