第39話/マイノリティーの想い
今日はレコーディングをする日でメンバーは一度事務所に集まることになっている。
廊下でよっちゃんに会い「おはよー」と挨拶をすると、テンションの高いよっちゃんに「おはよー!」と挨拶をされた。
そんな、よっちゃん同様テンションが高いのが一番乗りで来ていた由香里で…
「みーちゃん、おはよー」
「由香里、重いって」
「昨日、私達を置いていった罰」
由香里はいつものように私にタックルをし、私をソファーの上で押し潰してくる。
「ごめんって」
「あれ、良い香りする?香水付けてる?」
「付けてないよ」
「でも、いつものみーちゃんの香りじゃないよ。果物みたいな甘い匂いがする」
「もしかして、美沙の匂いかな?」
「えー、なんかエッチー」
昨日からずっと美沙が私に引っ付いていたから美沙の香りが私に移ったのかもしれない。
でも、エッチって…由香里の顔がニヤついているしきっと変な想像をしているはずだ。
「あっ、そうだ。梨乃ちゃんってまだ一度もお付き合いしたことないの知ってる?」
「そうみたいだね」
「意外だよねー。梨乃ちゃん、可愛いのに誰とも付き合ったことないなんて」
「梨乃は真面目だし、奥手なんだろうね」
「確かにー。ちゃんと好きな人と付き合いたいって言ってた」
好きな人と付き合いたいなんて真面目な梨乃らしく、やっぱりグループの中で一番純白のシンデレラだ。
打算がなくて、ちゃんと真剣に恋愛に対して考えていて私とは大違いだ。
「みーちゃんはどんな人がタイプ?」
「タイプ…何だろう?」
「えー、ないの?」
「考えたことなかった」
「じゃ、今まで元彼はどんな出会いで付き合ったの?」
「私は女子校だったから、友達の紹介とかで会った人ばかりかな」
私の場合は好きでもなくても告白されたから付き合ったパターンで全く純粋さがない。
「ねぇ、ねぇ。女子校ってさ、女の子同士で付き合ってた子とかいないの?」
「いたよ」
「やっぱりー。なんかエロいね。女の子同士でキスやエッチしたりするなんて」
「そんな風な考え方をするからでしょ」
私は恋愛に興味がないから深くは考えたことがないけど、未だに同性同士の恋はマイノリティー扱いで何でだろうと思っている。
私が女子校出身ってもあるのかもしれないけど、恋愛なんてどれも変わらない。
「みーちゃんは女の子に告白されたことや付き合ったことないの?」
「ないよ」
「えー、私がみーちゃんと同級生だったら絶対好きになるのに」
「嘘つけ。絶対、常に彼氏がいて私に彼氏との自惚を聞かせるでしょ」
「あー、その可能性もある」
へへと笑う由香里は今どきと言ったら変だけど頭が柔軟で、境界線がない。
「女の子と付き合うのって、どんな感じかな〜」と言葉にして言えるのも若さゆえだ。
「あっ、女の子とのキスって男の人とのキスとは違うのかな?唇の柔らかさは絶対に違うよね?」
「そうだね」
「えっ、みーちゃんは女の子とキスしたことあるの?知ってる言い方だったけど」
「まぁ」
「えー、ショック。みーちゃんの唇、奪われた。初めてじゃないなんて嫌ー」
初めても何も私には彼氏がいた。全てを経験しているのに由香里はショックと言う。
「何で由香里がショックを受けるのよ。私に元彼がいるの知ってるくせに」
「男の人とのキスと女の子とのキスは違うの。みーちゃんを取られた気持ちになる」
「意味分かんない」
由香里がキスの相手は誰だと聞いてくる。面倒くさいなって思いながら高校の友達と言うと「そっか」とすぐに興味を失う。
相手が友達では面白みがなかったのかもしれない。それもどうかと思うけど。
早くこの話を終わらせたくて終了!と言おうとした時、ドアの所に梨乃がいるのに気づき梨乃と目が合った。私と由香里は話をしていて梨乃が来ていたのに気づいていなかった。
由香里は私の視線で梨乃に気づき「あっ、おはよう〜」と挨拶をする。でも、梨乃は私達を見つめたまま動かない。
眉間に皺を寄せ、いつもの梨乃じゃないように見えた。私が見る初めての梨乃。
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