第4話

 ミチルはいつもの通りきちんと机に向き直り物語を書いていた。アスターにとっては穏やかにすぎない日のはずだった。だがミチルはこの日とてもせき込んでいた。こんな時、アスターはミチルの身に寄り添いこう言う。


「ミチル、ベッドで休もう?」


 ミチルもこんな日は手につかないので素直に従い椅子から立ち上がるがうっ、とおなかを抑えて椅子から転げ落ちた。口の周りには吹きこぼした血がまとわりついている。


 アスターは後ろ髪を引かれる思いで部屋を飛び出した。階段を下り玄関の前で大きくジャンプした。銀の鈴の音が鳴った。ドアに空いた空洞から飛び出したアスターは

 後ろを振り返る。


「ミチル、待っててね」


 薄日色のタイル造りの大通りを抜け、出口に構える白い門を出て郊外に出る。アシュガの研究所までもう少し。


「アシュガッ!!」


 全速力で走ったアスターはヘトヘトになり力の限り鳴いた。何度も鳴いているうちに涙が出てきた。


「うるせえな、どうしたってんだ・・・・・・よ

 気だるげに出てきたアシュガは、アスターの尋常ではない態度を見て、焦りを感じた。


「どうした、なんかミチルにあったのか」


 アスターは力いっぱいに口を開いた。


「ミチルが倒れちゃったっ」


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