新月の夜に狼が吠える

その日は暖かい風が吹き始めていた春の日のことだった。


 満開の桜がヒラヒラと舞う季節。


 清水美琴はいつものように海沿いの道を歩いて帰宅しようとしていた。


 堤防沿いの道。海がざわめきながら、陸地へ波が流れてく。彼女の肩まである髪が潮風に揺れ動き、それを押さえる。


「今日の気持ちい風。このまま帰るのはもったいないなあ」


 美琴はスマホをバックの中から取り出すと時間を確認する。




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