第79話/イタズラな関係

美香と由香里が私の両腕に絡みつくから歩きにくく、私の腕を離してくれない。

面倒いなと思いながらも一々小言を言うのが更に面倒で私はそのままにする。きっとそのうち飽きて離すだろうと思っていたからだ。


でも、結局車から降りた後もまた腕を掴まれ、美香達は離れしてくれなかった。

今日は肩が凝りそうだなって思いながら楽屋に入ると梨乃が私達を見るなり、なぜか眉間に皺を寄せ不服そうな顔をする。


梨乃の気持ちはいつも私には分からない。相手の気持ちを読むのが苦手なのもあるけど、梨乃は特に分かりにくすぎる。


「ほら、リハーサルの準備するよー」


よっちゃんがドアから顔を出し、着いたばかりの私達を促す。でも、よっちゃんのお陰でやっと美香と由香里が離れてくれた。


2人から解放された私は鞄からレッスン着を取り出す。早速着替えようとすると、梨乃が隣に来て「オーディション…お疲れ様」と声を掛けてくれた。


梨乃の機嫌は治ったのかな?もう怒っている感じではなく、私がありがとうとお礼を言うと梨乃は笑顔になった。


最近の梨乃は女心と秋の空という言葉がピッタリで、コロコロと機嫌が変わる。

今は私の腕を触り、機嫌が良くなった。


「梨乃ちゃんとみーちゃんってさ、いつも距離が近いよね…」


なぜかちょっと怒っている雰囲気の由香里が突然、私と梨乃を見ながら拗ねりだす。


「私も思ったー!みーちゃん、りっちゃんにばかり甘えるしベタベタしててずるい!」


美香まで参戦してきて、、今日の2人はどうしたのだろう?なぜか拗ねているし、私と梨乃は昔からこんな感じなのに…


「ほら、みんな着替えるよ。今日は時間がないんだよ。話してる暇なんてないから」


よっちゃんがまた間に入ってくれて美香と由香里に着替えるよう促してくれた。

今日の2人は梨乃同様、女心と秋の空状態で私を困らす。なぜ私に突っかかるのだろう?


美香と由香里が渋々着替え始め、私もやっと着替えることができた。短くなり軽くなった髪を後ろで結ぶと爽快感を出る。

この長さ、いいかもしれない。結びやすいし、昨日髪が洗いやすかった。


私が髪を切るキッカケになったオーディションの結果はどうなるか分からないけど、髪を切ったことに後悔はない。

寧ろ、新しい自分を見つけれて良かった。





松本梨乃.side


美香と由香里が私を敵対視する。最初、私が受けたくて受けたわけじゃないオーディションのことで怒っているのかなって思った。

でも、着替え終わったみのりに甘える姿を見て私の中の黒い炎がメラメラと燃える。


きっとドラマのヒロイン役をやる私に対して嫉妬があるとは思うけど、一番の嫉妬がみのりに対してだと分かり、闘争心が芽生えた。

みのりの横は私の場所だし、私の居場所だ。それになぜ今になってと思った時、みのりが髪を切ったからではないかと思った。


髪を切ったみのりはカッコよく、長かった髪型より今の髪型の方が似合っている。

私が今の髪型の方が好きだってのもあるけど、本当に似合っているのは確かで、みのりを見つめる2人の目が女の目になっている。


ライバルなんていらないのに…私の邪魔をしないでと腹が立つ。私はみのりのことが本気で好きで、2人みたいに遊びじゃない。

そのせいで、みのりとの関係を見せつけるため私は暴走する。良い子じゃいられない、私が動かないとみのりが取られてしまうから。



ファンは【みのりの】が好きだ。だから、みんなに私達を見せつける。

美香と由香里にも…みのりのを見せつけ、私とみのりの関係を邪魔する物を排除する。


◆私はみのりのもの

◆みのりは私のもの


私とみのりの間に誰も入れないことを証明する。一番の強敵は谷口さんだけど、まずは近い人から打破していく。

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