5-9:街での日々、三週目

三週間目。

提示された判定は、一つだけ。


■セルフィの捜索 探索判定 目標値21

……セルフィは、あれから見つかっていない。


レイダー : 「……セルフィが、行方不明になりました。騎士団の皆には、常に3人一組で行動するよう伝えてあります。皆さまも、どうかお気を付けを」

アル : 「心配ですね……」

ソレル : 「あ、レイダーさん、これ、街の人からもらいました」シエルに複製してもらった地図を渡しておきます。庵と陣の屋抜きのやつ。

レイダー : 「……有難い。これで、捜索も進展します。では、私はこれで」

GM : ナンディナは、どこか青ざめた顔でぼうっと宙を眺めています。

リズ : 「……探しましょう。見つかるまで」

ナンディナ : 「…………はい」


といっても、要求された目標値は余りにも厳しい。残念ながら6ゾロも出ず、焦燥感だけが高まっていく……。


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GM : さてそんな緊迫した状況なんですが……。条件を満たしているので、イベントが発生します。リズさん。

リズ : え?

GM : 深夜、貴女が寝ようとした頃、控えめなノックの音が聞こえてきます。―――そこには、少し硬い表情をしたナンディナが立っていました。

リズ : 「ナンディナさん。どうなさいましたこんな夜更けに……」

ナンディナ : 「夜分遅くに申し訳ありません。少しお時間いただけますでしょうか」

リズ : 「ええ、勿論です。中に入られますか?」

ナンディナ : 「……いえ……」では、ちらりと中を見て。首を振り。「すみません、その。できれば……二人きりでお話ししたくて」

リズ : 「承知いたしました」(宗教の話かな?)

ソレル : 「おかまいなくー」

シエル : 「気を付けてね」


GM : では挨拶もそこそこにディナはリズさんを連れ、鍵を借りた空き部屋に入ります。そうして……かちゃり。そのまま、内側から鍵を閉めます。


突然の雰囲気に、にわかに盛り上がるPL陣。

しかし、当のナンディナは深刻そうな表情のままだった。


リズ : 「そこまで厳重に二人きりにならなければいけないのですか?」困惑の表情を浮かべます。

ナンディナ : 「………………すみません。できれば、あなた以外には、聞かれたくなくて。会って間もないリズ殿に、こんなことを頼むのも……申し訳ないと思っているのですが。けれど、その」えっと、といいながら微かに頬を紅潮させて。

「――恥ずかしながら、あまり、人に好かれる性質ではありません故、あなたくらいにしか、話せないのです」


リズ : 「え? え? はあ? いえ、出来ることならばお手伝いしますが……?」

ナンディナ : 「……セルフィが、いなくなりました。本来であれば、セルフィに……信頼のできる部下に頼むべき……いえ、頼んでいた、ことだったのですが……」


ナンディナは顔を歪め、首を振る。真っ直ぐリズを見つめる視線は悲壮な決意を湛えているようで、何処か悲し気に揺らいでいた。


ナンディナ : 「…………リズ殿、もしもの時はあなたに、ディナを止めていただきたい」

リズ : 「……それは、どういった意味でしょうか?」

GM : ナンディナは一歩踏み出して、リズの耳元で何事かを囁き始めます。その様子には、絶対に外には聞こえないようにという警戒……と、何かに怯えているようでした。


そうして渡されたのは、ナンディナの好感度を高めたキャラクターにのみ与えられる、秘匿情報。勿論、他のPLにも秘密だ。このリプレイでも、一旦秘匿とさせて頂く。

突然の展開に、更に盛り上がるPL陣。

しかし、当のリズはわなわなと震え、動揺を隠せないでいた。


リズ : 「な、な、な……。あなた、なんということを……」

ナンディナ : 「……これはディナにとって、切り札であり、それでいて最大の弱点です」

リズ : 「……いえ、わかりました。そして貴方がこれを伝えてくれたことに、感謝いたします」

ナンディナ : 「貴方なら……ディナを笑いもせず、嘲りもせず、……ディナにとって『必要な時』を、きっとわかってくださると思います」


リズ : 「……皮肉ですね。ええ、全くもって、いい性格をしていますよ」

ナンディナ : 「ふふ…………どうかこのことは、貴方の胸の奥に秘めてください。ディナは、……ご存知かもしれませんが、敵が多いので。信頼できる相手も。ほかに、ほとんど、いないのです」

リズ : 「ええ、最大の弱点、ですからね」すっとナンディナが下げているティダンの聖印を手に取りましょう。「神に誓って」

ナンディナ : 「…………」それを聞いて、ディナは破顔しました。ふふふ、と嬉しそうに笑って。

「……それではおやすみなさい、リズ殿。あなたに神のご加護がありますように」

リズ : 「ええ、おやすみなさい。貴方の悩みも、朝日とともに太陽の光が包んでくれますように」


GM :さて、そんなイベントもありましたが、三週間目の終わりに、イベントがあります。


三週間目の終わり。

深夜のことである。


冒険者たちが眠りに落ちた深夜に、突如、甲高い声が響き渡る。


ナンディナ : 「――皆様っ!! 起きてください、……ご助力を……!」

GM : 飛び込んできたのはナンディナです。


ソレル : 「ふぇ、何の声……?」

シエル : 「な、何があったのかい?」

ナンディナ : 「……屍鬼が町中に出現いたしました。現在騎士団で住民の避難誘導中です。が、それだけでは人手が足りない……!」


シエル : 「……はぁ!?街中にグール???」

ナンディナ : 「――騎士団として、このようなことをお願いするのは大変心苦しいのですが、どうか、ご助力を。お助けください」

ソレル : 「ん、わかった。ハンサ拾ってくる。報酬の話は後でね」

ナンディナ : 「……はい!」


冒険者たちは言われるがまま、慌ただしく支度を整え、外に赴く。

そこには多くの騎士と、住人と―――おぞましい屍鬼が蠢いていた。

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