14ー1 森の中で
ここは心理の裏を突く必要がある……!
なにせ向こうにはタケっちが付いたのだ。奴は何故か俺の思考パターンに詳しい。不思議だ。
俺からはあんな冷血漢の思考を読み取ったりできないので不利にしかならない。
きっと出入口を固めて率先して教師にチクリを入れて警備の薄いところに罠を仕掛けている筈……!
なんて卑怯なんだ! ちくしょう!
となると、俺特有の情報で奴を躱そうとするよりも、奴も俺もやらないだろうことをやった方が逃げられる確率は上がるということ。
迷いの森だ。
幸いにして授業中、金髪お化けのいない時間帯。
考えを纏めつつ二階の渡り廊下に出た。
ここを渡って一階へ下りて下駄箱を出て校門へ行くのが普通の下校パターン。しかし。
……あの辺りに強い陽気を感じる。
渡り廊下を渡り切った先、校舎へと入る扉の後ろが怪しい。不自然に半分だけ開いているのが如何にもだ。
誘ってやがる……!
タケっちが逃げられた時のために配置した陽キャ兵か。バカめ。陰キャがそんな決められた道を歩くかよ。早すぎたんだよ。
二階の渡り廊下は青空廊下だ。一階の渡り廊下の屋根にくっついているだけの仕様。
なので手摺りは乗り越えられる。
ヒョイと手摺りを乗り越えて落下。視線が切れる寸前で渡り廊下の先の扉から待ち構えていた誰かが立ち上がった。
やはりな。
ガン! という鈍い金属音を響かせて自販機の上に着地。二段ジャンプの要領で自販機の裏へ。体育の授業をサボっていたのか、ベンチに座っていたジャージ姿の女子が驚いている。
ダメじゃないか、授業サボっちゃ。
ここは先輩として説教を喰らわしてやりたかったが追われてるので断念。
素早く身を翻して校舎の裏へ。
中庭と体育館脇を通って迷いの森へ行こう。
校舎の裏をコソコソと渡って追跡を躱す。今頃は二階から下へ行ったという情報が出回っているはずなので、悠長にはしてられない。
幸いにして中庭は隠れるところが多いので、バレることは……。
ガサガサと茂みを掻き分けて出てきた男子生徒とバッタリ。
そうだね。それは向こうにも言えることですよね。誰かな?
「お、あんたもサボり? 今日は多いな」
靴の色からして一年。髪染め短髪ピアス。口に白い棒を咥えている。飴だな。間違いない。
「なんだ、
ビビらせんな。
「あ?」
深く息を吐き出す俺に不良一年が凄んでくる。
無視して姿勢を低く、不良が出てきた茂みに入ろうとしたら肩に手を置かれた。
「待てよ」
そうだ、待てよ?
今こいつ「今日は多い」って言わなかったか?
「なに黙ってんだ? そんなんで躱せっとでも思ってんのか? おお? ビビってんのか? ……黙ってんじゃねえよ!」
そうだな、まず黙らせよう。
首をとってキュッとする。静かになった一年をその場に捨ててしゃがみ込む。
もしかしなくても中庭に見張りが多いのだろうか?
だとすると横断は絶望的だ。
やめるか……いや。
そもそも授業時間も残り少なくなってきてる。このままタイムアップになれば関係者は一纏めに連行されるだろう。被害者なのに!
何も悪いことをしていない俺としては、同じ監房に入れられるのだけは避けたいところ。待ってるのは囚人イジメに違いない。なんて理不尽なんだ!
となるとやはりここの突破は必須。ふーむ、どうしよう。
考えこむ俺の足下に不良。
よし、こうしよう。
不良を盾に茂みに突入。
しばらく茂みの中をさ迷い、どうしても身を晒す必要のあるところで盾を発動!
「おわっ、なんだよまたコイツかよ……」
「おい、関わんな。向こう行くぞ」
ガサガサと不良を茂みの向こうに突き出す、するとどこかで聞き覚えのある声が遠ざかっていく。
作戦成功だ。
中庭を抜ける頃にはボロボロになってしまったオレンジ頭の人形に敬礼する。ありがとう……君の犠牲は忘れない……!
「うっ……あ、う、くそ」
おっと起きたか。
再び首をキュッとする。あなた、疲れてるのよ。
体を弛緩させて眠る不良を残して、ここからは身を隠す場所がないところへと駆け出す。
後は力技だ。
ここからは管理人さんが勝つか俺が勝つかの勝負! とはいえ相手はただの森。あの時とは違い、今度は本気だ。走り抜けて振り切れないこともあるまい? うはは、やったね勝ったね休日だね!
心の中で喝采を上げてると、中庭が開けテニスコートで
「……」
「……」
その脇を走り抜けた後で声が追いかけてくる。
「あ、いたわ。おーい! テニスコート裏だ! 急げ!」
「ちくしょう!」
抜けられないこともあったわ。
あんなに頑張ったのに! 割とあっさり見つかるじゃんね! あの人数はズルくね?
こうなったらやることは一つ。
「どいつもこいつも道連れだ!」
「なんかあいつ、すげーこと言ってない?」
ついてこい!
過去最高に迷わせてやるぜ!
管理人さんナメんなよ!
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