4-11.もう一度

「もういいのか?」


孔の底から、魔神語の酷くしわがれた声が響いた。


途端、悲鳴をあげるPL陣。まさか本当に誰かいるとは思わなかったのだろう。

しかし、このパーティで魔神語の会話が出来るのはシエルのみだ。


シエル : 『ま、まだだめ……』


その声は震えていた。


??? : 『……声が違う。お前は契約者か?』

シエル : 『……僕は契約者だよ』

??? : 『ならば途切れ暦よ、汝の真の名を答えよ』

シエル : 「……ごめん、これ以上はまずいかも。いますぐループしよう!」

リズ : 「わかりました。板うちつけます」ガンの底でがんがん打って釘を打ちます。

ソレル : ガンだけに?()

リズ : ガンだけに!


喧々囂々。

PLたちの悲鳴が木霊する中、迅速に再封鎖される地下通路。


リズ : 「で、何と会話してたんです?」

シエル : 「たぶん魔神!!」

リズ : 「駄目じゃないですか!? 何会話してるんですか!?」

GM : あ、ついでに聞き耳判定/12お願いします。

アル : 成功!

GM : ではあなたは奥からなにかが、ずる……ずる……とゆっくり近づいてきていることに気づきます。


アル : 「ひぃぃぃぃぃ……! な、何か扉の向こうから来てます……!」

リズ : 「逃げましょう」

ソレル : 「さんせー!」

GM : では、君たちは屋敷から一目散に逃げ出しました……。

ソレル : あ、折角だし洞窟まで行って未成功判定だけやっちゃおっか。

アル : ですね。


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GM : では、洞窟です。ここの墓石に刻まれた「274」の数字の意味を知るには、見

アル : (ころころ)……成功です。

GM : 墓に刻む文字であること、そしてカルミアから聞いた「15年前に両親がお墓参りにいくようになった」という情報を合わせて考えると、これはおそらく、「274年」を表すのでは……?と思い当たります。アルフレイム新暦、274年。今からちょうど15年前の年です。


リズ : そういえば、ここにも見えない壁がありましたね。壁の破り方を調べてみましょう……(ころころ)、成功です。


▼見えない壁の破り方

何らかの儀式系の魔法によってつくられた壁だと思われる。

この壁を破るには「術者がこの壁を制作したときの魔法の達成値」と、破壊を試みる者の「何らかの魔法系統の魔力による達成値」を比べ合い、勝利する必要がある。この試みには、1時間の準備時間を要する。


GM : さて、そんな風にだんだんと情報が整理されてきましたがー……そろそろいきます?

ソレル : 契約してるのは私と、シエルだけだね。

シエル : 「今から次のループに入るとしたら、リズとアルは契約どうする?」

リズ : 「私はやめておきますよ。……万が一の時を考えれば、ぎりぎりまで契約すべきではないとも思ってます。ルーンフォークですのでね」


アル : 「ぼくも……契約はしません。ぼくには、これがありますから」と左腕のブレスレットと首元のチョーカーに触れます。


アル(のPL) : ところでここで大変邪悪なPLは「ループした先って激流なんだよね……」とか思ってます。アクセサリー、無事ですかね?

SGM : 邪悪すぎんか?


シエル : 「わかった。……リコリス、たとえ君が僕の事覚えてなくとも、今度こそ君を助け出してみせるから」


各々の想いを胸に、シエルは魔剣ポシビリタスに嘆願する。


「もう一度」


刹那。

視界から、全ての色が消える。―――否。記憶の奥にある彼岸花だけは、血のように赤く。赫く。


冒険者たちの身体は、時間が止まったかのように動かない。静寂の中、何処からか、無機質な時計の針の音だけが聞こえてくる。


かちん。


かちん。


脳髄に響く、魂の髄を打ち付けられるような音。


そんな音だけが聞こえる、永遠にも思うような一瞬が続いたあと……。


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