何の変哲もない会話劇
いずも
ハロウィン
「センパイセンパーイ、トリック・オア・トリート!」
「は?」
「もう、知らないんですか。ハロウィンの合言葉ですよ」
「それはわかるけど、急になんだよ」
「ですから、トリック・オア・トリートって言ってるじゃないですか。お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ~ってやつです」
「お菓子なんて持ってるわけねーだろ」
「じゃあイタズラですね」
「ほう、悪戯ねぇ。お前が? 俺に?」
「そりゃあコーハイちゃんもセンパイにイタズラなんて心苦しいです。しかし、心を鬼に、いえジャック・オー・ランタンにして全身全霊をかけてセンパイにイタズラします」
「手をワキワキさせるな。めちゃくちゃやる気じゃねえか」
「安心してください。センパイにはちょーっとコスプレ衣装に着替えてもらうだけですから。そして夜の渋谷に繰り出してもらうだけです」
「殺す気か。あんな無法地帯に放り出されたら即死するわ」
「それもこれも、ハロウィンにも関わらずコーハイちゃんへのお菓子を用意していないセンパイがいけないんですよ」
「くっ。だったら、こっちにも考えがあるぞ」
「ほほう」
「秘技、『トリック・オア・トリート返し』!」
「な、なんだってー!?」
「ということで、ほい、トリック・オア・トリート」
「え?」
「え? じゃねーよ。だからこっちも『トリック・オア・トリート』っつってんだろ」
「なるほど、そうきましたか」
「これならお前の分と相殺されて無かったことに――」
「はい」
「え?」
「もちろんコーハイちゃんは用意してましたよ、お菓子。当たり前じゃないですか」
「そ、そんな馬鹿な」
「ふふ、これでセンパイの『トリック・オア・トリート』は終了ですね」
「くっ、ならば……これでどうだ!」
「……はい?」
「だからお菓子。あげれば良いんだろ」
「ちょ、人があげたお菓子渡すってどういうことですか!?」
「人からもらったお菓子をあげちゃいけないって決まりはないだろ」
「それはそうかもしれないですけど……」
「ということで、はいハッピーハロウィーン!」
「ええーっ、ずるいですよセンパーイ」
「パンプキンと還付金って似てるよな。パンプキン詐欺」
「お金あげるからお金よこせって騙されちゃうものなんですかね」
「お菓子やるからお菓子よこせ?」
「それコーハイちゃんが今置かれた状況ですよ。はっ、ということはですよ」
「……」
「イタズラしていいからイタズラさせろという理論も――ってセンパーイ、どこ行くんですかセンパーイ!」
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