5-8:行方不明
二週間目、日曜日。
夕食後……騎士団の交代のタイミングから、少し過ぎた時間のことである。
冒険者たちの部屋に、ナンディナがやってきた。
「あの、すみません。セルフィを見ませんでしたか?」
ナンディナ : 「壁の警備交代で、ディナがセルフィからの引き継ぎをする予定だったのですが……」
ソレル : 「? 見てないよ?」
リズ : 「おや、どうしたのでしょう」
ナンディナ : 「……そうですか……仕事をさぼるような子ではないのですが。まあ、たまにはこういうこともあるでしょう」
もし見かけたら、探していたとお伝え下さい。
そう言い残して、ナンディナは足早に夜警に向かっていった。
―――翌日。
セルフィは見つからず。
騎士団は、彼女を「行方不明」と断定した。
頻発している行方不明事件に、巻き込まれたのだ、と。
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……おはよう。誰もいない部屋の片隅に、そう囁く。
そうして何回目かの朝が来た。
ささやかで愛おしい、いつも通りの朝だ。
窓を開け、路地を駆け抜けていく子供たちの声に目を細め、主の恵みを寿ぐ祝詞を唇で紡ぐ。
この麗らかな幸福に感謝を。
そして、愚かな獣へ人の幸福を引き合わせてくださった貴方に、心からの敬愛を。
真白い制服に袖を通しながら、今日もこの身を捧げる誓いを立てる。
ああ。自分の鼓動が止まるまで、もう何回、こうして貴方を想えるだろう。
だから自分は、今日も高らかに謳いあげる。貴方の優しい威光と慈悲を、遍く世界に知らしめる。
……その為なら、如何なる苦難も越えてみせましょう。いつか自分の鼓動が止まっても、貴方の愛するこの世界が、永久に麗らかでありますよう。
祈りを静かに我が身に刻み、自分は、貴方への一歩を踏み出した。
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