乙女ゲーの世界は萌えだらけだと思った??
出汁巻きチョコバナナ
第1話 マンホールの先に
ちょっとした余所見からマンホールに落ちたと思ったらそこは真っ白な部屋でした。
しかも目の前には足元ほど長い銀髪に碧眼、薄い白い布でビキニのような目のやり場に困る服を着た女性が立っている。
気のせいか女性の背後から後光がさしている気がする……。
女性は胸の前で手を組むと言った。
「お願いします。助けて下さい!」
「へ?」
「実は私の担当する世界で魔王が悪さをし始めてしまって人々が困っているのです。貴女には聖女として人々を救って欲しいのです」
呆気にとられる私の前で女性はペラペラと夢のような話をしだす。
魔王ってなんだ。聖女ってなんだ。
今起きてる現象もファンタジーすぎて理解が追いつかない。
むしろこれは夢なんじゃないか?
実はマンホールの下で気絶してる私が見ている夢っていう現実。
私は自分の頬を思いっきり抓った。
痛い。
「あの、なにをされているのですか?」
私の行動に目の前の女性は不思議そうに首を傾げている。
「え、これ夢じゃないの?!」
「夢じゃないですよ!」
疑われて心外だと女性はプンプン怒った。
綺麗な人がやるとぶりっ子ポーズに見えないのが不思議だ。
「いいですか?私は女神アリステラ、貴女方の世界で言う世界の創造主になります」
「えー、女神様?」
そう言われれば後光も射しているし神々しいオーラもあるから女神に見えなくもない。
疑いの目を向けられたのが分かったのかちょっと不機嫌そうな表情をする。
「もっと言えば私の創造した世界は貴女のよく知る『聖女大戦』の世界ですよー」
「え?!」
突然出てきた名前に驚いた。
『聖女大戦』とは女性の間でわりと有名な乙女ゲームで、聖女に選ばれた主人公が四人の勇者と愛情や友情を育みながら共に魔王を倒すという王道乙女ゲー物語である。
私もこのゲームが好きで何度もプレイした。
グッズも集めたし友達とは推しの違いで火花を散らした事もある。
それくらい大好きなゲームだ。
その大好きな世界を作ったのが目の前自称女神様?
「いやいや、それは何の冗談なの?」
「冗談ではありませんよ?貴女には聖女として世界を救っていただきたいのです。いえ、救っていただきます」
うわ、この女神断言した!
「ていうか私は聖女なんかじゃないですよ?!」
ただの女子高生であって、生まれてこのかた聖女だったことなんてない。特別な能力だって持っていない。
「これから聖女になるのです。まぁ色々と教えなければならない事がありますが、まずは体験していただくのが一番ですね」
そう言って自称女神アリステラが手を軽く振ると私の足元の床が無くなった。
「へ?」
重力に従って落ちていく体。
だんだんと視界が真っ暗に染まっていく。
意識を失う前に見えたのはいい笑顔で手を振る自称女神様の姿だった。
「ちょ、死んだら恨んでやるぅううううう!!!!」
********
「……て……ぉき……!……起きてくださぁい!」
声がした。
意識が覚醒する。
風が頬をスルリと撫でて去っていく。
土の香りを嗅ぎとった所で目を開いた。
視界いっぱいの青空が目に入る。
とりあえず体を起こしてみた。
「よかった~!やっと目を覚ました!」
そう言っているのは私の目の前をふよふよと飛んでいる妖精らしいナニかだ。
15センチほどの小人に羽が生えている。
「初めまして!私は妖精族のティアラ!聖女様の事をサポートするように女神様から言われているの。よろしくね!」
やっぱり妖精だったらしい。
「って、私は聖女じゃないよ?」
ただの一般女子高生だから。とティアラの言葉を否定する。
「聖女様は聖女様ですよ?」
とティアラは首を傾げた。
「いや、だから……」
「あ!わかりました!心の中でステータスオープンと唱えて下さい!」
「えぇ……」
私の話を聞いてくれないティアラにどうしたものかと思いながら仕方なく心の中でステータスオープンと唱える。
するとどういう原理なのか目の前に半透明なウィンドウが現れた。
そこには
名前:さくら
職業:聖女
スキル:魔を払う力、剣聖
LV:99
HP:5800
MP:4260
と映し出されている。
色々とツッコミ所満載です。
「職業聖女って……マジか」
どうやら問答無用で聖女にされてしまったようだ。
よく考えてみたらティアラに起こされた所は『聖女大戦』の冒頭のままだった。
つまり私は聖女大戦の主人公になっている。
しかもレベルはカンストした最強の状態で。
「どうです?信じてくれました?」
「あー、うん……わかりました……」
そう言えばティアラは嬉しそうに笑う。
私は困惑しながらもこの状況を受け入れるしかないのだと悟った。
「ていうか剣聖って何?」
「剣聖というのはあらゆる剣技を使いこなせるスキルですよ」
「え、強くない……?」
レベルカンストしてるうえにあらゆる剣技を使いこなせるスキルってヤバいと思う。
なんというチート。
「嘆いても始まらない、か……よし、最初の町を目指そう」
「町は……あっちの方にあります!」
「ありがとう……えーと、ティアラ。これからよろしくね」
私がそう言うとティアラは嬉しそうに笑った。
「よろしくです!」
まずは最初の出会いイベントがある町カノンに向かう事になる。
私達は町のある方へと歩き出す。
こうして私の長いゲーム攻略が始まったのである。
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