聞く、目で。

@enononono

.

《目標接近。数、5》

「はーい。各員、エルゲン・オン。戦闘態勢」

『『了解』』

「エルゲンチャージ。狙撃用意」

《磁場効果確認せず。先頭より三機目、コックピット、エイム》

「…………」

《ファイア……ヒット、スパーク》

「うそっ⁉︎」

《目標よりエルゲン反応》

「……相手が悪い、まだ、高性能体が残ってただなんて‼︎」

《目標停止。“マスター”。実弾による狙撃を提案》

「ばか、位置はわれてるっつーの!そんな悠長に狙ってる暇がありますか‼︎“オーダー”、聞こえてる?」

『は、はい‼︎』

「作戦の再構築、急いで!」

『てっ、撤退は……?』

「どうせ帰ったところで、みんな揃ってスクラップだもの、こっちのほうがずっとマシよ。ねぇ、“アクター”」

『はい』

「あなたに指揮権を譲る。うまくやって」

『?……‼︎了解しました』

「よしよし、察しのいい子、大好き。頑張って……さて、“アシスタント”。お手伝い」

《了解した》

「さあて、やりますか」





「“フォロウ”“ドレット“両名は、南西より中距離射撃。“オーダー”、二人に追従して、観測士に。ロック”“クラック”わたしと近距離戦に」

「はァ?嫌だね、おれはよぉ。なあ、ロック」

「クラック、命令には従わないと。ぼくは了解しましたよ、アクター」

「ありがとう……フォロウ、ドレット、オーダーも、お願い」

「了解しました!行ってきますね‼︎」

「ふふっ、楽しんできます」

「……了解」

「会敵と同時にエルゲン全開。フォロウ、ドレットはアンチ弾を装填し待機。攻撃開始は、150秒後」


「ひゃっはァ‼︎先に行くぜ、ロックゥ‼︎」

「ばっ、一人で走るな‼︎」

「エルゲン全開……フォロウ、ドレット‼︎今!」

『らじゃっ!』

『着弾!弾けます、警戒!』

『ノイズ。リジェクト、展開、3、2、1』

「ロック、クラック!攻撃開始!」

「もうクラック行っちゃったよ!」

「ははァ‼︎一匹目ェ‼︎」

『‼︎動力炉への引火を確認!逃げて‼︎』

「ちょ、クラック‼︎」

「伏せろ、ロック‼︎」



『報告‼︎敵機二体沈黙……クラック、ロスト』

「クラックのバカ!」

「ロック、愚痴は後。二機も潰してくれたんだから、むしろ後で感謝しなきゃ」

「特攻と変わらないよ、こんなの!」

『狙撃しまーっす、爆発しても知らないよ‼︎』

『脳髄だけ狙いますから、一番東にいる奴、妨害してきそうなので、お二人方、殺してあげてください』

『パターン送ります』

「ロック、陽動」

「……了解」


「ロック‼︎」

「ごめん……なさい、膝、切られ……」

『後その一体だけ!ドレット、詰めるよ!』

『了解いたしました。フォロウ、エイム』

「動きがこいつだけ段違い、警戒して!オーダー、離脱する、ルート」

『送ります!』

『当てた!当てた!膝から落ちるよ、ドレット、エイム!』



「ロック、大丈夫?」

「移動が……できない。ぼくを置いて行った方が」

「そんなことできるワケない」

「でも、アクター。あなたは、代えが効かないじゃないか」

「そんなこと。オーダー、そっちの様子は?新手が来る前に離脱したい」

『…………』

「オーダー?……しまった、早い!ロック、移動する……」


「あく、たー……こあ、つらぬかれ、ばくはつ、する」

「ロック‼︎」



「……なん、なんでこんなに。いち、にぃ、さん……本隊より、ずっと多い。いいやこっちが本隊?」

「目標、確認、単眼機」

「……どっちでもいい。エルゲン、全開……!体力が尽きる前に、全部、ぶっ潰す!」



「終わ……った、敵の、血も……赤。ああ、アンドロイドじゃ、ないんだ」

「化け物めッ‼︎」

「……?ああ、まだ、生き残りが」

「アンドロイドめ……ッ、仇討ちぐらい、させろッ!人と、同じ色の血なんて、流しやがって!」

「ひとと、同じ?……ふ、ははっ」

「なにが……!」

「ごめん、わたしも、人間」

「……は」

「アイン種。こんな、たった一個の目しかないけど、人間。アンドロイドのオリジナル、いても、別に、おかしくないでしょ?」

「……化け物、悪魔!」

「怖いなら、その拳銃で、わたしを撃っ」



アインと呼ばれる、人種がいた。

目がひとつだけの、奇形の種族……並外れた知性を持っていた。

彼らは、彼ら自身を模した、単眼機……アインドロイドと呼ばれる人造人間を作り出す。

アインが絶滅危惧種になった後も、単眼機は、製造され続けた。


その容姿のまま。

アインが滅んだとされる現代でも、そのまま。

彼らを、人と思わないために。



(もし、この世界に生まれたことが、罪なら)

アクター……演者の名を授けられた、彼女は想う。

(きっと、これが、贖罪だ)

アインドロイドの動力、エルゲン。

その濃緑とは真逆、真っ赤な血が、心臓から滴っていた。


「寒いなぁ、ほんと、寒い……」


役者は、誰にも想われず、舞台から去った。


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