5-5:街での日々、一週目

GM : さてみなさんは現在、ルフラン島は「セプテス町」、イグナチオ氏の別荘に滞在中です。みなさんはここを拠点に1週間区切りで物語を進めていくことになります。

ここで、GMから今回のシナリオの流れが説明される。主に一週間ごとに起こるイベントを中心に、冒険者たちは提案されるイベントをこなしたり、自ら行動を起こすことで時間は進んでいく。場合によっては、行動に制限がかかることもあるため、なにかあったら次回以降に生かしていきたいところだ。ある意味でリカバリーが可能なのは、ループものという特殊な状況故の利点だろう。

GMから提示された第5話のクライマックスは「3週目の終わり」。イベントには、それぞれ所要時間が設定されている。限られた時間の中でどう行動するかが重要となるだろう。暫しの相談の末、それぞれの行動は以下のようになった。

ソレル : ハンサと地図作り

リズ : ナンディナと話す

アル : セルフィと話す

シエル : 町での聞き込み@神官

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▼ソレル/ルフラン島全域の地図作り/

ソレル : (ころころ)……う、出目が弱い。達成値は11。

GM : ……もう1日費やす度に再チャレンジして良いですよ。

ソレル : よかったー。(ころころ)……よし、達成値17、13、14。

GM : それでは、あなたはルフラン島「北東部」「南東部」「南西部」の3地方の地図を作ることができました。

-地図-

https://drive.google.com/file/d/1AYsJ5qE0n4jYiep108AA3QNY7isIkk2-/view?usp=sharing


ふと、順調に地図を描き進めるソレル。その視界に、纏めた青髪をふらふらと揺らす少女が映り込む。

ソレル : 「セルフィ、だったっけ」

セルフィ : 「あ、ソレルさん!お疲れ様です! そうです! セルフィです! お散歩ですか?」

ソレル : 「おつかれさまー。うん、ハンサと一緒に地図作りを手伝ってて」

セルフィ : 「おー、ちょっと拝見―――って、どええええぇぇぇ!!?? めっちゃできてるじゃないですか!!! 私なんて2週間もかかったのに……」

ソレル : 「えへん、頑張ったでしょ。やっぱり足が違うから、ほら」

そういって、上機嫌に騎獣のハンサに触れるソレル。ハンサも誇らしげだ。

セルフィ : 「おー、よく見ると良いお馬さんですね。たくましい感じです!」

ソレル : 「え、ほんと? 照れちゃうな……」

他人に言われるのは慣れていないらしい。

セルフィ : 「しかし……、北西部の地図は書き込まれてないんですね、やはり」

ソレル : 「セルフィの時もダメだったの?」

SGM : 「なんか、こう。ありますよね。なんか、壁みたいのが」とセルフィは中空でろくろを回します。1周目でも冒険者の行く手を阻んだ見えない壁が、今度は北西部から貴方がたを隔てているようです。

アル : 地元の人しか通れない結界かなにかなんでしょうか……?

GM : 壁について調べる場合は見識判定/25、妥当な難易度です。

ソレル : これはちょっとね……。

セルフィ : 「破る───は私には無理そうですね。せめて北西部の地図が何処かにあれば……」

ソレル : うーん……。1周目のときに描いたのがあるけど、渡さないかなぁ。もうちょっと仲良くなったらね。

セルフィ : 「ま、悩んでも仕方ないですしねー。地図、良ければ見せ合いっこしませんか? こう、確認のため」

ソレル : 「うん、いいよー。セルフィも地図作れるクチなんだね」

セルフィ : 「やたっ。いやー、私は手が余ってるからやらされてだけでして。本来の任務はこの“見えない壁”の監視なんです。これがまた暇で……」

GM : そんな感じで、和気藹々とお話しました。セルフィも出てますので、町に帰って来たかたちでアルさんのシーンに繋げましょう。

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▼アル/セルフィと話す

アル : おしゃべり……何をお話しましょうか?

GM : では館のメイドさんから、「お嬢様が持ってるあれとかどう…?」と、見覚えのあるカードセットが出てきました。

読者諸兄は覚えているだろうか。第1話でカルミアがもってきた【人見知りでも怖くない☆おしゃべり話題カード】のことを。1d6でランダムな話題を決定するこのカードの役割は、ループしても変わらないようである。

アル : 心なしか新しいような……(ころころ)、「こ、恋の話……?」

セルフィ : 「恋ですかー。好きな人とかいます?」

アル : 「好きな人……とと、突然なんですか!何が無難な話題なんですかこれ!!!」

セルフィ : 「えー?定番ですよ。やっぱり!恋ですよね世の中! その反応……さてはいますね?」きゅぴーん。

アル : 「あ、あつがつよいです……い、いないですよ!第一ぼく人見知りであんまり知り合いもいないですし……」

セルフィ : 「えー?こんなにかわいいのに……見る目無いですねー、周りの方々」むぎゅーと引っ付きます。


GM : おんなのこどうし、だなぁ(に見えている)。

リズ : うらやましい。


アル : 「うわわ!? 突然なんなんですかー!?」と言いつつも少しだけ嬉しそう。

セルフィ : 「ふっふっふっ。近うよるが良いですよ」

アル : 「そ、そういうセルフィさんはどうなんですか!その……好きな人とかいないんですか?」

セルフィ : 「私ですか?……レイダ―さんとか? 女の子ですけどあの人」

アル : 「確かにレイダーさん、カッコいいですよねー……」

セルフィ : 「でも、ご覧の通りディナさんがべったりですからねー。あれはそのうちくっつきますよ。ほんとほんと」

アル : 「あー……ここに来て数日のぼくでもわかりますその感じ……」

セルフィ : 「でしょ?ま、二人ともその気はなさそうですけど……方や保護欲、方や崇拝、ですからねー。あれはもう二押しはいりますね」

ナンディナ : そういう俗なものじゃないって言いませんでしたっけ?


何だかんだ恋愛トークに華を咲かせる二人。そんな二人の間に、ひょっこりと顔を出す者がいた。

ソレル : 「傍から見てるのも大変だ、こりゃ」ひょっこり。

セルフィ : 「おやソレルさん。ご休憩ですか?」

ソレル : 「うん。ここ1週間出ずっぱりだったから」

セルフィ : 「ソレルさんはいますか? 好きな人!」

ソレル : 「好きだけど、もうそういう次元じゃないから」

セルフィ : 「ほ?」

ソレル : 「既婚者だから、そこのとこよろしくね」

セルフィ : 「なんと、それは失礼しました! もう、それならそうと仰ってくださいよ! え、どなたです? 馴れ初めは? どんなとこに惚れました?」

アル : あー……。

ソレル : 「ハンサなんだけど、元々同じ森の出身でね。男気と頼もしさがもうね……」一人頷いている。

セルフィ : 「……ハンサさん。なるほど! 素敵な感じですね!」

ソレル : 「ほんと? ありがと! じゃ、ハンサのとこ行く途中だったから。またね~」

セルフィ : 「……えへへ~。誰かの幸せそうな顔って、こっちまで幸せになっちゃいますよね。だから私、恋の話って大好きです!」

アル : 「そう、ですね……(遠い目)」

セルフィ : 「ハンサさん、街の方なのかな。いいな~」

アル : 「……ディナさんみたいな素敵で頼りになる方ですよ、ハンサさんは」

セルフィ : 「なんと。じゃあ、もう完璧ですね!」

ソレル : 四足歩行だし。

ナンディナ : 馬でしたしね。

アル : 「えーと、ディナさんと言えば、この屋敷の方々、みなさん優しくていい方ばかりですよね」

セルフィ : 「はい。レイダーさんもディナさんも、素直で素敵な人たちですよね!」

アル : 「そうですね、でもセルフィさんも素敵だと思いますよ」

セルフィ : 「なんと……えへ~。そうですか? そう思います? えへへ~」

年齢相応の、少女らしい表情で照れるセルフィ。穏やかで麗らかな日常が過ぎていった。

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▼リズ/ナンディナと話す

リズ : では、推しの良さを語り合いましょう。

GM : それなー! では、談話室の前でばったりと遭遇します。

ナンディナ : 「あっ」

リズ : 「どうも。先日はうちのものが失礼を」と、一通りの謝罪を。

ナンディナ : 「いえ、こちらこそ……。よろしければ、お茶をお入れしますので。少し話しませんか?」

リズ : 「ええ。先日レイダー様の凛々しいお姿も見ましたしね、是非語りあえればな、と」

ナンディナ : 「……はい!」

そうして談話室にて、お互いの主人について語り合う二人。

始めは出方を伺っていたようなナンディナも、相槌を打つリズの様子を見ては水を得た魚のように語り出す。互いに主人をもつ者として、惹かれ合うものがあったようだ。そうしていつしか、話題は出会いのことへと移っていく。

リズ : 「ナンディナ様は、いつからレイダー様とご一緒にいらっしゃるのですか?」

ナンディナ : 「……ディナは、ディナがディナになった時から、レイダー様とずっと一緒です。あの方が、ディナを獣でなく、人にしてくださったのです」

リズ : 「獣とはまた、随分な表現をされますね?」

ナンディナ : 「その、お恥ずかしい話なのですが……ディナは、ジェネレーターから出た直後に里を蛮族に滅ぼされまして」

リズ : 「まあ……」

そうして語られたのは、ナンディナの壮絶な過去だ。

目覚めた直後から蛮族の道具であった彼はまともな教育を受けることもなく、半ば彼らの奴隷として生きていた。ある時、通りすがりの冒険者によって蛮族が殺されたことで自由を得た彼は、しかし誰に拾われることもなく夜盗と化していた。

ナンディナ : 「……その時、通行人に通報を受け。畜生道に堕ちかけていたディナを止めてくださったのが、レイダー様だったのです……!!!」

リズ : 「素晴らしい……なんてすばらしい出会い……」(ハンカチで涙を拭いながら聞き入ってる)

神の声が聞こえない自分では、『信仰』を真に理解することはできないかもしれない。それでも自分は、あの方の言葉を聞いて神を信じるヒトの気持ちを理解した。

ナンディナは拳を握りながら、噛み締めるように呟いた。

ナンディナ : 「リズ殿は、ディナが聖印を下げていても何も言わないでいてくれました。やはり、アル殿が?」

リズ : 「いえ。……私も、まったく同じ経験をしたことがあるのです。前の主さまに、お仕えしていた時に」

リズが以前仕えていたのは、敬虔なティダン神官だったという。その体験を経て誰かを信奉する気持ちと、神への理解を深めた。リズは涙ながらに語りながら、ナンディナの手を優しく握る。

リズ : 「どうして、貴方の話に引くことがありましょうか」

ナンディナ : 「お互い、素敵な主に出会いましたね」

リズ : 「ええ、本当に。でも、私の場合はもう一つ幸運がありました。もう一人、生涯かけてお仕えしたい方に出会えたことです」

ナンディナ : 「ええ。アル殿の話、もっとお聞きしてもよいですか?」

リズ : 「はい、勿論。私がたとえ死んだとしても惚れ直すであろう主ですからね、言葉は尽きませんよ。……ディナさんもそうでしょう?」

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▼シエル/町での聞き込み@神官以外

シエル : (ころころ)……運命変転して成功。

GM : 人間て奴はよぉ。

ソレル : お前達人間って、傲慢じゃないか?

GM : では、以下のような話が聞けます。

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「ねえ……やっぱり、外の神様も生贄とかって欲しがるものなんですか?」

「なんか、最近、町から間引かれる速度が速くなってる気がしてて……」

「あの、外の神官さんたちが来てからなんですよ、こんなに速いのは」 「まさか、あの人たちも、……あなたも、町の人間間引いてたりしません……よね、神官さん? ね?」

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シエル : 「……は? 間引き、生贄? 第一の剣の神がそんなことするわけないでしょ?」

GM : 「え……?(きょとん)」

シエル : 「ルフラン島では、生贄が当たり前の事なのですか?」

GM : 「生贄、っていうかねえ。ちょっと嫉妬深くていらっしゃる神様だから」

シエル : 「秘め神ルフランがですか?」

GM : 「別に、生贄っても殺すとかじゃないのよ。でも、成人したばかりから15年間、ずーっと神様のために祈り続けなきゃいけない「巫士」か「巫女」を選出しないといけなくてね。先代の巫女様のお務めが終わったから、次の巫女様を立てなきゃいけなかったんだけど……おお、こわいこわい」

シエル : 「巫女の選出をするときに、何か事件があったと」

GM : 「……あはは、よそさまの神官さんにお話しするような内容じゃありませんよ。どうせ、どこも同じなんでしょう?」


そう話す住民の視線は何処か諦観を帯びていて。

シエルが言葉を選んでいる間に、住人はそそくさと立ち去ってしまった。


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……ともあれ、一週間目の行動を終えた冒険者たち。全員の行動が終わった辺りで、ぴっ、と手をあげた人物がいた。


アル : GM、この一週間の間で街の人に追加で聞き込みすることって可能でしょうか?

GM : ……そうですね。アルとリズの二人はNPCと会話しただけですから、時間はあるとしましょう。勿論、内容にもよりますが……。

リズ : それでは、カルミアさんの行方と、件のイグナチオ家について、なんて如何でしょうか。


二人の提案を受諾したGMから判定を求められ、難なく成功する二人。そうして得られた情報は、以下の通りだ。

・カルミアは本来『巫女』として選出される予定だったが、娘可愛さにその慣習を破ってしまった。

・その溺愛ぶりからも分かるように、カルミアは実年齢よりも幼い振舞いをする。

・上記の事件もあり、街の住人はイグナチオ家に反感や不信感を強めている。


アル : 「……あんまりいい噂、聞きませんね……」

リズ : 「そうですね。……とりあえず、この話を持ち帰りましょう。記憶のある二人なら、また思うところも違うかもしれませんし」

GM : ではそんな感じで、一週間が経過していきました―――。

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